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薬剤師が解説する軟膏、クリーム、ローションの違い

いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。

外用剤には様々なタイプのものがあります。
軟膏、クリーム、ローション、スプレー、ゲルなど。

剤形によって
塗り心地が変わってきます。

今回は一般的に使用頻度の多い
①軟膏、②クリーム、③ローションの違いについて
解説していきます。

1.軟膏とは

一般的にワセリンなどの
油脂性基剤をベースとした塗り薬です。

油分を多く含むため
べたつきを感じやすいです。

水溶性成分をベースとする軟膏もありますが
今回は前者で比較をしていきます。

2.クリームとは

油脂性成分に加えて、界面活性剤を含み
水やグリセリンなどの水分を含んだ塗り薬です。

伸びがよく浸透性に優れたものが多いです。

クリーム剤は油と水から構成されており
油脂性成分中に水溶性成分を含むタイプ
水溶性成分中に油脂性成分を含むタイプに分類されます。

3.ローションとは

クリーム剤よりも多く水溶性成分を
含ませた塗り薬
です。

非常に伸びがよく、頭皮にも使用でき
使用感もいい反面、刺激を感じやすい方もいます。

4.比較まとめ

それぞれの使用感、保湿性、適用時期等について
表にまとめてみていきましょう。


外用剤は主成分と基剤から構成され
基剤は油性成分、水溶性成分、添加剤から構成されます。

外用剤の構成には添加剤も重要となっています。

今回の議題とは逸れてしまいますが
基剤に含まれる添加剤についても見ていきましょう。

5.添加剤の種類

添加剤にはいくつか種類があり
それぞれで役割が異なります。

主な添加剤とその代表例を以下に簡単に記載します。

・界面活性剤:水溶性物質と脂溶性物質を混ぜる役割

・保存剤:微生物などによる健康被害や製剤の品質劣化を防ぐ役割

・抗酸化剤:有効成分の分解や基材の劣化を防ぐ役割

・pH調整剤:有効成分の溶解性と安全性
       皮膚に対する安全性等の観点から適切なpHに設定する役割

石鹸も界面活性剤の一種であり
手についた油が水とともに流れていくのは
この原理を用いているからですね。

皮膚表面のpHは弱酸性(pH5付近)とされており
pH2以下や11.5以上となると刺激を強く感じるため
外用剤としては適しません。

添加剤の例
・界面活性剤
  w/o型:モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン
  o/w型:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリソルベート60

・保存剤:パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール、チモール

・抗酸化剤:亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、トコフェロール、エデト酸ナトリウム水和物、ベンゾトリオール

・pH調節剤:クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、乳酸、ジイソプロパノールアミン、酢酸

添加剤によってアレルギー反応が起こることもあるため
原因が主役なのか添加剤なのか見極めも必要ですね。

6.いつき博士の考察

基剤によって
保湿性、使用感も変わってくることから
特徴を活かした剤形の選択が重要そうですね。

多少ジュクジュクした部位
あかぎれや踵のひび割れ
には
軟膏の選択

季節や機会によって
替えるのが面倒だと思う方
には
クリームの選択

べたつきを気にしたくない夏場や
頭皮のかゆみも気になる方

ローションの選択

朝はべたつきの少ないローション
夜は刺激の少ない軟膏という
1日のうちに2剤を使い分けることも

医師主導で各種疾患や外用部位に適した外用剤の選択や
使用感の良さを求める患者さんのニーズなどが
重要そうですね。

《参考文献》
マルホ株式会社 塗り薬の蘊蓄
マルホ株式会社 医療関係者向けサイト
https://www.maruho.co.jp/medical/products/hirudoid/index.html