2021/8/2~8/8

相続

父の遺産相続の件で税理士から依頼された書類を叔父の会社に提出してもらうよう依頼した所、叔父は見ず知らずの税理士に見せるものじゃないと反発し、税理士は株式評価に必要な書類なので無いと正しい申告ができないと言われ、叔父と税理士の間の調停をしているような気分になる。結局、税理士に秘密保持契約書を書かせることになったのだが、相続の主役は誰なのだろうか。

節税、租税逃れ

今年に入ってそんなことばかりやっているので、自然と相続とか税金とか老後資産とかが頭に浮かんだりする。

なのでつい富裕層の相続なんてトピックが目にとまる。もちろん我が家の相続は富裕層の節税術とは縁が遠いのだが、興味は湧いてくる。

先日この本を読んでいたので記事の内容もすんなり入ってきた。

それにしても節税と書いているものの、実際は財産を海外に移して日本で払うべき税金から逃れたいというもので、日本に住んで当たり前のように日本に税金を収めている我々からしてみれば、彼らが金持ちだからできるズルをしているように見えてしまう。だが俺が稼いだ金なのに国がそれを盗んでいく、というマインドの経営者にしてみれば税がかからない場所に移動するというのは合理的な判断なのだろう。

無論国は金を盗んで私腹を肥やしているわけではなく、保険、福祉、インフラ等々国家運営の元手としているわけで、税収がなければその反動が国民の生活に直結する。自らは海外に財を移転して税金を逃れる一方で、企業の経営者として日本の国民を相手に商売するなんて許されるのか、という労働者=消費者側の反感を買い、富裕層憎しの感情は一層燃え上がるのである。

自称日本で一番売れているビジネス週刊誌を読むであろう経営者層に受ける特集がこれなのだから(会社にもこれが置いてある)、自分も対抗してブルシット・ジョブを会社の本棚にでも忍ばせてやろうかと思ったのだが、記事の論調は意外や海外に資産移転しても税から逃れるのは難しい、というものが多かった。

シンガポールのマネージャーは宴会屋が多くて口車に乗せられて財産を消尽させられると聞くと、いくら金持ちになってもむしろ心配は尽きなさそうだなと思う。そんな心配をしながら金を大事に抱える生活って価値があるのだろうか、いや俺は自分の力で稼いできたのだからそんな落とし穴からも逃れて上手くやっていく、とオラついていける者だけがそうやっていくのだろう。

そういうオラついた経営者になれず堕落したようなのがうちの父で、その父の財産を複雑な気持ちで相続をしているのが今の自分なわけである。

Phantom

図書館に予約をして順番待ちをしていた本がまとめて2冊届いてしまう。

「マイホームの彼方に」は日本の戦後住宅政策史についての本で、今こんなことをやっているので自宅も相続するわけなのだが、この日本の持ち家という幻想に我が家は狂わされたようなところがあり、自分がこれから生きていく上での問題意識になっている。こんな家売っぱらってフラフラと賃貸暮らししたいと思う一方で、持ち家という資産を軽々とぶん投げていいのかという警戒もあり、根本的に日本の住宅史を批評的に捉えといけないのではないかなどと考えるのだが、半分は興味、趣味である。

「Phantom」は羽田圭介の小説で、主人公は元アイドルで今は事務職だが株式投資で5000万の資産を貯めて年利5%の利益で今の年収を稼ぐことを目標に生活をしている。何かとこの金で年利5%の運用をすればと神経症的に複利計算をする癖があり、趣味のサーフィンを常に先行き不透明な株式市場になぞらえながらも、今この瞬間を感じられるものだと考えたりしている。

一方でその彼氏はオンラインサロンにハマり、自発的に無償労働したり村をつくろうとするなど、ありがちな人物設定になっている。

現代社会の両端とも言える二人の仲は当然のように悪化し、脱貨幣社会といいながら月額5千円も取るのかお前の団体円に必死だな、とか、金を溜め込んでどうするんだ貯めるだけで使いみちも思い浮かばないくせに、と互いに煽りあい喧嘩別れをするのだが、彼氏の村がいよいよカルト化して某宗教団体のようになり、彼氏を連れ戻そうと傭兵になった元カレを250万で雇って潜入するのだが・・・

というあらすじなのだがnoteの読者層に響きそうな話だ。主人公がレイヤーに挑戦したりと、題名にもある通り幻影、亡霊(主人公が自分の分身とする投資ポートフォリオやオンライサロン上のペルソナ等)が欲望にレバレッジをかけて、実体ある自分を遠いところに連れ去ってしまうという話である。株式市場のみならず、アイドル、オンラインサロン等々、我々の欲望にレバレッジをかける投機装置はあちこちに偏在していて、それを駆動する経済原理は我々を満たすどころか欲望を路頭に迷わせる。

そういえば最近小説を読んでいなかったなと思い手にとったが、よく取材された世俗的な小説といった趣で楽しめた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?