沈黙 -Silence-

キリスト教弾圧下の江戸時代において、棄教し日本人として暮らすという文と共に行方しれずになっている宣教師フェレイラ。師の安否を確かめに過酷な環境と知りながら日本潜入を試みる弟子ロドリゴとガルべの物語。

キリスト教弾圧という暗いテーマと共に、本編中BGMがほとんどない事も相まって暗澹とした雰囲気で物語は進んでいく。幕府側の未知のものへの恐怖としての弾圧という心理は理解できるが、宣教師や信徒がどれだけの拷問や死を突きつけられても棄教を選ばないという境地は、平和で恵まれた時代に宗教に無頓着な日本の現代に生きる身としては及ばないものがある。

宗教を賞賛や揶揄するでもなく淡々と描いていくその様は、観客に考える余地を十二分に与え、この作品の持つ意味をまたひとつ高いものへ昇華させている。

奉行であるイッセー尾形の明らかに台詞を読んでいるような英語と、通訳である浅野忠信の違和感のない英語のコントラストは一種の不気味さや主人公から見た味方のいない異国の地であると部分を強調していて興味深いポイントだった。ひとつ気になったのは、進行上止むを得ない部分かもしれないがやたらと英語話者が多い事。通訳としての浅野忠信の存在がありながら、鎖国している日本で位の低い者までそんなに英語を喋れる者がいたのであろうか?

7.5点

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