駄文20220608/各地の釣り禁止場所増加を嘆く

釣りをする人間にとって、漁港や防波堤での釣りは手軽にエントリーできたりいろいろな地魚が釣れたりとなかなか楽しいものなのだが、最近釣り禁止を明言する漁港が激増しているようだ。
ぼくが釣りを始めた30年ぐらい昔には釣り禁止の場所なんてほぼ見かけたことがなかったし、岸壁があれば釣り糸を垂らすのはものすごく気楽というか、自然というか、特に怒られたこともないしどこでも釣りができたような記憶がある。
もちろん素人が入ると危険な場所は別だ。そういう場所にはさすがに昔から釣り禁止の看板が出ていたと思う。
最近はどうだろう。
釣り禁止でない漁港の方が珍しいくらいになってしまったんじゃないだろうか。
漁業関係者以外立ち入り禁止、この漁港では釣り禁止、不法侵入として警察に通報します、といった看板のオンパレードだ。中にはがっちりフェンスで閉鎖されて物理的に釣り人が入れないようになっている場所もある。
とにかく、釣りのできる漁港は激減している。
自治体の名前で、県内の漁港は釣りは全面禁止です、と謳っているところもある。
釣り人としては、肩身が狭く感じる。

どうしてこうなってしまったのだろう。
もともと漁港というのは漁業関係者のための施設であって釣り人のためのものではない。だから本来なら釣り人が立ち入るのは確かに違反であるし、漁港関係者にとっては仕事の邪魔にもなるだろう。
でも、釣り禁止を明文化するようになったのは比較的最近のことだと思うのだ。
昔はどこで釣りをしても、漁師さんの邪魔さえしなければ追い出されることなんかなかった。岸壁で糸を垂れる釣り人の姿は、漁港のありふれた風景として、いわば風物詩みたいなものだった。
それが、今では犯罪者に近い扱いすらされるくらい、釣り人は漁港関係者から嫌われるようになってしまっている。

どうしてなんだろう?
釣りを愛する人間の一人としてとても残念なのだ。
ゴミを捨てていくから?仕事の邪魔になるから?
もちろんそれが一番の理由なのだろうが、昔からマナーの悪い釣り人は多かったし、今と絶対数はそう変わらないんじゃないかと思う。漁師さんが仕事の邪魔だと感じる頻度だってそう変わるとも思えない。
昔は許されていたこと、黙認されてきたことが最近になって排斥されるようになったのはどうしてなんだろう。
社会が変化したのだろうか。コロナのせい?
ここからはぼくの推論にすぎないのだが、観光業の斜陽化がもしかしたら釣り禁止の流れに拍車をかけているのかもしれない。小田原から熱海のエリアで最近何回か日帰りや一泊して遊ぶことがあったのだが、ホテルや旅館、お土産屋さんなどがどんどん潰れていっているのが目についた。観光客が激減しているのだろう。熱海の温泉街も廃業したホテルだらけで、街全体が悲しいくらい寂れている。
廃墟マニアは喜ぶかもしれないが…。
観光で成り立って、栄えていた海辺の街。そこに観光客が来なくなったら。他所からやってくる人間が地元にお金を落とさなくなったら。観光客相手に商売している人は気が気じゃないだろう。
朝市で観光客を集めていた漁協もあるだろう。
そこに、ろくに金を落としていかない釣り人だけしか訪れなくなったらどうか。
儲からなくなって心に余裕がない時期に、迷惑をかける釣り人がわらわらやってきてゴミをたくさん捨てて帰ったりしたら。漁船に傷をつけたり、ロープや網に釣り糸やら釣針やらを絡ませたまま放置してあったりしたら。
腹が立つに決まっている。ぼくが漁港の関係者だったとしても、釣り人を追い出したいと思うだろう。
一文にもならない厄介者だ。歓迎されるわけがない。

コロナ禍のアウトドアブームの流れで、どうやら釣りを始める人も増えているらしい。何度目かの釣りブームが来ている最中なのかもしれない。
何度も書くけれど、昔から行儀の悪い釣り人は一定数いた。釣りブームが始まったからといって、マナー違反が激増するわけでもないだろうと思う。
ちょっとは増えるかもしれないが。
釣り人は確かに少し増えた。その中にはマナーの悪い人間もいる。
でも、昔なら漁港関係者は大目に見てくれていたのだ。
昔のままでいられなくなってしまったのには、ぼくの想像するのよりずっと多くの理由があるんだろう。

ぼくは、漁港ごとに入漁料とか美化協力金という名目で釣り人からお金を徴収すればいいと思っている。一日1000円とか、まあできればワンコインの500円くらいか。
河川の遊漁券みたいな形だ。
これで、釣り人が訪れればそれだけ地元にお金を落とすことになる。それぐらいの金額で釣りができるなら、ぼくなら喜んで払う。安定した収益が得られるなら、釣り人も歓迎されるようになるかもしれない。また来てね、って漁師さんたちから言ってもらえるようになるかもしれない。

昔みたいに、漁港の風景の一部として釣り人が受け入れられるようになることを、釣り人の一人として願ってやまないのである。


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