1分30秒小説『無難』

ワニ「すいません」
店員「はい、いらっしゃいませ」
ワニ「この財布、何革?」
店員「そちらはピッグスキンですねぇ。豚の革で出来てます。柔らかな手触りで人気があります」
ワニ「これは?」
店員「そちらは牛革です。カーフスキンと呼ばれる生後6ヶ月以内の仔牛の革で、牛革のなかでも最高級品と言われています。きめ細かく、軽くて丈夫なのが特徴です」
ワニ「へー、いいねぇ。あとこれも気になるんだけど」
店員「そちらはちょっと変わってまして、シャークレザーと呼ばれるサメ革を使った製品です。筋繊維が密なので、しなやかで丈夫です。帯状の凹凸にムラがあり、指紋のように一つとして同じ物が無いんです。全て一点ものになりますので、自分好みのものを探す楽しみがあります」
ワニ「なるほどねぇ。革にも色んな種類があるんだねぇ。あと、これもいいなぁ」
店員「え?あ、そちらのお財布ですか?」
ワニ「これは何革なの?」
店員「えっと、そちらはですねぇ、そのぉ……」
ワニ「何革?」
店員「はい、えっと、少々お待ち下さい……どうしよう」
ワニ「あ、ごめん。ひょっとしてワニ革?」
店員「あ、はい。すいません」
ワニ「いいよ全然。じゃあ、これもらおうかな」
店員「え?こちらをお買い上げですか?」
ワニ「無難でしょ?」
店員「……はい、確かに、よくお似合いになると思いますが」


店員「有り難う御座いましたぁ。またお越し下さいませぇ……行った?いや、焦ったぁ!そっかぁ、意外に…………そっかぁ」

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