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【詩】パパの覆面

微かな希望が消えていく
のどかな笑顔が消えていく
世界の終わり
この世の終わり
そんな似顔絵を描いた
パパの似顔絵だ
パパは怪盗ルパンに憧れて、いつも覆面を付けている
その覆面の笑顔は、この世の終わりに似ていた

前頭葉が爆発している犯行現場
たまに食べるから美味しいそーめん
そういったアレコレを真実に変える怪盗ルパン
逃げ道を塞いだら発狂する怪盗ルパン
そんな怪盗ルパンなパパの耳たぶに自分を近付ける
僕の耳たぶは小さくて、何もかも聴こえるように出来ている
パパの耳たぶは大きくて、覆面のように聴こえなくさせる
そんな耳たぶに近付けたくて、僕は僕の耳たぶを引っ張る
どこまでも全力で
どこまでも愛らしく
そうして出来た太い耳たぶのおかげで
パパの発狂は聴こえなくなった

パパが消えた日
それは、小さくなり、丸になり、点になり、消えていった
僕の目の前で
そして、覆面だけが残った

パパはどうして消えていったのかな
残った笑顔はこの世の終わりかな

僕はその答えを知りたくて
もっと耳たぶを引っ張った
パパに近付く為に
パパになる為に

僕は自分用の覆面を作る事はしなかった
パパの覆面が嫌いだった
大嫌いだった
パパにはパパの顔があるのに
パパには僕に似た顔があるのに
僕に似た顔を見たかった
僕を脱出したかった
僕は僕を脱出してパパの顔になりたかった
僕はパパに依存しているのかな
僕は誰に依存しているのかな
その覆面は誰の物かな
誰が僕の覆面かな
僕が僕の覆面かな
僕は僕の僕用かな
パパは僕の僕用かな

そうして僕は消えていった
僕の思考が混乱して
僕の思考が混沌として
たまたまパズルが揃ったように
ガチャガチャのまま消えていった

僕の居場所はパパだけなのかな
そう、ぼんやり思いながら
パパの居場所になったんだ

任天堂の新しいゲーム機が発表された9月28日
僕はパパの居場所と遊んだ

パパの居場所はとても楽しそうに笑って、パパの居場所は僕に向かって
星のカービィが吸い込めない物はなんでしょう?
と聞いてきた
僕はわからないと答えると、パパの居場所は
それはね、星のカービィ自身だよ
って言った
パパの居場所はケラケラ笑って
僕はその笑ってる姿を見て
覆面の下はこんなにも豊かだったんだと
懐かしい気持ちになった

まだ覆面を付けていない赤ん坊の頃
その時の僕の気持ちは、嬉しいと悲しいだけで
今みたいにわざわざ考えないと気持ちを当てられない訳ではなかった

パパの覆面の笑顔はこの世の終わりに似ていた
それは、世界の崩壊で
自分の崩壊でありながら
とても複雑で、節操なくて、矛盾していて
わざわざ必死に考えないと当てられない笑顔の気持ちだった

僕はいつかパパになるのかな
そう思いながら、パパの居場所と任天堂の新しいゲーム機で遊んだ
二人はいつまでも孤独で
いつまでも笑顔で
いつまでも本当がわからなくて
いつまでも本当がわかりすぎて
生きていた

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