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『Sputnik/whole life catalogue』を読む


2023.2.21 快晴
♫:Virtual Insanity

 『Sputnik/whole life catalogue』は、2000年の秋に出版されたインタビューカタログだ。DJ、編集、執筆などをおこなう野村訓市さん(当時26歳)が自ら世界中を飛び回り取材を行った。広告ページは無し。その名の通りカタログのような手軽さで持ち運べる。僕も外へ出かけるとき、筒状に丸めて(敬意を込めて)しょっちゅう持ち歩いた。

総勢86名に向けたインタビューが掲載されている。

 誌面は、以下のような方針のもと編集されている。

「1.何をしているかでなく、どう生きているかを象徴する動詞で分類されている。」
(グラフィティアーティストであるFuturaとStash のページは「bomb(爆破する)」)

「2.インディペンデントで自由な生き方が反映された場所でインタビューは行われている。」

「3.自らの信ずるところに向かって生きている人をセレクトした。」

「4.ウェブアドレスを掲載し、簡単にアクセスできるよう、連絡先を記してある。」


対象人物一人ひとりで異なるデザイン。
インタビュー内容は、日本語と英語で記載されている。

 本書のコンセプトになっている「Travelling without moving」=動かない旅。世界各国で生きる人々の考えや取り組みを知ることで、読んでいるときは、起きていながらも海外の国々を漂う夢を見ている感覚があった。

 インタビュー誌を読むのが好きだ。対象となった人の考えや姿勢を知ることができるから。ときにはそこから学びが見つかることもあるし、またあるときには自分と同じ思考に少しの高揚感を覚えることもある。本書では、インタビュー相手に質問ひとつ投げかけるにしても、「何かを始めていく時、何が必要だと思う? 例えば、教育とか。特に自分でビジネスとかおこす場合、教育があった方が楽だと思うんだけど。」など、パーソナルなものが多いように感じた。実際の厚み以上の読み応えがあり、「隙間時間でサクッと」的な読み方は絶対にできないけど、その分、1ページ1ページを貪るように読んでしまう。

 本書はすでに絶版となっているため、中古での購入となった。背表紙は剥げ落ち、濡れと乾燥を繰り返したページはすっかりよれてしまっていた。そうでない一般的な雑誌のように、パラパラと一気にめくることは難しい(もはや十数ページ単位で「ばさばさ」と音をたてながら不器用にめくれる)。1ページずつ読み進めていくにしても、丁寧に弧を描くようにして扱わなければいけない。でも、それが誌面の内容を流さずに全身で読んでいる感じがして良かった。同時に、僕の手元に渡ってくるまでかなり多くの人に読み込まれてきたのだろうと思った。

いい染みだなあ。

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