或虎

某ペットショップのバイヤー。趣味で詩とショートショート書いてます。休みの日はウクレレと…

或虎

某ペットショップのバイヤー。趣味で詩とショートショート書いてます。休みの日はウクレレと筋トレ。好きな作家は、梶井基次郎、フィリップ・K・ディック。好きなミュージシャンは、エイフェックス・ツイン、岡村靖幸。好きなモビルアーマーはビグロ。

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  • 『ペル・パラベラム・アド・アストラ』

    長編どころか中編すらまともに完成させたことがないので、恐々書いてます。

  • 小説(1~2分)

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    小説

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『詩は罫線を待たない』

*注意!ページへは、気まぐれに加筆します。  天候や心象、昼食や性欲によって、内容は変わります。  作品には至らない、実験的なものや未完成なもの、雑感も書きます。メモ帳のようなものです。  説明文ここまで。 カウントダウンアプリでスマホに表示している 60歳までの日数をね 今見たらあと4100日だってさ 4100回眠って起床して だいたい12300回くらい食事をする もし60で死ぬなら あと4100日か ふーん 叶えたい夢 実現させるための原資 4100point也 ま頑張

    • 20秒小説『アプリを終了せよ、街に出よう』

      「一生のうち1/3は眠っている」 「まぁ、そうだね」 「起きている時間のうち1/3は移動と食事だ」 「それも、あながち間違ってはいない」 「起きている時間のうち、残りの2/3は検索とザッピングだ」 「……」 「違うか?」 「残念ながら、そうかもしれない」 「つまりこうだ。我々の人生には、誰かを愛する時間なんて存在し得無い」 「……」 「反論は?」 「反論はない。でも間違っている」 「何が?」 「何もかもがさ」

      • 2分30秒小説『ポニーテールに恋したインコ』

         私は棚の上から見ている。  インコが彼女の肩に止まり、ポニーテールに求愛しているのを。  彼女はそれを楽しんでいる。彼氏も笑っている。私は一抹の怒りを覚える。インコの気持ちを軽視している二人に対して。  インコは真剣だ。必死に歌っている。恋の歌を歌っている。自分の想いを歌っている。でもその歌にはごくごく僅かな歪がある。それはインコの持つ負の感情からくる歪で、焦燥であったり、絶望であったり、いやそれが希望だったり切望だったりもするんだけど、ともかく一直線に響くはずの歌声に引

        • 1分30秒小説『故障』

           課長がデスクににじり寄って来て、頭を指で差し一言。 「高木君、どう?AIの調子は?」  戸惑いつつ、こう返す。 「冗談は止めてくださいよ課長、僕はAIじゃないです」  課長は満足げに頷き。 「正常に機能しているね。頑張ってくれよ」  振り返り野田のデスクに向かっていく。 「野田君、AIの調子、どう?」  野田は苦笑いして。 「AI?ああ、えっと頭の調子ってことですか?特に問題ないと思いますが」 「いいねぇ、期待してるよ」  言い残して自分のデスクに座る。  野田と目が合う。

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        『詩は罫線を待たない』

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        • 『ペル・パラベラム・アド・アストラ』
          9本
        • 小説(1~2分)
          31本
        • 小説(1分以下)
          29本
        • 61本
        • 小説(2~3分)
          37本
        • 小説(4~5分)
          25本

        記事

          詩『今すぐダウンロードして人生にログインしよう』

          カウントダウンアプリでスマホに表示している 60歳までの日数をね 今見たらあと4100日だってさ 4100回眠って起床して だいたい12300回くらい食事をする もし60で死ぬなら あと4100日か ふーん 叶えたい夢 実現させるための原資 残4100point也 ま頑張るか

          詩『今すぐダウンロードして人生にログインしよう』

          2分40秒小説『しょうゆ、めんとこ、おとめ、がっし、っぽ、うご、びーに、めーちゃー』

           出張、ホテルでチェックインを済ませて街へ――さて何を食おうか。当てもなく歩き一巡「さっきの雰囲気のある中華料理店にするか」と回れ右をする視界にラーメン屋の暖簾。路地をちょっと入った先、夕景の薄闇が小溜まりになっているところに「ラーメン」という赤い文字だけぼうっと浮かんでいる。考える前に足が向かっている。 「らっしゃーませぇー、何名様でしょうか?」 「一人」 「ではこちらのカウンター席へどうぞ」  老舗的な店かと思いきや意外に新しめで清潔感のある店内。入口に黒ウーロンびっし

          2分40秒小説『しょうゆ、めんとこ、おとめ、がっし、っぽ、うご、びーに、めーちゃー』

          桜の詩いくつか

          忘れられないことも 忘れてしまうことも苦しい花びら 生きるこつ死ぬこつ 桜に問いし春 青葉をば見届けむとす殿(しんがり)桜 次の春をば思い散り笑む 爆発のように空を脅かしておった花びら 既にして青葉に収束し寂々 されども我が頭蓋まさに 今が盛りぞ残響桜 脳髄の闇を淡く染め抜き 閏う景色に人を浮かべて 『全力桜』 後悔を知らず散りゆく桜の貴さ 五十にして花びらの重さを知る 年々遅くなる 今年も散ってからようよう詠む気になった 桜 花びらが着地しやすいよう 心を平らに

          桜の詩いくつか

          3分40秒小説『柏木さんそれは中古です』

           待ちに待った新作、推しのグラビアDVD、グループを卒業して初めてリリースしたイメージビデオだ。アパートの階段を駆け上がり、紙袋から取り出しパッケージを眺める。白いワンピースを着て浜辺で燥いでる笑顔――可愛い!嗚呼、早く見たい!逸る気持ちを押さえ丁寧にビニールを破る。ケースを開ける。  DVDが2枚、1枚は特典映像、これは後で見よう。まずはメインの方を――ん?固い。取り出せない。くそっ!悪戦苦闘する。くそっ!全然外れない。中央の穴ががっちりプラスチックの爪で固定されている。接

          3分40秒小説『柏木さんそれは中古です』

          1分30秒小説『組織におけるリソース管理の重要性~蕎麦湯という共同資産に学ぶ』

           新人を連れて社屋の斜向かいの蕎麦屋へ。ザル蕎麦を二つ頼む。 「今日は俺のおごりだ」  食後、急須のような容器を店員さんがテーブルの中央にとんと一つ。 「先輩、これ何すか?」 「蕎麦湯だよ。知らないのか?」 「香川にはないっす」 「いや、ないってことはないと思うけど……要は蕎麦のゆで汁なんだが、栄養素がたっぷり含まれてて体にいいんだ。結構いけるぞ」 「へー」 「実は俺はこれが好きでね。これ目当てにここに通っているようなもんだ」 「えーと、どうやって飲めばいんですか?」 「残

          1分30秒小説『組織におけるリソース管理の重要性~蕎麦湯という共同資産に学ぶ』

          詩『唇と金魚の座標』

          誰かを好きになるなんて ごく当たり前の感情だ そう思っていた 君を好きになるまでは たまに不安になる 僕は本当に君のことが"好き"なんだろうか? これはもっと別のなにか 深刻で致命的な感情なのでは? 君の唇がその答えをしっている はず 玄関で飼っている金魚に相談したんだ そしたら口をパクパクしてこう言った 『彼女の唇に聞いてごらん』って 信じてない? 僕は読唇術が使えるし そもそも魚はウソをつかない だから教えて 熱くて重くて取り返しのつかない感情 この世界のどの座標

          詩『唇と金魚の座標』

          詩『桜和音』

          空に耳伸ばしめ 桜の咲音を探る 微かな調べ既にしてもう 散音と和している 思い出も鳴る えくぼが窪む音 肌が紅潮する音 瞳が濡れる音 鼻啜れ口端上げろ 横断歩道の鍵盤を踏め 渡りきりゃ次の空だ かつて和音だった鼓動 重なり求めつスニーカー打って

          詩『桜和音』

          2分50秒小説『母乳カフェ☆ミ』

           繁華街を歩いている。息切れがして立ち止まる。前屈み両膝に掌を当て、肩を上下させながら首を曲げると寂れた横丁がある。いや寂れているとかそんなレベルではない。いわゆる横町としては明らかに機能していない。かつて飲食店が軒を連ねていたが今はただの通路、といったところか。如何にも猫が好みそうな空間だ。建物の裏側と裏側が向かい合わせになっているだけ。ふと目に飛び込んだ文字。  母乳カフェ☆ミ  見間違えだと思った。天を仰ぎ眉間を摘み深呼吸、も一度見直す――母乳カフェ☆ミ。  発砲ス

          2分50秒小説『母乳カフェ☆ミ』

          『誰も持っていないキーホルダーの作り方』

           まず油揚げを買ってきます。がんもどきでもいいです  机の上に置きます。椅子の上でも構いません。  後は認識するだけです。 「これはキーホルダーなんだ」と    自由の女神?エッフェル塔?ちっぽけな作り物なんて要りません。実物そのものをキーホルダーにしましょう。なんならヨーロッパやアメリカ大陸をキーホルダーにする事だって可能です。  この制作方法の素晴らしいところは、質量を持たない物もキーホルダー化する事が可能な点にありますつまり!"優しさ"や"愛情"、"情熱"といった概

          『誰も持っていないキーホルダーの作り方』

          8分0秒小説『組紐』

           2月初旬、火山洞窟を専門に調査しているNPO法人からオファーがあった。1月に三島風穴を調査した際、特殊な形状をした変形菌が群生しているポイントを発見したので、専門家の私に同行して欲しいとのこと。サンプルを持ち帰ろうとしたら、帰路で遺失してしまったそうだ。写真も無い。情報源は伝聞のみ、なので確信は無いが、新種の菌類の可能性が高いと踏んでいる。  変形菌――世界で約1000種、日本ではそのうちの約600種の生息が確認されているキノコの仲間だ。視認できるサイズにまで成長したもの

          8分0秒小説『組紐』

          散文詩『陽が差して敬啓。』

           ボールペンの金属球は、酸化アルミニウムという素材で出来ているらしい。刺さるくらい見つめ、紙に着地させる火星の表土。  金属球が紙に押し付けられる。この段階ではまだ乾いている。誰かの眼球のように。ペン先が水平に動く。転がる。  細透明なプラカートリッジ、半透明に透けて見える――が、金属球の表面にインキを受け渡す。  銀色に見えるが黒く濡れている。誰かの眼球のように。転がる。紙に線が現れる。カーチェイスの轍のように急に曲がったり、またひたすに直進したり、何かから逃げているのか?

          散文詩『陽が差して敬啓。』

          20秒小説『孤独飲ませろせがむ友』

          「フラれたんだって?」 「嗚呼」 「飲みに行くか?」 「いい」 「そう言うな」 「独りにしてくれ」 「奢るから」 「いや、いい。知ってるか?"千年の孤独"って酒」 「焼酎だろ?知ってるよ」 「実はこんな日のために買い置いてある。今夜は独り、家で飲み明かすさ」 「せめて五百年にしとけ、千年は永すぎる」  俺の肩を無理に抱き、友が歩き出す。ネオンが歪む。 「馬鹿やろうが」  鼻声で毒づくと、髭面の笑顔がすぐそこでくしゃり。

          20秒小説『孤独飲ませろせがむ友』