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挫折の美学

幼い頃は足が速いと称され、スポーツもそれなりに出来た。
狭いコミュニティでの一番という勘違いは転校を機に絶望と変わる。

典型的な挫折を味わい、中学で早々サッカーを諦めて高校でテニスを始めるも、プレーでは一度も一番を取れず。
しかし人をまとめるという自分の居場所を見つけて部長を全うした。
それは間違いなく自身のアイデンティティを形成する根幹の経験となっている。

何処にでもある陳腐なエピソードの中にも、自分が主人公になって何かを賭して勝負に出る。その結果に何かを想うという一連のプロセスは人を惹きつける物語になり得ると思う。

これが自分の生きる道だ。これしか無いと思った時、人は輝く。
それを観るのがたまらなく好きだ。
これからも自分自身が仕事の中で、自分の身内で、作品の中で、トッププロの人達の中で触れ合っていきたい。

1:世良恭平(GIANT KILLING)

確かに世良は 体格的には恵まれてないのかもしれない
でもね
世良みたいな選手ってのは 
自分に何ができないかを知ってる
それはつまり
自分にできる 限られたことが わかってるってことだ
だからピッチで迷わない 選択肢がない分 プレー中の判断が早い
(中略)
おそらく世良みたいな選手は……劣等感から始まってる
できないことを 消去法で削ぎ落とし
できることだけを 磨いてプレーしてる

GIANT KILLING 9巻 達海猛監督

自分も中学時代はストライカー。それしかしたくなかった。点をとってヒーローになる。

でも蓋を開けてみたら体格もフィジカルもスピードも突破力も平凡だった。
中学生の自分に叫びたい。
控えに回って絶望する暇があるなら、若干のシュートセンスとスタミナとスペースの見つけ方をもっと磨けと。それをアピールしろと。

当時は自分に何が出来るかなんて考えもしなかった。前を向くってのは次を考えること。そこに向かうステップを漫画から学ぶ。
世良、本当に好きです。

2:高見盛

純粋過ぎる性格で要領が悪い。
相撲以外はとことん不器用でファンサービスもろくに出来ず無愛想に見える。
その不器用さは八百長問題の最中でも携帯の提出も免除されるほど完全に白と信頼を得ていていかに視野の狭い一直線な性格だったかが分かる。

日常のコミュニケーションにも難があるエピソードが沢山ある方なのだが、死に物狂いで相撲を取るということに対しての愚直さが取り組みに溢れている。

あの特徴的な取り組み前のルーチンは立合いでの恐怖を取り除き「二度と怪我をしないように気を引き締める」為のもの。

リアルタイムで見た時、実況解説は普段通りで淡々としていた。
それとは裏腹にハラハラしながら涙が出るという稀有な体験をするとは思わなかった。

最後の取り組みで、ここまで緊張するか?ここまで勝ちに飢えた取り組みを組めるか?

相撲しか自分にはない。それに愚直に向き合う時の強さ。やっぱり高見盛は凄いよ。

3: Marcus Willis マーカスウィルス

実家暮らしで小学生相手にテニスコーチをしていたはずがセンターコートでフェデラーと対峙したシンデレラボーイ。
涙必須の引き込まれる完璧な記事があるので詳細はこちらから

怪我に悩み「太った負け犬」と振り返る日々の中、引退を決意したところに、当時出会ったばかりの恋人ジェニファー・ベイト(現在 妻)が止めに掛かる。

「あなたは馬鹿よ。テニスを続けなさい」

本気で目指した道の引き際の決断は何よりも尊重すべき、名の通りの「尊いもの」だと思ってた。
そこに無神経にもズケズケとプレーヤーでもない恋人が割って入って人生を変えるって何なん。
自分は現実を見る事、受け入れる事に希望や感動を見出したいと常々思っている。
でも、一方で運命めいた夢を信じるのも悪くないと思ったストーリーだった。

What a wonderful tournament.
What a great story.
夢を見るのも悪くない

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