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東京

長居するつもりもなかったのに、結局25年ほど住んでしまった東京を離れて1年半。

好きではない、と思っていたあの街のことばかり考えてしまう。

喧騒にまみれているのに、あの街には「音」がなかった。そんな気がする。
たくさんの見知らぬ気配のなかで、静かに孤独で居られた。
本当の孤独とは何か、教えてくれた街。

そんな孤独を愛してもいた。

最後のほうは、少し疲れていたのかも。
知らない気配に紛れることや、蠢いていく街のパワーに。

でも、離れてみて
あの街の「寂しさ」に心が惹かれる。安心な「寂しさ」に。振り返ればうんざりするほどの喧騒がそこには在ったから、安心して孤独で居られたのかもしれないと。

手放してみないとわからないものってあるね、いつでも。
そうして、遠ざかれば遠ざかるほど、心の距離が近くなってしまうものが。

今は、あの街の熱がいつも頚筋のあたりに纏わりついている。

こういう気持ちをきっと「恋しい」と呼ぶんだね。

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