どうせ生きるなら、小説性をもって。

村上春樹を読んだことがこれまで一冊もない。厳密にいえば、小説について、だけど。さすがにどうなんだと思って手に取ってみたものと、プレゼントされたものと、2冊だけ積まれてあるけど、特段避けるように嫌っているわけでもなく、どうも生活の中での優先順位があがらぬまま今に至っていて、「ノルウェイの森」の映画を見た、くらいしか接点がなかった。けど、エッセイは読む、というかどちらかというとこの人のエッセイは好きで

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人生の勝算

スナックいいなというのが最初の感想です。

何を言っているのかよくわからないと思うのですが、「人生の勝算」の中で街の中で最後までなぜスナックが残るのかという話がありまして。

そこでは、スナックは人と人のつながりを作る場として紹介される訳です。

社会人になると、中々出会いとか学校みたいに定期である訳ではないじゃないですか。

そこで、様々なコミュニティの場として出てくるのがスナック。

人はつな

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5辛大盛がさえないボクに教えてくれた幸せな生き方(一圓克彦、小川仁志、中司祉岐)

幸せになりたいですか?
こう聞かれたら、あなたはなんと答えますか。

本書は、22歳の夢なし希望なしフリーターを主人公にした成長物語を通して、考える力を養い主体的に生きていくためのアドバイスを、ビジネス哲学小説の形式で指南する一冊。

「幸せになりたいですか?」と聞かれれば、ほとんどの人が「ハイ」と答えるでしょう。
しかし、「ハイ」と疑いもなく答えた人ほど、この本はおおいに読むべきです。

なぜな

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書評「怪物ベンサム 快楽主義者の予言した社会」土屋恵一郎著

ベンサムとは失敗した人間である。この著作はベンサムの人物伝であり、19世紀のイングランドの知識人社会の物語である。ベンサムは功利主義哲学の祖の一人として現在では知られているが、彼は法律家を志していた。つまりがイングランド特有のコモン・ローという法の網の目、法解釈の歴史の積み重ねの上にある複雑なる体系を、「完全なる法典」により整理すること。これが彼の生涯の一番大いなる野望であった。「イギリス法注解」

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『日本語の作文技術』#7

「あなたの文章には不思議なリズムがあって、ひと文字でも直すと全体が崩れそうだから修正は自分でやってください」

かつて一緒に仕事をしていた編集長から言われた言葉だ。

たしかに、文章を書くときにリズムはとても意識している。でも、“不思議”とは?

それが心地いいものだったのか、気持ちが悪いものだったのかは、いまも分からない。ただ、サラサラいきすぎないようにとだけは言われた。

「読みやすさ」はどう

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社会のゆとりと隙間

“ゆとり世代”ど真ん中だ。

“ゆとり”というと、もっぱらゆとり教育を受けた、80年代後半から90年代前半に生まれた世代のことを揶揄する言葉の如くなっている。

「なにお前、ゆとり世代?」「そうっすよ」

そんな会話が聞こえてきそうである。

しかし、ゆとりとは本来、「余裕のあること。窮屈でないこと。」の意を持つことは、言うまでもない。

今、社会にゆとりはあるか。

* * *

作家の沢木耕太

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登場人物による文明批評やインテリ談義を楽しむ本。しかし過剰な露悪趣味には少々辟易:ウエルベック『服従』

浅田彰の書評などで元々興味があったため手に取った。主人公は近代文学の研究者であり、無気力なノンポリ中年独身男であり、女子学生を食い物にしているが性生活に行き詰まりを感じている。本作では、イスラム化という社会的変化と、それに伴って変化していく主人公の生活や、研究対象としているジョリス=カル ル・ユイスマンスという作家をめぐる思索などが、並行して語られていく。
 作家、政治家、ジャーナリストといった固

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「事件」という概念をさまざまな観点から論じることを通して、ジジェク自身の思想が概説される:『事件! 哲学とは何か』(河出ブックス)

結構大事なことだと思われるので、まずは訳語について。eventが「事件」と訳されているが、日本語の現代思想系テクストでは「出来事」という訳語がほぼ定着している、立派な術語である。しかし、本書はガチガチの学術書ではないし、驚きを込めた「事件」という表記の方がふさわしい箇所が多々あるため、こちらを選択したのも頷ける。他方、「俳句」が扱う(とジジェクは捉えている)純粋で無意味なeventは、「出来事」と

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『 ハリー・オーガスト、15回目の人生』(角川文庫)

■良かった点
 戦前生まれの主人公は「カーラチャクラ」と呼ばれる転生者で、20世紀の大半を生き、死ぬ度に人生をやり直すことになります。人生の度にいろいろな職に就き、国をめぐり、人に出会い、歴史的事件を目撃することになります。数あるループものでも、人生を丸ごと繰り返すというのはあまりないと思います。
 これらを詰め込むには、作者が相当の勉強をしたに違いありません。こうして本作は時間的にも空間的にも大

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マンガ中心の特集:『ユリイカ 2016年11月号 特集=こうの史代』

『この世界の片隅に』の劇場アニメ公開に合わせた特集だが、劇場版を論じているのは土井伸彰、藤津亮太の2名しかいないので注意。あとは片淵須直監督、主人公すずを演じたのん、それぞれに対するインタビュー記事がある。
 残りは特集名にあるとおり、マンガ作品を論じた論考を中心に構成される。やはりというか、話題の中心は『夕凪の街 桜の国』および『この世界の片隅に』にあるが、他の作品もまんべんなく言及されている。

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