ゴースト・イン・ザ・シェル

Amzon Prime Videoのラインナップにあったので、原作の大ファンであるにも関わらず今更視聴。公開され次第観に行こうと思っていたものの、少し先に公開されたアメリカでのレヴューを見れば見るほど興味を失ってしまって行かずじまいだった。

・ホワイトウォッシュ

キャストが発表された段階で問題になったホワイトウォッシュだけれど、設定とシナリオによってそれはうまくクリアされていた。まずキャスティングする事自体に問題があるかと言われるとそれはまた別問題だけれど。

ああいうシナリオだったからスカーレット・ヨハンソンが許容されたのか、主演がそうなったからそういうシナリオになったのかだけは少し気になる。

・映像

トレーラーが発表された当時心配された背景に描かれた違和感のある日本語も実際に通して観てみればそこまで気になるものでもなく、原作やアニメ版と違った欧米人から見た東アジアをベースとしたサイバーパンクな世界観が上手く作られていたと思う。一、二点CGが気になる部分はあったものの、負傷した少佐の肉体なんかは凄くよくできていた。全体的に中華要素が多いかなと思ったけれど、それはマーケティングや出資の問題だろう。作品中、唯一ビートたけしだけは常に日本語で会話しているんだが(桃井かおりは英語)、原作を知っていればそれが電脳化や翻訳技術の発達で問題ない世界になっているんだろうと汲み取る事ができるが全くの初見で行った人だと違和感を持つ人は少なからず居そうに思える。

・ストーリー

今までの攻殻機動隊作品での少佐は一貫して自身のアイデンティティや存在意義(ゴースト)を問いつつ、実生活では世界トップクラスのハッカー能力と随一の戦闘技術で超人的な存在感を見せつけるという内面の弱さと外面の強さが象徴的にわかりやすく描かれていたのに対して、今作ではアイデンティティを問う内面的な弱さはそのままだが外面の弱さまであったのが気になった。敵に一度軽く負けてから最後に勝つという典型的ハリウッド型娯楽アクションの枠にハマっていて、それは多くの原作ファンが求めていた少佐像ではないだろう。その違和感は少佐を白人女性が演じる事などより余程強く違和感として残る部分だった。

また全身義体で記憶喪失である少佐がクゼを追いながら自身の過去を見つけ出すという内容はありがちながらもそこまで悪いとは思わなかったが、最後の敵との戦いの直前にキーとして描かれていた場所に行き着き、記憶がフラッシュバックして全てを思い出し感傷に浸っている中急襲されるという展開は、これまで何度もこういった娯楽アクションで擦り続けられてきたクライマックスで、原作好きであると共にそういうものに飽きて最近こういったジャンルの作品から遠ざかっている自分からするとかなりガッカリしてしまった。

・総評

今作の少佐は全身義体第一号という設定であり、かつ全身義体化してから一年後の設定なので、戦闘技術やハッキング技術が拙いと描き方も間違っていないけれど、もっと強くいて欲しかったのが正直なところである。しかも少佐が敵に屈するのは毎度多対一という状況を作られてどうしようもなくというものばかり。勝てないのがわかっていて自分からそういう状況を作り出しているのはどうかと思ってしまった。

全く原作を知らずともそこそこ楽しめるになっていると思うが、だからといって心に残る作品でもなければソフトを購入して何度も見たいと思える作品でもないだろう。これでは続編は作られないだろうし、ドラゴンボール程目を当てられない作品になったわけではないが、特に何かという作品でもない。



※個人的にSACシリーズに出てきたモブキャラの中でトップクラスに悲惨だと思っている、記憶を改竄され架空の妻と娘を愛している独身中年清掃車運転手が採用されていたのは興味深かった



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