小説「20160118」

鈴木おさむ氏が書いた小説。

あの日のことは私もたまに思い出す。
なぜあの意味のわからない謝罪を5人がしたのか。悲しい謝罪、解散と最終回。2016年に解散するなんて思っていなかった。
思春期からずっとテレビに出て歌って笑わせて、感動させてくれてアイドル以上の存在だった。

あくまで小説だけど、いわゆる公開処刑と言われた2016年1月18日の放送に至るまでの1日が主にに書かれている。
主人公は放送作家で、かつ組織にいる人間。彼の視点で物語は進む。
逆らえない出来事があり、やむなく書いたことば、それを誰に言わせるかを決断した苦悩、放送されたことを悔いていることは痛いほど伝わる。


この小説の存在は知っていたが、実際に読もうと思ったきっかけは、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんのYouTubeチャンネルでふたりの対談を見たからだ。
とても面白い対談で、「テレビを愛し楽しいものを作りたい」という著者の人柄がよく出ていた。だからこそあの放送は本意ではなかっただろう。
さらに、おすすめに出てきたYouTubeの文藝春秋の編集長との対談を見て、実際に読んだほうがいいと思いこの機会に読んだ。

読んでみて、YouTubeで話していたことと重なっている箇所もあり、あっけなくもあった。
もっと詳細に知りたいとも感じた。でも書けないこと、言えない苦悩があるからこの枚数なのかもしれない。
この小説を読まないとわからない箇所もあり、著者から見た5人への目線が常に暖かかったのは良かった。

小説という体を取りつつ、ある程度私小説な話だが最後の6行に、違和感を感じた。
それまでの文体と違う詩のような短い言葉が並ぶ。

タテ読みのような仕掛けがないか、考えた。

公開処刑と呼ばれるあの放送をやった戦犯だと、小説の体を取りながら込めた思いがあるのではないか

気づいた、わかった、納得した
見たくない方、本を読んでから知りたい方はここまでで感想はおしまいです。



以下、著者が最後に込めた思いを私なりに推測した箇所を記します。




リーダーが5本の指で花を作ったように、彼が込めた思い。

最後の4行の頭文字にアルファベットを当てはめてみる

そ→S
み→M
あ→A
ピース→P

そして
みんなで
あの日に
ピース

小説「20160118」 創刊100周年新年特大号文藝春秋2023.1より

ここだけ改行が多い理由がわかった。

小説の中でも言えないこと、かけないことがあるのだろう。それでも、またピースができたら、またパズルのピースのように当てはまったら…という願いを込めた、それが彼なりの償いと願いなのだと受け取った。

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