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最後のページ。そして新しい物語へ。【赤い公園】


2021年5月28日。
『赤い公園』が解散した。



THE LAST LIVE「THE PARK」

いろいろな最後のライブを直接見に行くことができず、悔やんだ気持ちがあったからこそ、何としてもライブのチケットを手に入れたかったが、チケット抽選は敢えなく全敗。
当日は、画面越しに彼女たちの勇姿を見届けることになった。

ライブ当日。
ライブに備えてどうしてもやりたいことがあり、入り組んだ迷路みたいな大阪の地下街を練り歩き、”あるもの”を購入するために、お店を探し回った。
お店を見つけても、求めている色がなかったり、種類が違ったり、
これじゃなくって……、もっと、パッと明るい、幸せの色……
と探し周り、人生で初めて生きてる花を買った。
”黄色い花”


もちろん、赤い公園の楽曲の『黄色い花』から連想したものである。
曲中の黄色い花は、タンポポだけどね。
ピンクにグラデーションがかったバラも、パッと華やぐ明るいガーベラも捨てがたく、迷いに迷って、結局両方買った。

買った花を大事に抱えて、電車の中ではずっと赤い公園の楽曲を聴きながら、帰路に着く。


今日は配信といえど、私にとっては、大事な大事な1つのライブの開催日なのだ。
実際に現地に行く時と同じように、赤い公園のTシャツを着て、そわそわしながら時計を何度も確認し、開催時間までをそれとなく潰して、開演時間を待つ。
実際に赴くライブと違うのは、
今日買ってきた黄色い花を、テレビ前に生けて待機していることくらいだ。

配信画面では、チャット欄も設けられており、みんなと同じ時間を共有している、という感覚を味わえた。

「まだかなまだかな〜」
「早く始まってほしいけど、始まって欲しくない!泣」
「1曲目はなんだろう〜!」

皆が思い思いにつぶやいているチャットを見て、コロナ前までのライブのような、会場前のざわざわそわそわした音が実際に聞こえてくるような感覚にすら陥った。

18時30分を少し過ぎたあたりで、画面が切り替わった。私はそれまで眺めていたチャット欄を消して、大画面表示に切り替え、部屋の照明を落とした。

赤い公園として最後のライブが始まった。


「はいはいしたらちっとも進まない」
というボーカルの高音から始まる『ランドリー』でライブの開始が告げられた。

少し上ずった声の印象も受けた。
それほど、ボーカルの石野理子も緊張している、ということなのかな、と勝手に思ったり。

ライブが始まる前も、始まった最中も、なんだかLAST LIVEという感じに思えなかった。ツアーの1つの公演を画面越しに見ている、みたいな。

開催予定だった、去年の夏ツアー。
それがコロナの影響で、中止となってしまったから、こんな感覚になったのかもしれない。
消えないEPリリース後に開催されたFUYUツアーに行ってから、とっても楽しみにしていたツアーだった。
チケットも取った。仕事の休みもとって、準備は完璧だった。
この状況下だから仕方ないことだけど、仕方ないでは納得できない自分がいた。
そんな行き場のない憤りと悔しさにそっと蓋をして、楽しみが先延ばしになった、と思うようにした。
夏ツアーのオンラインライブがあったので、もちろん視聴したが、きっと今日のこの目の前の光景は、楽しみの延長線上なんだな、と思った。思うようにした。


最後のライブだっていうのに、ステージ上の3人は、FUYUツアーで見たときと同じくらい、こんなに楽しそうに生き生きとライブをしているもの!
見ている私がしんみりしてどうする!!!と自分に喝を入れた。

画面外の黄色い花が余計に明るい気持ちにしてくれた。


1曲目の『ランドリー』後は、『消えない』『ジャンキー』『mutant』、と新生赤い公園の曲が続く。
石野理子加入後の赤い公園の良さは数々あれど、個人的には、『ジャンキー』『mutant』『Yo-Ho』『chiffon girl』のような、踊れる楽曲だと思う。
一言に踊れると言っても、先に挙げた楽曲の色は異なるが、どれもリズムを取りやすく、思わず身体を動かしたくなるような楽曲になっている。
そして理子ちゃんの歌い方、パフォーマンスがそれを物語っている。
ステージ上で自由に踊るその姿はまさに楽曲そのものを体現しているかのようだった。

そして曲は『紺に花』『Canvas』と続く。
こんなにもいろんな色の曲たちを作ってくれたんだなぁ、と改めて思った。
それと同時に、なんで、こんなに素敵な楽曲と3人を置いて、行ってしまったのか、
どうして津野さんは命を絶たなければならなかったのか、、
なぜ、どうして、、という感情がぐるぐると渦巻いてしまって、画面を直視できなくなった。

涙が止まらなかった。

でも私はすぐさま自分にまた喝を入れる。

彼女たちの演奏を、パフォーマンスを、ちゃんと目にしないと!
泣くためにライブを見に来ているわけじゃないだろう!!!


目を逸らしたのもつかの間、すぐに涙を拭って、彼女たちへと視線を戻した。
画面の中の3人は、変わらず生き生き演奏していて、つよいなぁ、と思った。
3人の方がよっぽど悲しくて悔しくて仕方ないはずだ。
以前のライブ時に見たステージ上のやりとりを聞いていても、本当に昔からの友達、いや友達以上、家族みたいな4人だった。
たった数ヶ月で平常を取り戻せる訳が無い。
アーティストとして、赤い公園として、ステージ上に立つ彼女たちからは、強い信念と私たちに誠心誠意届けようとしてくれる、そんな強い思いを感じた。


今回セットリストは、まさに赤い公園の集大成。全部盛り!な曲たちだった。
2回のMCを挟んで、サポートメンバー抜きの3人編成での演奏もあった。
グループ名は"さんこいち"
なんだかとっても彼女たちらしい名前で思わず笑みが溢れる。
そしてステージ上には、津野さんが愛用していた白いギター。

いつもの赤い公園らしい、家での友達とのおしゃべりみたいなゆるーい話もあったり。
なんだかすごくあったかくって、だけど、ステージに佇んでいるだけの白いギターを見ると、やっぱりどうしても悲しくなってしまった。
また溢れてきた涙を拭って、”さんこいち"が奏でる優しいメロディに耳を向けた。

3人編成での演奏を終え、
今回のセトリについてのMCがあった。
やりたい曲がたくさんあった。全曲やりたかった。
みなさんが聴きたい曲であろう曲をお届けしたいと思います!
そんな言葉の後、
『今更』『のぞき穴』『西東京』『ナンバーシックス』『闇夜に提灯』、とメドレー形式で演奏された。

『闇夜に提灯』は、
私が初めて赤い公園をライブで見たとき、(雨のパレードと赤い公園のツーマンライブ)
「宇宙初公開!!」と言って、披露された曲だ。
あの頃の赤い公園は、みんな真っ白な衣装だったけど、その日のライブは、確か津野さんが衣装を持ってくるのを忘れてしまって、現地調達した(LIVE会場がBIG CATだったので、別階にある古着屋KINJIで買った)という裏話MCなんかもあった。笑
あの日は冬だったから、KINJIで買った服が冬用の服(確か白いニット)で、演奏してたらめちゃくちゃ暑い!!!なんてことも言っていた気がする。笑
そんなゆるゆるMCなのに、めちゃくちゃかっこいい演奏をするんだから、そりゃ魅了されちゃうよね。
あの日、『闇夜に提灯』を聞いた時も、イントロからがっつり心を掴まれたなぁ。
Aメロに入るまでの、曲の盛り上げ方、そして、Aメロに入った途端それまで帯させていた熱をすこーし冷ますかのように緩急が付けられてて、サビではまた火をつけられたかのようにグッと温度が上昇するような盛り上がり。
最初の1秒から終わりまで、聞き手を決して離れない、離さない曲構成。
4人の演奏姿も相まって、本当に圧倒されたライブだった。
『闇夜に提灯』が宇宙初披露されたあのライブから、すっかり私は赤い公園の虜になったのだ。
そんなこともあったなぁ、とすこーし私の思い出に浸りながら聞いていた。


メドレー形式が終わり、次に演奏されたのが『KOIKI』
この曲も、イントロからとてつもなくかっこいい曲。
うたこすの勇ましいドラムから入り、ギターの軽やかなメロディで始まりを告げ、Aメロからはうねるようなメロディのベースがこの曲を先導してくれる。
赤い公園の曲たちは、ボーカルと3人の楽器隊という編成だからか、やっぱりどの曲も、ボーカルを主として構成されている。
3人の楽器隊は、一切ボーカルの邪魔をせず、かと言って、ひっそり息を潜めているわけでもなく、それぞれのポテンシャルの最大限を発揮しているメロディで、簡単に言ってしまえば秀逸なのだ。

そんな小粋な曲に続いたのが、『Now On Air』
旧体制の赤い公園のボーカル、佐藤千明脱退前のライブでアンコール2曲目、つまり佐藤千明ラストライブの正真正銘のラストに演奏されたのが、確かこの曲。(ライブに行けなかったので、ライブ後のセトリを探してプレイリストを作って聞いた思い出…)
そんな、旧体制の赤い公園を代表するかのような楽曲を、赤い公園の軌跡として自分のものに落とし込んで歌い上げる理子ちゃんに圧倒されてしまった。
私は赤い公園として活動してきた石野理子しか知らないが、Youtubeで上がっていた、新ボーカル初お披露目の時の歌い方を見たことがあるからか、本当に、赤い公園のボーカルとして成長したなぁ、としみじみと思ってしまった。
なんだか親の気分…(実際は理子ちゃんと4つしかかわりませんが。。笑)
晴れ晴れと歌うその姿に、私まで嬉しくなって、家で手をあげたり跳ねたり。
音楽きいて楽しくなる、嬉しくなるってこういうことだよな〜って思いながら自由に楽しんだ。

旧赤い公園の『Now On Air』の後、現体制になってからの楽曲『yumeutsutsu』へと続く。『yumeutsutsu』『Now On Air』同様、アップテンポな楽曲。
この2曲を続けて演奏するなんてなんだか過去と今を対比するような曲順だなぁと思い、赤い公園の歴史をこの2曲で表しているかのようにも感じた。
そして、その2曲ともを赤い公園のボーカルとして歌い上げる理子ちゃん。
その後の『夜の公園』は、
やっぱりいつ聞いてもあったかくって優しい楽曲。
終わりが近づいてきているのかな、と少し思ったとき、各メンバーからの言葉が続いた。


「米咲は車で先にピューンって向こうの世界に下見しに行ってるんだろうなって。
生きている人は、物語のページをめくることができると思っていて。破ることも書き足すこともできるから。」
と語ってくれたひかりさん。

「遠くのどこかに行ってしまったけど、米咲が作る曲が本当に大好きで。」と涙ながら語ってくれたうたこす。

「ボーカルが替わって困惑する方がいるだろうし、私がどうこうできるわけでもなかったから、ちょっと心苦しいところもあったけど。毎回毎回のライブで成長していく姿を見せたかった。
目標にしていた東京ドームに行けないのはすごく残念だけど。
私たちの音楽が生活の一部になって聞いてくれているファンがいるだけで嬉しいんです。」

と語ってくれた理子ちゃん。


うたこすの涙につられて、私はもう何度目かわからない涙を流した。
そして、最後にリリースされた楽曲『オレンジ』がラストライブ本編の終わりを告げる。

ライブで、津野さんのギターでこの曲を聴くことは叶わなかったのだな、という思いがよぎり、改めて、津野米咲が、この世を去ってしまった、という事実を思い知る。
なんて今更、という感じかもしれないが、私の中ではどうにもやっぱりふわふわしていて、本当はどこかでひっそり生きていたりするんじゃないか、って思ってしまっていたから。
でも、今日、ちゃんと、思い知った。
津野米咲は、ピューンと向こうの世界に先に行ってしまったのだ。

でも、彼女が残した、彼女が生み出した音楽は、ここで今日もこうして鳴っている。
私たちにちゃんと届いている。

米咲ちゃん、たくさんたくさんありがとう。
3人はもちろん、会場にいるみんなも、配信で見てるみんなも、たっくさんの人たちに赤い公園は愛されてるし、米咲ちゃんを思って涙を流して、米咲ちゃんの音楽で笑顔になる人もたくさんたくさんいるんだよ。
このライブもどこかで見てるのかなぁ、なんてぼんやりと思い、潤んだ画面を見る。
演奏後3人はステージを去った。



たくさんの拍手の後、アンコールは、『KILT OF MANTRA』の明るいメロディで始まりを告げる。

「迷い疲れて嫌になっちゃったなら 一緒に踊ろうタンタタタTARTAN」

子供達が明るく行進しているかのようなこの楽曲で、どこか心も晴れやかになる。


サポートメンバーも再び登場し、それぞれ一言ずつ言葉をかける。
すごく印象的だったのが、こいちゃんの言葉。
「バンドやロックは継承されていくものだと思う。魂や精神は脈々と引き継がれていくと思っていて」
この言葉で、赤い公園は解散するけど、"終わり"じゃないんだ、と思わせてくれた。
そして、最後に。
「俺は絶対バンドを辞めねぇからな!」

ベボベも4人から3人体制になって、いろんなことを経てきたバンドだ。
こいちゃんからこの言葉を聞けて、なんだかとってもほっとした自分がいた。
赤い公園の魂は、赤い公園の3人だけじゃなくって、こいちゃんや他のアーティストたちにもちゃんと引き継がれているよ。そしてその魂は必ず灯り続ける。
どこか精神論的な考えだけども、私は確信的にそう思った。


そして、手拍子から始まった『黄色い花』

「幸せは出会いと別れで出来てる。 誰かへの笑顔と涙で出来てる」
「もしも あなたが悲しくて俯いてしまった時には せめて咲いてるタンポポでありたい」

会場では、パンッと銀テープが発射され、
この幸せの曲で、パッと明るい空気に変わる。

そして、ついにきてしまった、
本当の本当にラストソング。

『凛々爛々』



==========

今日のライブで、たくさん涙を流して、そして、涙しながらたくさん笑顔になっている自分がいました。
【配信は終了しました。ご視聴ありがとうございました。】
という文字を見ても、なんだか不思議と心が晴れやかでした。

なんというか、
"赤い公園"という場所を3人はそのままの形で残してくれたんだな、と。


米咲さんが、この先のページを書き足すことが出来ないから。
赤い公園という物語に、少しだけ3人でページを書き足して。
最後のページに、私たち聴き手の想いも寄せ書きして。
みんなの愛を詰め込んで。
そっと物語を閉じてくれたのだと。

4人で作り出した赤い公園の物語は、これからもいろんな人の手に渡るし、
最後の書き手となった3人は、いろんな音を響かせながらそれぞれ生きていく。


"赤い公園の解散"って、きっとそういうことなんだと思います。


長い物語が終わる時、続きが読めない悲しさはあるけれど、
それよりも、これまでの物語を作り上げてきた人への感謝や感動の方が大きい。
なんだかそんな気持ち。


ライブの最後に、ひかりさん、うたこす、理子ちゃん、3人が並んで手を取り合って、マイクを使わずに、
「ありがとうございました!」
と声高らかに、私たちに伝えてくれました。
そして、一言。


「じゃ!みんな解散で!解散!!」


きっと今の状況下、ライブ後飲みになんて行けないこととか考慮してなのかな、とも思うけど、
この最後の言葉がとっても明るい声で、3人の笑顔が眩しくて、
学生時代に友達と遊んだ後の、
「今日はありがとう!またね〜!」
みたいな軽いノリでなんだかとっても嬉しくなりました。


やっぱり赤い公園は、こうだよね。
音楽が大好きで底抜けに明るくって楽しい女の子たちなのよ。


清々しくって晴れやかで明るい、最高のライブでした。
赤い公園は今日もやっぱりカッコよかったよ!米咲ちゃん、見てた〜?

たくさんの素晴らしい曲たちをありがとう!!


私たちはまだまだページを綴らなくちゃいけない。
だってまだまだたくさんの人に伝えたいことがあるんだもの。
こんな素晴らしいバンドがあったんだよ〜!って言って、たくさん自慢しなくっちゃ。

作者が亡くなっても物語は在り続けるからね。
米咲ちゃんがつくってくれた物語は、今でもちゃんと私たちに届いてるよ!
そして、赤い公園の最後を綴ってくれたひかりさん、うたこす、理子ちゃん。
赤い公園の最後のページを私たちに届けてくれてありがとう!

赤い公園は、たくさんの人に愛されてるよ!
何度言ったって足りないけど、ありがとう!


じゃ、またね!!!!!!



p.s.
今日も幸せの黄色い花は、たくさんの日の光を浴びて、晴れ晴れと私の部屋で生きています。
幸せは黄色でできてる から、大事に大切に生きていこうね。



きいろ。

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