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4つの小鉢までもが完璧に美味しい | 食堂めぐる@松陰神社前

世田谷線・松陰神社前駅から松陰神社へ向かう道の途中ある『食堂めぐる』

レンガと白い窓枠のコントラストが目を引く外観。
哀愁漂う招き猫が描かれたシンプルな看板。
外壁に立てかけられた黒板には、本日のメニューが書かれている。

お昼のメニューは基本的にお魚2種・お肉2種の日替わり。

いつかの刺身盛り合わせ
お皿に並ぶのは、大ぶりにカットされた数種のお刺身。赤・白・ピンクの美しいグラデーションを成す艶やかなお刺身は美しく盛り付けられ、まるで芸術作品のよう。思わず『うわぁ…』とため息が漏れる。

お刺身の断面から「たっぷり脂がのってるよ〜」「身が締まってプリプリだよ〜」と語りかけられている気さえする。自信を持って、たおやかに並ぶ御姿はあまりにも神々しい。

箸で天然ブリを持ち上げてみると、ひと切れが大きかった。心の中で「こんなの一口で食べられないよ〜」と幸せな悪態をついてみたりしながら、色の濃いお醤油をちょっとつける。九州特有の甘いお醤油で、これがまた私の心に刺さるのだ。

とろみのあるお醤油は、ブリの繊維にすーっと染みわたる。お醤油の甘みとブリの脂が融合すると、こんなにも上質な旨味がとろけ出してくるものなのか。

元々ブリが好きだと思っていたのに、その時の気持ちを超えてもっとブリのことを好きになった。

あぁ、美しい
今見てもやっぱりキレイ

ある日食べた、イクラ入り海鮮丼
上記に述べた通りの美しきお刺身の上に、溢れんばかりのイクラ。色が濃くて粒も大きいイクラが、刺身を覆い隠すかのごとくたっぷりとのる。これがまた弾力がすごくって。上と下の歯でイクラをしっかりとらえないとスルッと逃げられてしまうほどの噛みごたえ。

人生で初めて、イクラで噛み疲れるという経験をした。

イクラもすごい、でも隠れているお刺身たちのボリュームもすごい

めぐるではお魚を選びがち。でも、他のお客さんが注文したお肉メニューを横目で見るたびに「わ、美味しそう…」とこっそり思っていた。

どうしても食べたかった、鶏モモ肉唐揚げ油淋鶏
これはメニューを見た瞬間に食べたいと思った。鶏モモ肉→唐揚げ→油淋鶏という魅惑の三段活用に心が反応したのかもしれない。

キッチン奥にあるフライヤーからパチパチと威勢の良い音が聞こえたので目を向けると、人の顔ぐらいありそうな大きな1枚肉がインされていった。
時間をかけてしっかりと揚げられたモモ肉。カウンター越しなので手元は見えないけれど、お肉を切る音が聞こえる。ザクッザクッという音に、心がときめく。

目の前に登場した油淋鶏は、わかっていたけど大きい。食べ切れるか心配だったけど、(ザックザクの衣+ジューシーなお肉) × さっぱりネギダレ=軽い
という謎の方程式が成り立ってしまった。
「もう揚げ物はそんなにいらない」とか言ってる自分、虚言だった。

衣のザクザク感、身の肉厚感
伝われ伝われ〜

ここまで書いておきながら、今回私が一番伝えたいことは別にある。

それは、小鉢の素晴らしさ

メインとお味噌汁、ご飯に加えて小鉢が4つ付いてくるスタイル。
どの小鉢も見た目はシンプルなのに、口に入れると「うむむむ」と唸ってしまう。

ある日、めぐるが久々だった私は「はいはい、切干大根ね」と少し油断してしまっていた。ひと噛みした瞬間に、ほんのりした甘さの奥からごま油の香りが口の中いっぱいにフワッと広がる。一瞬前に切干大根へ向けた気持ちを心底反省した。

味の広がり方がなんとも衝撃的。噛むたびに切干大根が360度全方位に向けて旨味を発射する、みたいな。味が立体的という表現はよくされるけれど、それを身をもって感じた瞬間だった。

パクチーときゅうりがのった冷奴。きゅうりとパクチーの細かいカット具合がすごい。きゅうりはシャキシャキッではなく、シャキぐらいの食感。だから、お豆腐と反発することなく見事に調和する。パクチーもクセを主張するというより、むしろ味を繋いでいる感じ。極限まで薄味なのにしっかり美味しい。どういうことなの。

かなり昔に食べたお浸し(たしかクレソンだった)も、ただものではなかった。見た目はシャキッとしているのに、しっかり味わいがあり、噛めば噛むほどに美味しい。青菜をお浸しにするとクタッとしてしまうのが常識だと思っていたのに、なぜここまでシャキとコクを両立させられるのか。あれを口にした時の驚きは今でも映像として思い出せる。食べる手品のようだった。

これらの小鉢も日替わりなので、是非その日の出会いを楽しんでいただきたい。

いつかの漬けカツオ丼、破壊力が…

もう一つ敬意を表したくなるのがお箸。
先が極限まで細い繊細なお箸が、しっかりそろえて箸置きに乗せられている。

食べ始めるときも食べ終わるときも。
背筋を伸ばしてしっかりと手を合わせて挨拶をしたくなる。

そうだ、食とは本来こうしていただくものだ。

言葉なくとも、食への向き合い方を思い出させてくれる場所。
それが、私にとっての食堂めぐる。

あぁ、今回は端的に書くはずだったのに。
終わればやっぱり長かった。

食堂めぐる
東京都世田谷区若林4-27-15
木金土:12:00-14:30(L.O 14:00)
           18:00-22:00(L.O 21:00)
日月:12:00-15:30(L.O 15:00)
火水定休(その他不定休あり)
Instagram:@syokudou_meguru/
(2024/4/28)


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