強いチームの創りかた

私はユナイテッド、ベンチャーユナイテッドにてベンチャーキャピタリストをしています。その前のキャリアとしてはユナイテッドのHR部門を担当していました。元々育成、組織創りには興味があり、現在は大学の非常勤講師として学生の主体性を高めていくための授業を担当していたりもします。

また、中学から大学までアメリカンフットボールというスポーツをしていました。この経験を通じてビジネスマンとしての基礎体力を培ったと言っても過言ではないかなと思ってます。社会人になってからは高校(母校)のアメフト部コーチを続け今年で13年目になりますが、現在は同部のヘッドコーチもさせてもらっています。
戦績としては昨年の全国大会を優勝し、現在全国大会三連覇を果たしています。


現在は非常に調子の良い結果となっておりますが、ここまで来るには約10年を要し、沢山の苦労や悔しい思いを経験し今があります。
とはいえ、なかなか「日本で一番」になる機会は無いと思いますし(私自身も初めての日本一)、貴重な経験であることには間違いないですし、VC(ベンチャーキャピタリスト)として活動する中で活きている行動や考え方もあるなと感じており、今後の自分に対して何かを残すべく振り返りをすることや、自分達の取り組みを整理することで世の中の何かしらに貢献できたら嬉しいな、という考えもあり、後発ながら今日からNoteを始めるに至りました。

さて、前置きが長くなりましたが、僕らのチームの取り組みを振り返りながら書いていきたいと思います。


・プロセスにコミットすることで再現性を持ち、主体性を高める。
・チーム創りの根幹を考える
・チームとして大切にする事のルール化と責任の明確化



・プロセスにコミットすることで再現性を持ち、主体性を高める。
振り返ってみると、優勝という成果が出るまでは本当に長い道のりだったなというのが率直な感想です。そして、それはあくまで結果であり、大切にしてきたプロセス無くして成し得なかったことだと思います。

逆に言えば、結果を出すためのプロセスにコミットすることが重要であり、その過程を通じて選手も僕らコーチも人間的に成長していくこと自体が大切な事だとも感じています。

結果だけを褒めたり、叱ったりしても選手は精神的にもスキル的にも伸びないということです。結果を出すための取組み方や考え方をこまめにフィードバックしていくことで、結果に辿り着くための意思決定やアクションに再現性を持たせたり、選手自身が自ら動機を持って主体性を高めていけるようになります。

但し、これは結果を出すことから逃げることを意味している訳ではありません。当然ながら結果も大切ですし、あくまで、プロセスがあるから結果に繋がるのであり、プロセスを重要にしないと結果を出し続けるのは難しいということだと思っています。

現在は「ダブルゴールコーチング」というような言葉も聞くようになり、勝利と人間的成長の両方を求めるコーチングが流行っているのはそういう事だと思います。


・チーム創りの根幹を考える
高校スポーツは3年間で選手が丸々入れ替わります。中学からの経験者や能力が非常に高い選手は稀に高校1年生から試合出場することはありますが、大多数は2年生から出場できるかどうか。3年生に絶対的な選手がいれば、最上級生になるまでスタートメンバーになることができないのは日常茶飯事です。(実力勝負となるため、3年生でも出場できない選手もいます)


コーチを始めて7〜8年目ぐらいまでは、毎年「今年勝つにはどうしたら良いか?」を考え、戦略/戦術や体制創り/選手配置&起用を行っていました。しかし、惜しいところまでは行きつつもなかなか優勝には辿りつきませんでした。

「どうしたら僕らは勝てるのか?」をテーマにコーチ陣で何度も、何度も議論しました。今でも毎週のようにこの手の議論は重ねています。


毎年の最上級生のカラーを活かしたチーム創りをしようとする一方で、3年生のコンディションによって毎年チームの求めるレベル感が変動してしまう、という課題感がありました。

また、戦術やサインについても代替わりして新チームになると毎年同じような事を伝達しなければいけないことも課題認識していました。

学生スポーツなので毎年チームが変わることは当然ながら、チームの基盤となることは毎年残していきたいですし、その土台の上に3年生のカラーを乗せていくにはどうしたら良いかと考えた一つの結論が、今年勝つチームを創るのではなく、「連覇を目指せるチームを創ること」でした。

そこからは、常に中長期的な視野を持ちながらチームのあらゆる意思決定を軸をぶらさずにできるようになり、高校3年生も次の世代に自分達が何を残せるのかと考え行動してくれるようにもなりました。

前年度と比較して今年はどの程度成長しているのかと進化の物差しも作れ、僕らにとって「連覇を目指せるチームを創る」と決めてチーム運営をしていることがポジティブな要素になっていると感じています。


・チームとして大切にする事のルール化と責任の明確化
僕らのチームでは、いくつかのルールのカテゴリを作り、それぞれのカテゴリについて出来てるか否かの判断や誰の責任なのか、を明確にして運用しています。


例えば、チーム全員が当たり前にやることとして、「防具を完全装着する、スポーツマンシップを持ったプレーをする、声を出し続ける、最後まで走り続ける」というようなことは、コーチが成否の判断をし、できていない選手にはプレーをさせないという厳しい対応をしています。

防具は武器ではなく自分の身体を怪我から守ってくれるもの、相手に敬意を払ってプレーをすること、能力に関わらず誰でもができる事を必ずやる、試合に出ている選手は出られない選手に対して責任を果たすためにも全力でプレーを続ける、このような事を伝えたいからです。


また、メンタルミステイクと呼ばれるような「集中できていれば必ず皆ができること」は選手一人ひとりが自ら判断し、自らにペナルティを課したりしています。試合では予想もしなかったシチュエーションになることが多いですが、その中でも集中してプレーができるような訓練になっています。


試合の結果に大きく影響を及ぼすような失敗は、選手のリーダー陣が判断しチームの連帯責任としています。


アメフトではポジションが細分化されており、各選手が専門性を高め、プレーでの役割も一人ひとり違います。だからこそ、狙いたい事とやってはダメな事を明確する必要があります。

チャレンジをすることは、上手くいかない事を発見し、次の自分たちの成長に繋がる大切な事なので、チームとしては新たなチャレンジを推奨しています。

一方で、基礎/基盤になることは、全員ができるようになってもらう必要があり、それがチームの文化やモラルになるのです。

決して多くのルールを決めて縛り付ける必要は無いと思いますが、最低限チームとして取り組みたい事に関してはルール化、責任の明確化をすることで、みんなが自然とできる、もしくは、できていないメンバーに指摘し合うようなチームの環境にする事を心掛けています。

選手の育成やリーダーシップに関わること、ポジション配置など今後も具体的な事例を踏まえながら、強いチームを創るために必要な事を考えながら書いていきたいなと思います。