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採用に向いていない私が今も採用をやっている理由

夏が来ると思い出す。

私は採用にはむいていない。

最近こんなメンションつけた投稿をいただいた。

大変ありがたかった。でも、私は採用には向いていない。

他社の採用担当のみなさんはどう思っているんだろう。

内定を出して承諾してくれたメンバーとは、これから一緒に未来をつくっていける喜びと人生をかけた一歩を自社にしてくれたことへ感謝する。

一方、不合格だった候補者に対して、どんな気持ちを抱くのだろうか。

仕方ない、採用要件に満たなかった。
きっと自社には合わないだろう。
次に行こう。

そうやって納得するのだろうか。

リクルーター時代の私は、正直喪失感しかなかった。
ともに走り、悩み、光明を見出した矢先、彼彼女の人生との関わりがなくなる。
すごく嫌だった。
私を知る人間は、きっとドライだから何とも思っていないと思われていたかもしれない。全くの逆だ。私は自己開示を全開にすることが苦手だ。おそらく先天的に。

初めての採用プロジェクトでの私の役割は採用担当として、応募学生と向き合い、就職活動を通して人生の目的に気づいてもらい、その中で会社に就職する選択肢の中で私たちの会社を選んでもらうことだった。
今までの20数年間での意思決定の理由を問うていく。なぜ?なぜ?なぜ?

自分の意志決定の癖や、自分の意志で決めたことをどれくらいやり遂げられるのか、どれだけの苦しいことを乗り越えて今を生きているのか、自分の人生を応援してくれている人はいるのか、自分は誰かの人生を応援したことがあるのかを問う。「他人に言われた人生」ではなく「自分の人生」を生きてきた人なのかどうかを知るために。
昨日まで知らなかった誰かとこれだけ向き合うのだから、相当な真剣勝負だ。

学生面談が始まってすぐ、先輩にあの学生は「良いのか?悪いのか?」と質問したことがあった。ものすごい勢いで怒られた。
「私たちの仕事は人を選ぶ仕事ではない、寄り添って伴走して、学生さんがここだと思った時に最大の理解者であること」なんだと。
人に上も下もない、採用というのは会社と合うか合わないを判断する材料を互いに集めていく仕事なのだと学んだ。
会社と学生は対等であり、これからともに素晴らしい仕事をするためのパートナーなんだと。

こんな風に濃密な時間を過ごしたにもかかわらず、出てしまった。

自分の担当学生で初めての不合格

07卒採用で自身の担当学生からたくさんの内定者を出せた。最終面接で不合格だった学生は1人だけだった。

最終面接後、結果を聞き納得がいかなかった私はオーナーに食らい付いた。何度理由を聞いてもダメだ。としか言われない。仮に入社しても活躍できない。イメージが湧かないと。

全く納得がいかず、一日議論したが覆らなかった。上司から明日夜までに不合格を伝えるように指示された。

翌朝、子機をもって個室に入り、担当学生に最後の電話をかける。

私は冒頭の定型の挨拶の後、何も話せなくなった。

何と伝えたらいいのか。

縁がなかったけど頑張れなんて伝えられるわけないし、どの顔下げて不合格なんて伝えたらいいんだ。

申し訳なさと悔しさと、これから先の担当学生のことを思っていたら声が出なくなった。
そんな不甲斐ない私を察した学生から一言。

「ダメだったんですね...。」
「また就職活動頑張ります。御社よりもっと素敵な会社を見つけます」

相手の方が悲しかったはずなのに、気丈に伝えてくれた。

「ありがとう。いつかまた互いに成長して会えたらいいね。」

そんなしょうもないこと、ずるいことしか言えなかった。
やはり、私は採用には向いていない。

毎回こんな思いをするなんて、正直堪えれないし、「はい、じゃあ次」なんてすぐに切り替えられない。

そう思っていた。

07卒採用プロジェクトは無事成功に終わり、私はそのまま採用業務に就かないかと打診を受けた。ただ、ずっと不合格を伝えた候補者のことが気がかりだった。

私は採用には向いていない。

私はもし採用をこのままやるのであれば現場経験が足りなさすぎるので、改めて営業をやらせてもらえるよう社長と部長に頼んだのだった。

プロジェクトチームは解散し、私は新しい業務についた。ベンチャー企業らしく、どこに行ってもたくさん仕事がある。入社2年目の私は即戦力で成果を出すよう言われ、そのために昼夜を問わず業務に没頭していった。

終電近くまで、早期に仕事を覚えるためにトレーニングし、いつも最寄り駅まで少しでも回復しようと気付いたら寝落ちするくらいだった。気がついたら採用の時のことを忘れるくらい猛烈な時間を過ごしていた。

その日も変わらず、最終電車に駆け込んだ。
お盆で終電はガラガラだった。
ガラガラの車内にメールの受信音が響いた。

誰だこれ?

見たことないメールアドレス。
お客様からかと思い、すぐに開封する。

題名:ご報告

!!
あの子だ!

ずっとモヤモヤが晴れず、不甲斐ない最後で申し訳ないことをした、初めての採用活動でたった1人内定を出せなかった担当学生。

「あれから改めて就職活動をし、3ヶ月がたちました。あのときの経験が私を強くしてくれました。ありがとうございました。無事に内定をいただくことができました。すごくいい会社です。三木さんに負けないくらい、楽しい社会人生活を送ります。あの時間は私にとって本当の財産です。ありがとうございました。」

ガランとした最終電車の中で、勝手に涙が溢れてきた。

「おめでとうございます。素晴らしい社会人生活を。心から応援しています」

気の利いた返信はできなかった。
学生への感謝の気持ちと自分の仕事や思いが少し伝わっていたんだと安心し、涙が止まらなかった。

「ありがとう。」

それから、採用活動に携わる時、私は候補者の方々の大切な時間をいただいている以上、少しでもポジティブな何かを感じていただける時間にしたいと思っている。

このような素晴らしい出会いと時間を共有することが採用の仕事なら、私はこの仕事に向いていないかも知れないけど、私にしか出来ないことがある、そう思って今日もたくさんの候補者と面接をする。

私は採用には向いていないが、この仕事が好きだ。


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