甘子 阿二胡

前世はたぬき、来世は猫の予定。

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うつりかわる

3月に桜が咲き誇るようになった 私は自分でお風呂に入る時間を決めれるようになった 親が年金をもらうようになった 私は自分で休日を決められるようになった 街中に回転寿司屋ができた 私は納豆を食べられるようになった Twitterの名前が変わった 私は毎週のように会ってた友達と会わなくなった 私は流行りの洋服を買わなくなった 私は人の名前を覚えられなくなった 私は新しい誰かと出会う。

    • ピンク色の壁

      「くすんだピンク色。」 一番後ろの椅子に浅く腰掛け、後ろの壁を向いた背中から、少しだけ口元が見える。頬に空気を溜め、唇を尖らせている。  廊下から授業5分前を知らせる予鈴が響く。それを合図にして、ロッカーの扉がギーギーと音を立てる。古い校舎だ、ロッカーも錆びついてしまって、雨の日は服が汚れないようにいつも注意が必要だ。筆箱を落とす音や誘い合う話し声が騒がしくなる。 やがて、教室から音がなくなる。この瞬間が、私は大好きだ。この瞬間を味わいたいがために、教室の施錠を率先して行って

      • 【読書感想】望月の烏_その3

        (前置き) はじめに申し上げたいのは わたしは八咫烏シリーズが大好きであることです。 八咫烏シリーズは外伝・ファンブック含めて 全て読んでおります。 また、この投稿は、「望月の烏」を読んだ人間が 「楽園の烏」を読み返した際の記録のようなものです。 「烏に単は似合わない」から、「弥栄の烏」まで読み、なおかつ「楽園の烏」から「望月の烏」まで読んでいる。そういった前提で、ネタバレ気にせず記載しておりますので、自分で伏線を回収したい方はこちらで折り返してください。 では、その3を

        • 【読書感想】望月の烏_その2

          (前置き) はじめに申し上げたいのは わたしは八咫烏シリーズが大好きであることです。 八咫烏シリーズは外伝・ファンブック含めて 全て読んでおります。 また、この投稿は、「望月の烏」を読んだ人間が 「楽園の烏」を読み返した際の記録のようなものです。 「烏に単は似合わない」から、「弥栄の烏」まで読み、 なおかつ「楽園の烏」から「望月の烏」まで読んでいる。 そういった前提で、ネタバレ気にせず記載しておりますので、 自分で伏線を回収したい方はこちらで折り返してください。 では、そ

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          【読書感想】望月の烏_その1

          はじめに申し上げたいのは わたしは八咫烏シリーズが大好きであることです。 八咫烏シリーズは外伝・ファンブック含めて 全て読んでおります。 また、この投稿は、「望月の烏」を読んだ人間が 「楽園の烏」を読み返した際の記録のようなものです。 「烏に単は似合わない」から、「弥栄の烏」まで読み、 なおかつ「楽園の烏」から「望月の烏」まで読んでいる。 そういった前提で、ネタバレ気にせず記載しておりますので、 自分で伏線を回収したい方はこちらで折り返してください。 では、はじめます。

          【読書感想】望月の烏_その1

          ぽん酢とトマト

           中性的な顔、あまり目立たない喉仏、ちょっと高い声。おとなしくて、あまり話さない。彼の名前は本田君。北川と仲良し。名古屋支店に異動となった先輩の送別会で、私は本田君と初めて話をした。  本田君と私と北川は同期入社で、社会人3年目である。私と北川は、研修期間を経て同じ営業部第3課へ配属された。同じ部署に配属されてからは仲間意識が芽生え、同期全員の飲み会になると、営業第3課の面白エピソードを漫才形式で披露するくらいである。北川はすごく目立つタイプではないが、どんな人とも仲良くで

          ぽん酢とトマト

          夢の重ね着(2)

          10年勤めた会社を退職する。 色々思い悩み、ようやく退職を決断できたとき、退職日がちょうど10年経つ、まさにその日となった。 10年間、いろいろあった。休職させてもらったこともあったし、泣きながら会議に参加したこともあった(オンライン会議で顔を出さなくていい環境でよかった)。 会社が嫌いなわけではない。職場の人間関係は良好。 けれど、たくさんある仕事のうち、これは天職だと思う仕事もあれば、どうしても苦手意識を克服できない仕事もある。 大きな組織であればあるほど、企業は成長し

          夢の重ね着(2)

          夢の重ね着(1)

          社会に出てから十年近くが経った。 仕事におけるキャリアアップは順調で、まだやれることがある、やってみたいことがある。 しかし、なんだか全部上手くいっていると言い切れない気持ちがある。 例えば休日にさくっと出かけようかと思っても、うまく出かける格好が思い浮かばない。ジャケットやシャツを羽織ってみても、それに似合うアクセサリーや時計がない。おまけにジャケットに似合う靴もない。 その度に気付くのである。 なにかが、こぼれ落ちている、と。 日々何かを得ると同時に、こぼれ落ちてい

          ゆらゆらの夏

          ゆらゆらと揺れ動く空気 立ち上がる熱 電車に乗って街に向かえば 夏という文字が私の視界に入ってきては 暑そうだったり、涼しそうな色と柄で アピールしてくる 広告たちがどれだけ清涼感を出そうとも 外を歩いてきた私には、白々しく思える 思い切って暑そうにしてもらった方が解釈が合う どうしたって どこを見ても夏ばかりで どうにも窮屈だ やっと駅に辿り着き電車に乗り込めても 湿度が高いせいか、うまく息ができない 人の吐く息も熱くて、息苦しい 夏は、窮屈だ 私の思う夏は、どこ

          ゆらゆらの夏

          束の間

          なんでもない日 なにかとなにかの間 予定のあと、家に帰るのも早いなと思う時間 忙しくもない、目的もない 休息を求めているわけでもない あまり良い意味ではない 束の間 なにか不完全燃焼で なにか意味を求めたくなるけど 意味なんてない 時間 後になって 有効に使えたのではないかと後悔するような時間 なにか生み出す意欲は湧かない ただ時が過ぎるのを待つ時間  最近の私は、束の間に対して、あまり良くない気持ちを抱くことが多い 無であることが、怖い 他人に説明できない時間が、怖い

          朝の静けさ

          いつも、朝起きて思うことがある。 なぜ生きているのか なぜ今日を生きようとしているか どうやって今日を生きていくのか 人生の充実とは、人それぞれで 個人が満足すればそれでいいのであるが 頭でわかっていても、実際に毎分毎秒そう思うことは難しい なにか具体的でわかりやすい 今日の成果を求めてしまう 今日は何を得たのか、何が悦びだったのか 他人に賞賛されるような何か 毎朝、わたしはどうすれば賞賛されるのだろうか どうすればいいのだろうか そう思いながらベットから身体を起こし