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消えゆく街 ソウルへの旅

ソウルの中心部に小さな工場が折り重なるように建ち並ぶ場所が在ります。

乙支路。

近年、開発のため大がかりな取壊しが進んでいます。

今回の旅で歩いたのは、紙工場や印刷工場が建ち並ぶエリア。
1mもない工場の合間の道を、改造された荷運び用のバイクが行き交います。

わたしにとって、人々の暮しが圧倒的な密度で集まったこんな街こそが「ソウル」だと思えるのです。

圧倒的な熱と、どこかに漂う諦念の影。

こういう小さな工場が、後のソウルの復興を下支えしてきたはずなのに
今や、華やかな経済の波に呑み込まれようとしている。

すでに、取り壊され塀に囲まれた更地となった場所もありました。
歩いた場所も、閉めてしまっている工場も多くありました。

働く人たちの胃袋を充たす小さな食堂が、工場の合間に点々と存在しています。

それが日常の密度をさらに深くしている気がします。

そんな全てが、いつか消えていってしまう。
便利になること、発展することは悪いことではない。

たまに訪れて、街を歩くだけの外国人であるわたしがその良し悪しを考えることは、きっと間違っているのだろうと思います。

思うのだけど、それでも胸を絞めるような切なさを感じて、急かされるような気持ちでシャッターを切ってしまうのです。

次に訪れたときに、まだこの場所は残っているだろうか。

祈るような、愛おしむような気持ちで、ここに写真を残しておきます。
いつか、こんな街があったことを忘れないように。

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