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おばあちゃんのおひざもと 第4話 Shut up & Cock-a-doodle-doo

「近所の人はみんな日本人ばっかりだったから、アメリカで生まれたっていっても、ずっと日本語ばっかりしゃべってたよ。でも、幼稚園に上がる歳になると、地元の幼稚園に入れられてね。最初の1週間くらいかな、しばらくは母が送り迎えをしてくれたけど、あとは妹と手をつないで通った。大きな通りをまーっすぐずっと行って、八百屋さんの前を通って、それから青いペンキの看板を目印に角を曲がって、床屋さんの前の横断歩道を渡ると、芝生が生えてる学校に着くの。白人の女の先生からABCを教わったよ。先生が何を言ってるのか最初はさっぱりわかんなかったけど、「シャーラップ」って怖い顔で言うと、みんな黙っちゃうの。子供はね、ああいう言葉はすぐ覚えちゃうもんだね。子供ながらに「イヤな感じのことばだなあ」ってのだけは分かるからね。朝、学校に行きがてら家の近くで飼ってた鶏に、柵越しに残飯なんかをポーンって放り投げてさ。アメリカでは鶏は「クゥワッカドゥードゥルドゥー」て鳴くんだよ。日本語の「コケコッコー」と全然違うでしょ。」

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隠されたメッセージ。いろはかるたの小説版。最初から最後の章まで、各章の頭文字を書き出していくと、最後にこの本の核心が明らかになります。かるた同様、お遊び感覚でも楽しめる本です。

大正3年、1914年にアメリカに生を受け、22歳までに3度も船で太平洋を横断し日本とアメリカを行き来したおばあちゃん。ロサンゼルスの大都会…

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