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『かかりつけ』がキーワード

今回は僕の弟の話をベースに、保険の見極めについて綴ってみたい。

四十を過ぎてから結婚した弟には8歳年下のパートナーがいる。
この女性がしっかりしていて、弟が若い頃に加入していた生命保険をバッサバッサと切り捨てる
病気になって加入できなくなる前に基本的な設計をして勧めたのは僕だが、その保険も容赦無く切り捨てる

特に気分を害することがないのは、切り捨てる理由がはっきりしており、また合理的だからだ。
例え兄が勧めたものであっても、不必要なことが判明したものにいつまでも無駄に保険料を払い続けるのは無意味だ。

僕が設計をした内容は以下の通り。

①病気で入院した場合に1日につき1万円支払われる医療保険。
②貯蓄性の高い終身保険を葬儀費用として200万円。
③子どもができた時の学費と生活費として死亡時に月額30万円支払われる掛け捨て死亡保険を65歳まで。

結論としては現在は②だけが契約として残されている。

なぜ①と③を解約するという判断に至ったか?

理由は3つ。

【1】現状の日本の医療では長期入院は限られた状況のみとなり、長期にわたって入院給付金を受け取り続けるという状況にはならない。
終身タイプの医療保険でこの内容だと、大抵は払込保険料総額が200万円超となるので元が取れるのか微妙である。
また弟の勤務先は福利厚生制度も充実しているので欠勤即減収とはならない。
さらに、標準治療においては高額療養費制度により一定金額以上の治療費は払い戻しがあるので自己負担額は限られることがほとんどだ。

【2】貯蓄性商品は加入時の利回り(予定利率)が現在より高いので、むやみに解約するのはもったいない。
もちろん緊急時には解約という手段もあるが、現状では銀行に預けるよりも効率が良いので貯蓄として活用する。

【3】弟夫婦は子どもを考えていない。さらにパートナーの収入は同年代の男性と同じかそれ以上あり、仮に弟の収入が目減りあるいは無くなっても生活には困らない。
まとまった資金がどうしても必要となればマンションの売却という手段も考慮している。

子どもの学費や遺族の生活費を考慮しなくて良いという環境が固まったので①と③の保険は不要いう判断をしたわけだ。
おかげで2万円強/月を支払っていた生命保険料が、現在では貯蓄も兼ねた約5千円/月に抑えられている。

たまたま今回の弟の事例では、子どもを考えない、夫婦ともそれぞれが生活していくには問題のない収入があるという条件だったのでこのような結果になった。
しかし、仮に福利厚生制度が十分でなかったり、大黒柱が倒れた時に収入が確保できなかったり、子どもが予定よりひとり増えたなどといったケースではどうだろう?
当然のことながら加入している保障内容で万が一の時に対応できるかを再考しなければならない。

生命保険は『家(住宅)』の次に高い買い物だとよく言われる。
僕も生命保険料の支払いが無かったら、欲しい車も買えただろうにと思うことはしばしばある。
それくらい高い買い物なのだが、多くの人が内容を理解していなかったり、環境が変わっても見直しをせず放置したままでいる。
(環境が変わるというのは家族構成が変わることだけではない。勤務先の福利厚生制度、税制や公的医療制度の変化、医療技術の進歩も環境変化のひとつだ。)

病気になってしまってからでは選択の幅が大きく狭まるので、思い立ったら是非とも自分の生命保険の内容が現状に合っているのかを確認していただきたい。
もしかしたら保険料を節約できるかもしれないし、逆に生命保険以外にも何か万が一の時の対応策を講じておかなければならないかもしれない。

生命保険はライフスタイルに合わせて変化させるのが当然であり、不要なものは解約し、必要となったものは付け加えてメンテナンスをしなければならない
メンテナンスをするためには起こった変化だけではなく、加入している内容やその内容に決めた理由、加入時に想定していた将来像との乖離などが明確であることが望ましい。
だが、多忙な毎日を送っている中で、契約者が何年も前に加入した生命保険の内容だけでなく細かな理由まで記憶しておくのは難しい。

その課題に対するひとつの解答が『かかりつけの保険担当者』ではないかと考えている。
カルテのように過去の経緯を担当者が記録しておけば、環境変化が起きた時でも曖昧な記憶に頼らずにメンテナンスが可能だ。
ただし、そのためには信頼できる保険担当者が必要となる。
よく「生命保険は担当者がコロコロ変わって……」という話も耳にするが、申し送りが出来ているかいないかも含めて保険会社や保険代理店を選ぶことは重要となる。

どのようにして信頼できる担当者を見つけるかということについては改めて時間を割きたいと思うが、ひとつ挙げておくとすれば「あなたの話をよく聞く」相手でなければならない。
『かかりつけのドクター』を選ぶときに、ロクに話を聞いてくれないドクターを選ぶことは少ない。
あなたの話をよく聞いたうえで、さらに専門家として丁寧に説明し、必要であれば治療方針まで話し合い共有してくれるドクターを『かかりつけ』にしたいはず。
保険担当者も同様で、あなたの話をよく聞いたうえで将来像を共有して専門家として提案する人がお勧めとなる。
命を預けることになりかねないドクターを簡単に決めないのと同じように、家族の将来への準備を預けることになる保険担当者を簡単に決めないで欲しいと強く思う。
ぜひ面倒がらずに『かかりつけの生命保険担当者』を持たれることを検討してみていただきたい。

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このところ線虫や血液、唾液を使ったがん検診が話題となりテレビや雑誌で取り上げられています。
note でも #がん検診#リキッドバイオプシー で検索すると触れられている記事がいくつかありました。

しかし、あたかも『新世代の画期的検査の決定版』のように報道されたり記事にされたりしていますが、現場のドクターはメディアが煽り気味の現状に警鐘を鳴らされていることはご存知ですか?

東洋経済オンラインに『「ニセ医学」に騙されないために』の著者である内科医の名取宏先生ががん検診の問題点について解説されています。
尿や血液を使った「リキッドバイオプシー」については3ページ下段から触れられています。

手軽にがん検診ができるようになる可能性があることは間違い無いようですが、まだ研究段階でしかない技術であることは理解しておくべきと思い紹介します。

保険も同様ですが、医療ベンチャーも「売れてナンボ」。
理想と現実の間でバランスをとりながら生き残っていかなければならないのが辛いところ。
確実に安心・安全な技術や商品を販売して利益を確保することが研究開発には必要なのですが、なかなか現実は厳しい。
ともあれ、今後さらに研究が進み、より安価で確度の高いがん検診が開発されていくことに期待したいです。