四七一九散はくたばらない
光のない夜の森に、一つの死体が転がっていた。
全身を、びっしりと細かい蟲に覆われ、表面は悍ましくうぞうぞと蠢いている。
血の滴る肉を食らい終えた蟲は、一箇所に集まっていく。
「……あなたが」
小さな蟲の群体が、まだ幼いと呼んでいい少女を形作った。
もはや骨だけになったそれを見下ろしながら、憎々しげに。
「あなたが……悪いんだから……っ!」
そう呟くと、踵を返して、その場を後にした。小さな羽蟲や地を這う蟻が、その後を追う。
人間が生きていた痕跡を全て消し去って、少女はその場を後にした。
……それから数分後。
骨だったものがあった場所で、一人の男が身を起こした。
痩せぎすで、背丈と手足が、異様に長いシルエットをしている。
「さぁて、どうしたものかねぇ……」
身体に数匹こびりつく蟲をはたき落としてながら、男はボサボサの髪の毛をボリボリと掻いて、困った顔を浮かべた。
真っ裸で。
――事の始まりは、数日前に遡る。
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