電話

S(NOCAで暮らした若者)から電話があった。

名を名乗らず、


「ひさしぶりです!」


なんとなくわかってるけど

少しだけ声のトーンが明るいから


「誰や?」


と俺。


「おひさしぶりです!」


ともう一回、

わかってるでしょと

もしやわからんのか?


のニュアンスを含んで。


わかってるにしても

間違えたら最悪やから


「誰や?」


ともう一回。俺


「Sっす。暇なんっす、いま」


「おー、なんやお前、声がめっちゃ若くなったんちゃうか?」


なんかいいことでもあったんかなぁと俺


「マジっすか、嬉しいこと言いますねー」


とかなんとか言いながら

仕事のことやら暮らしのことやら

なんでもない、どーでもいい話をする。


TVでは オリンピック、カーリング女子決勝の第8エンド。

画面に熱くなってたけど、久しぶりの電話に全部持っていかれる俺


「トイプードル買ったんすよ」


「え? お前が?」


「散歩するっすよ」


「え? あのお前が?」


「うちのサンタはこないだ逝ってもうたわ」


「家族とはあってんのか?」


「あ、親父死んだっすよ」


「おーそうかぁ調子悪そうやったもんな。。いつや」


「あー 今年の 2月です」


あまりにもめっちゃ前のことのようなテンションで言うから


「2月って今、2月やけど、去年のか?」


「いや、今年っす、今月っす」


「は!?、めっちゃ最近やんけ」


「あんなの関係ないっす」


そっかそっか、色々あったもんなぁ


「そうか、母ちゃんは?」


「元気ですよ、月に一回は会いに行ってるし」


「まぁお前のことやからチビたち可愛がってんねやろ」


「まぁそーっすねー 実家大好きなんで」


Sには兄弟がめっちゃいっぱいいて

とっても大事し、またされている。


そのあともまた他愛のない話をして

またなー、そのうち顔見せろよーと電話を切った


携帯をすぐ変えるから番号は全部消えるっていうくせに


「アリーの番号だけなんかあったっす」


っていうSが

なんかわからんけど嬉しくて、切なくて、愛おしい


出会って7年

生きてるだけで十分な

そんな存在がこの世界にはおって

時々こうして、ご褒美のような時間をくれる


あ〜、俺もぼちぼちとこれからも変わらず

アホみたいに目の前を大切に生きていこうと改めて。


こんなパッとみではわからない

神様みたいな存在と瞬間が愛おしくてタマラナイ


世の中から“選ばれない“かもしれないけど

わかる奴にしかわからん“素敵“があるもんね


負けるからこそ見える地平があって

落ちるからこそ見える景色がある


日々のなんでもないことこそが

かけがえのない宝物


そしてその大切を守るために

絶対、負けたらへんもんねと挑み続ける

このしょーもなくてアホなこの己に


いやぁでもカーリング女子、しびれたなぁ

俺もガンバルぜ 


生まれてくれて

出会ってくれて ほんま、アリガトウ

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