記事紹介:JLL世界プレミアムオフィスビル賃料

JLLが世界86都市のプレミアムオフィスビル賃料を比較した、プレミアムオフィス レントトラッカーを公表した。

JLLはCBREと並んで、世界で展開する不動産総合ベンダーであり、仲介(売買・賃借)に人員をより張っているのがCBRE、ファシリティマネジメント等基盤系ビジネスに強いのがJLLと言われている。
他にはCushman & Wakefield、Colliers、Knight Frankが有名である。

さてJLLが世界メジャー都市の最新版のプレミアムオフィス賃料を一覧化した。

東証で海外リートのETF(1659 iシェアーズ 米国リートとか)が買える昨今、いよいよ不動産もインバウンドのみならずアウトバウンド投資もメジャーになりつつあるが、「各都市のリーシングマーケットはどんな状況か?」についてはイマイチ把握してないという方が多いと思われる。

その点この資料はNYC、London、Beijing等世界都市について、馴染みのある東京丸の内、大阪、名古屋と同等に比較してあるという点で有用である。

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上から順に抜粋してみたが、世界一オフィス賃料が高いのは香港セントラルである。ただレポートにも記載されている通り、香港中環は20%賃料が下がった
 香港の下落傾向は今に始まったことではなくここ数年のトレンドである。国安法可決により、香港にリージョナルセンターを構えるグローバル企業が拠点をシンガポール等の国外に移している等、香港のオフィス市場には逆風が吹き続けており、それにコロナが追い打ちをかけた形だ。
※余談だが、日本政府は「国際金融都市」と銘打ち東京・大阪・福岡等をポスト香港の国際金融センターにしようと頑張っているようだが、法人税・英語・会社設立の容易さ等で劣後している。

一方でNYCミッドタウンは世界二位の賃料でここは前年調査よりも11%程度上昇している。

その他日本国内では、東京はコロナ前からすでに賃料がピークと言われていたが、そこにコロナショックが発生し、IT企業が集積している渋谷を中心に賃料は現在横ばいから下落傾向にある。一方で、大阪・名古屋についてはコロナ前から好調だったことから前回調査から名古屋は15%上昇、大阪は9%上昇、福岡は6%上昇となっている。

その他全体的な傾向としては、NYC,London,香港等、CBDエリア(Central Business District)の賃料が極めて高い都市ではその周辺に拠点を移して賃料削減する動きがある。
例えば日本でもMUFGが一部オフィスを丸の内から麹町に移すといった動きがあった。

ちなみにコロナがオフィスマーケットに与えた影響だが、日本よりも被害が大きいLondonやNYCではむしろ伸びていたり、コロナを封じ込めたはずの中国深センは賃料が下落傾向にあったりと、「コロナのせいで賃料が下落している」という因果関係は必ずしも成り立たない。結局「賃料は主に需給のバランスにより決定され、コロナはそれに付加的に影響を与えている」という方が実情をより表していると言える。


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