「マイペースに編集の道をゆく」③

 私が在籍していた文芸誌「月刊カドカワ」は連載小説、エッセーなどの読み物と特集記事で構成されていた。表紙からの総力特集は一(人・組)アーティストを50ページというボリュームで取り上げていた。

 辞書に「編集=いろいろな材料をあつめ、一定の意図のもとに整えて、新聞・雑誌・書物をつくること」とあるように、総力特集の担当になると、まず”一定の意図”、つまり総力特集のテーマやタイトルを決めることから始まる。編集者の一番の仕事は「企画を立てること」。「月カド」のほとんどの企画は、コピー「自分の気持ちは、自分で表現する」どおり、本人が生い立ちや作品を語るものだった。

 特集の中の”スピリチュアル・メッセージ”だけでも10ページ、文字量でいうと約1万字。原稿を作るために、くつろげるホテルの一室で1時間近く、事前に企画意図を伝えたライターにインタビューしてもらう。

 取材中は用心のためいつも記録用のテープレコーダーは2台回していた。それでも録音ができていなかったときもあったし、取材では確かにそう言っているのに、原稿になると次から次へと赤いペンで修正が入って、作業が2、3倍になるときもあった。

 多くの方の協力を得て写真や原稿など”いろいろな材料”を集め、たくさんの言葉や文章を編んでページを完成させていく。仕事量は多かったけれど、ページ数が多い分、アーティストと話す時間も長く、共に作っている感覚が味わえたことは一番の収穫だった。


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