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【司法試験予備試験】「型」を固めて合格答案を書く方法【経済法】


はじめに

この記事では、選択科目の一つである経済法の論文式試験対策として、「型」を固めて安定的に得点するための勉強法を解説します。

経済法は出題範囲が狭いことから、出題され得るほとんどのケースについて、事前に答案構成の大部分を準備しておくことができます。そして、この準備の程度で得点に大きく差がつく可能性があることから、何を、どのように整理しておくかという点はとても重要です。

以下では、私が実際に利用していた「型」をサンプルに、整理の方法の一例を紹介していきます。ご参考になれば幸いです。

予備試験経済法の思考方法

まずは、「型」のベースとなる経済法の思考方法の例から紹介します。
大きな枠組みは以下の3つです。

  1. 適用条文の選択

  2. 行為要件の検討

  3. 効果要件の検討

適用条文の選択

事例を読んで適用すべき条文を摘示します。令和4年予備試験では問題文中にあらかじめ示されていましたが、司法試験では通常ここも検討を求められています。
基本的にはテキストに掲載された事例や判例を参考に、事案と条文の対応を整理し、準備しておくとよいと思います。

行為要件の検討

選択した条文の各要件について、解釈、当てはめを行います。民法や刑法における要件該当性の書き方と同様です。
解釈部分までは「型」として事前に準備しておくことができます。

効果要件の検討

一部の行為類型では、市場における競争制限効果の有無を検討する必要があります。ここでは、問題となる市場を画定した後、行為要件と同様に、要件の解釈および当てはめを行います。
また、対象となる行為に公益目的がある場合等は、正当化される余地(正当化事由)がないか検討します。

以上が経済法の検討の大枠です。
これに沿って「型」を作ってしまえば、あとはすべての工程で規範定立→あてはめ→結論の法的三段論法を繰り返すだけです。現場で書き方に迷う可能性をかなり小さくできる科目であるといえます。

「型」の作り方

ここからは、独占禁止法2条6項の「不当な取引制限」を例に、具体的な「型」の作り方の一例を紹介します。
条文の内容は以下のとおりです。

第二条 (6) この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

第三条
 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

大枠の構成

まずは、一番大きな枠組みから決めていきます。これは、前述の思考方法の3つに対応します。

  1. 適用条文の選択

  2. 行為要件の検討

  3. 効果要件の検討

これがそのまま答案構成になります。1を今回の対象に置き換えると、

  1. ○○という行為は、独占禁止法2条6項に該当し、同3条に違反しないか。

となり、これが書出しとなります。

行為要件の具体化

続いて、2を具体化します。
ここでは、条文上の行為要件を順に検討していきます。今回の例では、以下の要件について、規範定立→当てはめ→結論を繰り返します。

  • 「事業者」

  • 「他の事業者」

  • 「共同して」

  • 「相互に…拘束し」

効果要件の具体化

最後に、3を具体化します。
「一定の取引分野」としての市場を画定した後、問題となる行為が「競争を実質的に制限する」効果を有するか、そして、有する場合に「公共の利益に反し」ない特段の事情が存在するか、それぞれ三段論法で順に検討していきます。

不当な取引制限の「型」サンプル

以上を踏まえ、答案構成の形で「型」を整理すると以下のようなものになります。

※ noteの仕様上、ナンバリングをすべて1, 2, 3,…としていますが、1,…、(1),…、ア,…と読み替えてください。また、ナンバリングごとにタイトルをつけていますが、実際の答案上は不要です。

  1. ○○という行為は、独占禁止法2条6項に該当し、同3条に違反しないか。

  2. 行為要件について

    1. 「事業者」

      1. 「事業者」とは、何らかの経済的利益の供給に対して反対給付を反復継続して受ける活動を営む者をいう。

      2. 当てはめ

      3. よって、○○は「事業者」に当たる。

    2. 「他の事業者」

      1. 「他の事業者」とは、実質的競争関係にある事業者をいう。

      2. 当てはめ

      3. よって、○○は「他の事業者」に当たる。

    3. 「共同して」

      1. 「共同して」とは、事業者間に意思の連絡があることをいう。そして、意思の連絡とは、相互の行動を認識・認容し、歩調を合わせることを期待し合う関係が成立したことをいう。

      2. 当てはめ

      3. よって、○○と○○には意思の連絡があるといえ、「共同して」の要件を満たす。

    4. 「相互に…拘束」

      1. 「相互に…拘束」とは、拘束内容の相互性までは求められるものではなく、(1) 拘束の相互性、及び (2) 拘束目的の共通性が認められれば足りる。

      2. 当てはめ

      3. よって、(1) かつ (2) が認められ、「相互に…拘束」の要件を満たす。

  3. 効果要件について

    1. 「一定の取引分野」

      1. 「一定の取引分野」とは、一定の需要者群と一定の供給者群とからなる競争の場、すなわち市場のことであり、主として需要の代替性の観点から、補充的に供給の代替性の観点から検討する。

      2. 当てはめ

      3. よって、本件における「一定の取引分野」は、○○と画定される。

    2. 「競争を実質的に制限する」

      1. 「競争を実質的に制限する」とは、競争自体が減少し、市場における価格等の諸般の条件をある程度自由に操作できる状態をもたらすことをいう。

      2. 当てはめ

      3. よって、本件行為は、「競争を実質的に制限する」といえる。

    3. 「公共の利益に反して」

      1. 「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」(独占禁止法1条)という独占禁止法の究極の目的に実質的に反しないと認められる場合は、「公共の利益に反し」ないとして、例外的に「不当な取引制限」行為から除外される。

      2. 当てはめ

      3. よって、本件では、「公共の利益に反し」ない特段の事情は存在しない。

  4. 以上から、本件行為は、独占禁止法2条6項に該当し、同3条に反し違法である。

太字が事前に準備可能な、貼り付けパートです。事例に合わせて、充足が明らかな要件は三段論法を崩したりすることもありますが、流れが変わることはありません。「不当な取引制限」がくれば、すべてこれで書くことができます(入札談合に特化して規範を変えたものも準備しておく、ということは考えられます)。

暗記すべき事項は、それぞれの要件の規範部分だけであり、それすらも条文間でかなり重複しているので、他科目と比較して負担感は相当小さいはずです。

すべての条文についてここまで準備しておけると、評価に大きく影響する当てはめに時間と集中力を割くことができ、安定して得点することができる科目になると思います。大した条文数ではないので、優先して取り組む価値はあります。

さいごに

冒頭でも述べたとおり、準備が直接ものを言う科目です。参考になりそうな部分を適宜拾っていただきながら、ぜひ「型」を固めて得点源としてください。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

参考書籍

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