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海士の海に春が来た

寒くて暗かった冬が終わり、お日様が顔を出すことも多くなったこの頃ですが、みなさん、近頃海士の海が少し濁ってきたことにお気づきですか?

私も3月4日に気が付いて、早速採水バケツで水を汲んで来ました。
ビーカーに移してそのまま一晩置いて、翌朝ビーカーの底をピペットで吸い取って顕微鏡で観察すると様々な形や大きさの植物プランクトンが沢山見えます。

植物プランクトンの春の増殖が始まったようです。
まだ陸上は春本番には遠いのですが、海では冬の間に降った雪や雨で陸地から豊富な栄養分が流れ込み、日射量が増加して光合成しやすくなったことでこの時期に植物プランクトンが活発に増えます。

ちなみにこれらはすべて「珪藻」の仲間で、多くは細胞の大きさが0.1mm以下のものです。珪酸質の殻を持ち、自分で動かずに水の流れに乗って浮遊しています。
いずれ海の底や光の届かない深いところに落ちて死んだり休眠したりするのですが、それまでに一所懸命繁殖するために、できるだけ長く浮いていられる工夫をしています。
いろいろな形をしているのは、それぞれがどうすれば一番長く浮いていられるか、試行錯誤した結果のようです。
それにしてもみんな同じ形でもよさそうなのに、どうしてこんな多様な幾何学的な形にたどり着いたのか、神様にじっくり話を聞いてみたくなります。



また、浮遊するために、周りを浮きやすい寒天質で包んだものもいます。
顕微鏡で見ると連鎖した小さい細胞同士が絡みついているように見えますが、墨汁を一滴垂らしてやると、寒天質の部分が透明に抜けて分かりやすくなります。
大きいものだと2mm位になるので、目を凝らせば肉眼でも見えます。タピオカみたいに見えませんか?



珪藻は内容物のタンパク質含有量が60%くらいあり、二枚貝類の良い餌になります(例えば、萩野、1963年、日本水産学会誌、29巻5号)。
折しもイワガキの出荷が始まっています。
珪藻を食べて、より美味しいイワガキになることでしょう。 
海士の海がいつまでもこの状態を保ってくれることを祈っています。

(海士町種苗センター 勢村)


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