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【活動報告】家族計画@途上国 -SEXと出産の自由と権利-

性と生殖に関する健康・権利、と言うタイトルだと難しいと思って、このようなタイトルにしてみました。今回の話題は「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ=性と生殖に関する健康・権利」というのが世界共通語です。<詳細調べたい方のための情報!

「なぜ国際栄養士なのに、こんな話題をピックアップ?」
「まー、太田旭って自由で独特だからねえ?」とか、お思いですか!?

世界中で起こっている栄養不良の原因に「計画性のない妊娠や、望まない妊娠で、母子ともに十分な食事を得られず」という理由が挙げられます。

そう、途上国と呼ばれる国で働く国際栄養士の仕事の中には「家族計画」というものがあります。私ももれなく、グアテマラ共和国・ザンビア共和国・バングラデシュ人民共和国、どの国でも取り組んで参りました!!

それでですね、
”途上国と呼ばれる国”と言っておきながらアレですが、日本でもとっても深刻な課題の1つだと思うんです。日本は、性教育をタブーとされすぎ。

生理や避妊の知識がないゆえの妊娠はもとより、妊娠していないのに、なんなら性行為にも至っていないのに、好きな異性とキスをしただけで妊娠したと勘違いをして、思い詰めて登校拒否、精神疾患、自殺。。。なんて悲劇が日本各地で起こっている日本は、もっときちんと学生時代から性教育を行っていくべきだと力強く思います。<教育で防げる自殺がここにある!

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【コロナ禍に女子高生の自殺が急増】
2020年8月の自殺者数が増えた。
厚生労働省の「地域における自殺の基礎資料」によると、女性、特に女子高生の自殺の増加率が前年度比で7倍という数字。女子高生たちに、何が起こっているの?

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って、すごくやるせない気持ちでいたら、素晴らしい番組を発見!
17.3 about a sex  by Abema さん、ぜひに全国の小学生~大人まで見ていただきたい教育教材かと思いました。特に若者の受容性という観点で、勝手ながらめちゃくちゃ高く評価したいところ!< コメンテーターのばびちゃんも最高、高校生たちも素晴らしいけど、藤原紀香さんやソニンさんナイスです!

SEXの自由(断る権利、する権利、安全を守られる権利・守る権利)
この記事を読んでくださったそこのあなた、これも何かの縁ですので今一度パートナーの方のことを思い浮かべながら考えてみてはいかがでしょう。

以下、1年前くらいに書いた太田の真面目な記事を転記します。
良かったら読んでくださいー、長いけど💦

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▼はじめに
20世紀の人口爆発まで

1770年から1830年頃、イギリスで起こった産業革命により、女性は新たな社会環境に身を置くことになりました。この頃の世界の出生数は女性1人あたり6人程(1800年)だったと言われています。貧困が減り、子どもの生存率は改善、教育の面でも女性の就学率や識字率が増加するなどの変化が見られた時代でした。当時は若い年齢で結婚し、たくさん子どもは産むけれど、妊娠や出産に関する性の知識が低いために、乳幼児死亡率は高く、そして、平均寿命が短いという状況でした。この頃の世界は、経済や社会においては多産が歓迎され、あらゆる場面で大家族が過ごしやすい仕組みになっていたそうです。

そして1914年から1945年までに起こった、第一次/二次世界大戦、また、世界各国で勃発した紛争や内戦などが終結した頃から、世界人口は急激に増加していきました。これは単に紛争によって死亡する人口が減ったからということではなく、世界各地で教育水準や医療水準、安全面でのインフラ水準が高まったことも大きく影響しています。そして20世紀には、人類は人口爆発と呼ばれる人類史上最大の人口増加に至りました。これは、我々人類が過去6千年の間に存在した全ての人口の合計の約5分の1が、現在の人口に当たるほどの急激な人口増加です。

▼リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは?
「リプロダクティブ・ライツ」を日本語に訳すと、性と生殖に関する健康・権利のことで、1994年のカイロで行われた国連会議(179ヵ国の政府代表が集まり、自発的な家族計画や安全な妊娠、出産ケアなどを含む包括的なリプロダクティブ・ヘルスケアを全ての人々が享受できるように求めた国際人口・開発会議)で、国際的承認を得た考え方のことを言います。女性が身体的・精神的・社会的に健康を維持し、①子どもを産むかどうか、②いつ産むか、③どれくらいの間隔で産むか、などについて選択でき、自ら決定する権利のことを示します。

「リプロダクティブ・ヘルス」は、人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持ち、子どもを産むか産まないか、何人産むかを決める自由をもつことを意味し、さらに、個人の生と個人的人間関係の高揚を目的とする性に関する健康(セクシュアル・ヘルス)も含むとされています。

また、リプロダクティブ・ライツは人権の一部をなし、すべてのカップルと個人が、自分たちの子どもの数、出産間隔、出産する時期について責任を持って自由に決定できることに加え、そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利や、最高水準の性に関する健康およびリプロダクティブ・ヘルスを得る権利、差別、強制、暴力を受けることなく、生殖に関して選択し、自らが決定をする権利とされています。

▼若年出産や多産が起因する栄養不良の悪循環

今から20年前の1999年に、世界の人口は60億人になりました。1999年に発刊された世界人口白書で、「60億人の世界では、次の9事項を受け入れ可能となる社会/世界を求める」として9事項が発表されました。この中には、世界の開発目標(2000年~2015年はMDGs※1、2015年~2030年はSDGs※2)の目標の中にも、含まれる事項が多くあります。

【1】すべての新生児が、健康な妊娠期間を過ごした母親から生まれる。
[補足]母体が不健康/栄養不良状態である場合、へその緒を通して胎児に送られる栄養の質や量が低くなります。このため、不健康/栄養不良状態の母体から生まれる赤ちゃんは栄養不良状態(貧血や低体重児)となる確率が統計学的に高まります。

【2】すべての乳児が、適切な食事を与えられ、予防接種が受けられる。
[補足]人の脳の容量は妊娠(受精)から2歳になるまでの1,000日の間で、ある程度決まると言われています。①も含め、乳児の時期に予防接種で防げる病気や、不適切な補完食(離乳食)の影響で、乳児の発育が大きく制限されることなく、最大限に成長環境を整えるべきだと言われています。

【3】すべての女児が、より良い栄養を摂取し、また、よりよい保健ケアや教育を受ける。

【4】すべての若い女性が、HIV感染から身を守ることができる。

【5】すべての女性が、妊娠の間隔をあけることができる。
[補足]単に母体が妊娠出産によって受けたダメージを回復するための期間というのではなく、世界保健機構では一般的に子どもが2歳になるまでは、母乳による栄養補給法(生後6か月からは食事も併用)を推奨しています。また、授乳中の妊娠は、流産の可能性が高まるため、妊娠間隔を十分あけることが合わせて推奨されています。授乳中に出る通称「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、産後の弛緩した子宮を産前の子宮に戻すため、子宮を収縮させる働きがあります。この収縮が妊娠の場合には、流産へと繋がってしまうのです。

【6】すべての男性が自分と家族のウェルビーイング(福利)を守る責任があるということを受け入れる。

【7】すべての高齢者が、若いときから自分の健康を守っている。

【8】すべての人が、正しい情報を得て、責任ある行動をとることによって健康リスクを回避できる。

【9】すべての人が、自分の人生の重要な決定について、選択肢を持ち、自ら決めることができる。

▼国際栄養士が担う「家族計画教育」とは

日本では「家族計画」について、1958年度の厚生白書にて、以下のように明記されています。

「われわれが健康にして文化的な生活を営むためには、自分の手で家族設計すなわち適当な家族構成を考えていくことが必要となる。家族計画とは、このような自主的計画的な家族設計のことをいう。」

自主的計画的ではない原因
先進国と比較して、多くの発展途上国では多産であり、自主的計画的な家族設計が行えない原因は多様です。ここでは多産となる原因について、いくつか思いつくままに挙げてみたいと思います。

【1】子どもの数が多いほど、子孫繁栄力が高いと称えられる文化や宗教の影響を受け、あらゆる場合も子どもをたくさん作ることが、人として地位の高いという価値観が根付いている。

【2】子どもの数が多いということが、所有している資源や食料の一人当たりの分配量を少なくする要因になり得るということと紐づけられず、子ども一人一人が生きるために必要な資源や食料を十分確保できる範囲で、出産を計画するという発想が持てない。

【3】子どもは家庭が所有する労働力という認識を持ち、貧困に悩む家庭程、子どもをたくさん持つことで家庭の経済が豊かになると考えている。

【4】性教育が普及しておらず、妊娠の仕組み/避妊の方法などを知らずに望まない妊娠が生じる。

【5】性欲の高さを自己でコントロールするのが難しい場合、そのような人に対する公共サービス/仕組みがない。

【6】強姦などの犯罪が社会的に正当化されている状況があり、対策がなされず強姦が防ぎにくい。

【7】中絶手術を安全に実施できる医療者が不足しており、望まない妊娠でも出産するしか手段がない。

【8】国によって中絶を法律で認めていないため、望まない妊娠でも出産するしか手段がない。

家族計画が求められる理由
1950年代以降、世界ではアジアを中心に食糧や資源が不足し、深刻な栄養不良状態に陥る人々が多くおりました。その原因として指摘されたのが、公正な分配の仕組みが確立できていないことと、人口の急激な増加でした。発展途上国で人口が爆発的に増加すると、労働者による経済活動には変動がなく、一人当たりの所得水準や食料の取得量は低くなり、貧困や飢餓状態に陥る人々が増えると言われます。そのため、世界では人口増加に対する政策として、家族計画の必要性が叫ばれてきたのです。

家族計画の現在の潮流
1994年の国際人口開発会議(ICPD)では、人口統計を優先させた国家の人口政策というマクロの視点から、個々の健康や生活というミクロの視点へ重点を移すべきと発表されました。つまり、日本の様に、少子化にある国や地域もあれば、前述のように多産が課題とされる国や地域であっても、その原因は多様であることから、単に出産数をコントロールしようとするのではなく、個人ごとに安全で快適な出産・育児が実現できるよう支援することが求められてきたということです。

▼太田旭の家族計画教育実践事例紹介

保健ポストの役割

私がスタッフとして活動した多くの国には、保健ポストと呼ばれる保健省傘下の組織がありました。保健ポストは、税金や助成金によって運営されていることから、所得はもちろんのこと、年齢や性別、学歴や宗教を問わず、地域住民の誰でもが、無償で保健情報の提供や教育が受けられる唯一の公的機関として、予防接種や健康診断などを行っています。また、健康・栄養の教育、避妊の方法や妊娠の仕組みについての情報も発信できるよう努めています。

ターゲットの設定
世界人口白書2019によると、現在、世界の2億人以上の女性が、避妊を望みながらも現代的な避妊方法に関する情報やサービスに、アクセスできていないそうです。その多くは、少数民族・若者・未婚者・LGBTI(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・インターセックスの方々)・障がい者・農村部/都市の貧困層の人々とされています。支援するターゲットの設定の際はこういった状況を、マクロな視点からよりミクロな視点に落としむことが大切です。

ターゲットの設定は、担当の国・州・県・地域にどんな文化や価値観があり、どんな方々にどんな情報やサービスが届いていないのか、理解が浅いのかなどを把握し、その地域ならではの土着のルールを十分に尊重した事業計画を立てながら行います。ここで気を付けたいのは、統計調査の結果や政府・団体の報告内容にとらわれ過ぎないことです。地域がマクロになればなるほど、思い込みやバイアスが本質を見えにくくさせてしまう恐れがあるからです。

バングラデシュの事例

★2分ほどのショートムービーです。よろしければどうぞm(__)m
 https://www.youtube.com/watch?v=1d34DIkXHrE&t=16s

栄養改善プロジェクトを立ち上げるにあたり、事前調査の際には、政府文書では統計的に男性から女性への家庭内暴力や性的暴力、児童労働や女児の児童婚及び若年出産の課題を抱えるとされ、閉鎖的な空間で忍耐を強いられる女性が多くいるということを確認していました。

現地を訪れて受けた印象は、「女性は神秘的であるため、大切に家の中でひっそりと守られているべきもの」とされ、女性は閉鎖的空間の中で内向的である一方、男性はあらゆる場面で外交的で優位というものでした。決定権の多くは男性が握っており、一般的に女性が外出する際にも、男性の許可が必要となっているため、保健ポストで開催される研修への参加も、男性の許可を得られなければいけないという独自のルールがありました。

このような文化の中で「妊娠計画について考える研修に参加を!」と女性達に声をかけて歩いても、当然誰も集まらないことは安易に予想できました。ですので「料理について学びましょう。家族で美味しい料理を食べられるようになりますよ!」と男女問わずに声をかけると、男性から許可を得た女性達が、続々と研修を受けに集まることができたのです。

調理実習を活用した家族計画
そこで私は栄養士として教育実習プログラムの開発を行うと共に、衛生指導や家族計画教育を盛り込んだ料理教室を企画し実施しました。生理周期や妊娠周期が理解できるよう、カレンダーの見方や数の数え方を伝えたり、料理教室でできた食事を試食する際にも、もしも子ども3人で分けるとしたら一人当たりどれくらい食べられるか、それが6人だったらどれくらいに減ってしまうのか、3人の時と6人の時、お腹をいっぱいにしたり、栄養が充足するためにはどちらを選ぶのがより良いのかなど、実際に食べ物を使って十分な食分配が予測できるようシミュレーションを行ったり、避妊方法とそのメリットデメリットを伝えるにとどまらない家族計画教育を展開していました。

参加してくれていた女性達は、家庭の悩みを誰かに共有する文化がなかなか無いので、プライバシーの保護に関わる仕組み作りや、話しやすい雰囲気作りは常に心掛けていました。そして、家庭内暴力やリプロダクトライツに関わるSOSを受け取った際には、速やかに専門の相談員を紹介し解決へと努めていました。 

▼途上国でメジャーな避妊アイテム

海外の多くの国では、男性の協力が無くても実施可能で、日々の管理が簡単であり、保健ポストですぐに処置が可能な「Implants」という避妊アイテムが多く使われてきました。これはマッチ棒サイズのホルモンを放出するスティックであり、女性の二の腕などの皮下に埋め込み、埋め込んでいる間の有効期間(約3年程)避妊ができるというものです。

1998年以降にヨーロッパを中心に使われるようになり、2006年にはアメリカでも認可されている避妊具ですが、日本ではまだ認可されていないため認知度は低い状況です。希望者へのコンドーム無料配布も多くの国で導入されている対策ではありますが、男性の理解と協力が得られる場合しか活用できないためハードルが高く、なかなか普及していない場合も多いようです。

家族計画は、国際保健・栄養教育従事者には、必ず業務の範囲に入るトピックなので、この仕事に携わることになった際には、事前に家族計画ガイドラインなどで予習し、各避妊具の特徴や取り扱いなどを調べておくことをお勧めします。

By 太田旭

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