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ノロ墓

奄美に滞在中、友人がノロ墓の話をしてくれた。
「ノ、ノロ墓?」

奄美のノロ(シャーマン)のおばあ達の集団墓地だという。
昔のノロたちは、自分の家の墓には入らないで、みんなこのノロ墓に入っていたという。

小高い丘の大きなガジュマルの木の下に、サンゴでできた四角いおばあ達のお墓があるという。
奄美在住の友人からこの話を聞いた時から、ぜひともノロ墓に行きたいと思った。


が、いざその場所に車で行くと、もう長い間、人がお参りしなくなっていたのだろう。草で覆われすっかり道は無くなっていた。
ここはハブの島、下手に草むらに入るのは危険なのだ。
連れてきてくれた友人は「もうこれ以上は行かないほうがいい。」と言う。


諦めようとしたが、草で覆われた丘の上からさっきから声が聴こえてくるのだ。
「おいで、おいで。」と呼ぶ声が聴こえてくる。
おばあ達だ。
「おいで、おいで。」
あまりにも愛溢れる、その楽しそうな声に導かれ、
私はその道無き斜面を気合で這い上がっていった。
そのジャングルのような斜面を、木の根を掴み四つん這いで登って行く。


丘の上は。そこはまるで天国だった。
「大きなガジュマルの木の下に、サンゴでできた四角いおばあ達のお墓がある。」友人の言っていた通りだった。
 

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持ってきたお線香に火を付けた。
そこは天国。
ものすごい愛だった。
丘の上には愛しかなかった。


サンゴで出来た墓におでこを付けた。
この中におばあ達が眠っている。
「おばあ達、ありがとう、ありがとう…。」
その言葉だけが、ただ繰り返され私の口から出てくる。


本当の天国。
死んでからも、こんなに愛で楽しそうに唄っている人達っているんだな…。
その小高い丘からは下に広がる集落と海がきれいに見えた。
しばらくおばあ達とその景色を一緒に眺めていた。


今日はそんなお話。

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