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【連載小説】恋愛ファンタジー小説 最後の眠り姫(90)

 目を覚ますと朝陽が窓から差し込んでいた。視線を動かすとクルトが微笑んで眠っていた。手は私の背中に回って優しく抱きしめてくれていた。ほっとして、またクルトの心音を聞く。とくん。とくん。いつまでも聞いていたいけれどおなかがぐぅ、と鳴った。クルトが瞼を開ける。
「おはよう。奥さん。少しは落ち着いたかい?」
 朝、目覚めるとクルトは決まって私を「奥さん」と呼ぶ。この言葉の響きに幸せを感じてしまう。
「少しだけじゃなくて不特定多数の男性以外なら大丈夫なぐらい元気よ。クルトの心臓の鼓動がすごく安心できるの。ただ……」
「ただ?」
  
 ぐう。きゅるるる。

「ああ。昨日、夕食を結局食べなかったものね。朝食があるから、それを食べよう。部屋で食べる? 食堂で食べる?」
「みんなに元気な顔を見せたいわ。でも、ほかの男の人にはあまり会いたくない」
 ほんの少し顔を曇らせてしまった。こういう時大丈夫、って言えればいいのに。
「大丈夫。そのうち、みんな大挙してくるよ。だからそのかわいい寝間着姿を見られないように着替えないとね」
「クルトと離れたくない」
「困ったね。くっついて着替えはできないからね」
「傷を見ると怖いの。すぐ思い出して」
「そうか。フリーデを呼ぼう。ケガの手当てもしないとね。ああ。ヴィーの治癒魔術で治せばいいんだ」
「痕が残らない?」
「こっちの方が奇麗になると思うよ。ただ、ヴィーに君の胸元を見せるのも教育上どうか……」
「そんなの、気にならないよ。孫なんだから」
 当人の声が飛び込んできた。後ろに山ほど関係者がいるらしい。いろいろな声が聞こえる。
「じゃ、ヴィー。簡単にお願いできる? クルトはテーブルをセッティングして」
「その必要はございません。我々だけの朝食の部屋をご用意させていただきました。エミーリエ様はさすがにまだ本調子とはいかないと思いますから」
 シュテファンお兄様が事務方の職務を全うするかのように言う。お兄様なのに、クルトの部下なんてややこしすぎるわ。
「お兄様。もう、兄なのですから、敬語は……」
「これが仕事ですから」
「フリーデみたいなことを言うのね。フリーデも私的な空間では姉になってもらってるわ。お兄様も兄として接してほしいの」
「ですが……」
 シュテファンお兄様が戸惑う。その背中をカロリーネお姉様がバシッと叩く。
「かわいーい、私の妹のお願いよ。聞いてあげて」
 かわいらしく言ってるけれど、ほぼ、妻の命令。お兄様が弱った顔をする。本当にお姉様のことが好きなのね。
「いや、あれは尻にひかれてるんだよ」
「王子!」
「ちょっと! いつ私が尻に引いたって?」
 夫婦そろって反撃に出る。こちらも結託する。
「さぁ。フリーデ。手当てしてあげてついでに着替えも手伝ってあげて。俺のお着替えを見たい人は残ればいいけれど、見たくなかったら、食事のところに行っていて。ヴィーの治癒魔術は今度。人妻の胸元なんて見るもんじゃない」
「だから、孫って」
「思春期」
「はいはい」
 ヴィルヘルムもクルトには頭が上がらないみたい。仲のいい兄弟仲を見られて私はうれしくなる。
「エミーリエはそのかわいい寝間着姿を変えておいで。仲のいい兄弟なんていくらでもいるよ。見たかったらいつでも大丈夫だから」
「はーい。じゃ、フリーデ行きましょうか。何を着ればいいかしら?」
「そうですね。明るいオレンジ色のお召し物などどうですか?」
「なかなか着ない色ね。挑戦してみようかしら」
 女同士の気軽な会話をして着替えに向かった私とフリーデだった。


あとがき
病院にて更新中。カミングアウトで嫌われたかな? でも私は私です。今までと変わりません。好きな小説書いて載せて。皆さんとシェアできればいいんです。フォロワー様少しだけ整理しましたがそう変わりません。増えてもいるし。帰れば企画のページ復活させます。お楽しみに。

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