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ほんのわずかな時間の出会いなのに、ずっとキラキラしてるものがたり

これまで出会った人の中で
ほんのわずかな時間の出会いだったのに
心に残っている忘れられない方がいます。

そんなキラキラしたものをくれた方について
書いていきたいと思いました。

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〜 作業服を着たおじさん天使がくれたもの 〜


高校1年生の初夏のことでした。

わたしは交通事故に合いました。

学校からの帰り道、

直進していたわたしの自転車と脇道から広い道に出ようとしていた車とぶつかりました。

事故にあう少し前に大粒の雨が降ってきて、
雨が顔に当たるとちょっと痛くて前が見にくい。
急いで帰らなきゃと思ったことを薄っすらと覚えています。


  やばい…ぶつかっちゃった…

わたしは車のボンネットの上に乗ったまま、一瞬時が止まって動けずにいました。

 「大丈夫?怪我していない?」

この車の運転手さん、すぐに車から出てわたしを助けてくれました。
おそらくこの運転手さんも動揺されていたような気がしたのですが、
すぐにいろいろ助けてくださったんですよね。
本当に良い方でした。


地面に立ってみると…


  あっ、立てる。脚が少し痛いくらいだけだ。
  これなら、しばらくしたら痛みも引いてくるんじゃない。

  うん、これなら大丈夫。

  それより、交通事故にあったなんて知られる方がまずいよーーー。


と、最後の気持ちがわたしの頭の中でいっぱいになってしまって

わたしはすぐに

 「大丈夫です、動けるみたいなので。ほんと、気にしないでください。
  すみませんでしたっ」

といった感じで、その場を去ってしまいました。

なんとなく、その運転手さんが心配そうにわたしを見てくれていたのを感じながら…。

わたしも車を運転するようになった今では分かります。
あの時はごめんなさい、逃げるように去ってしまって。


あの場を離れてしばらく、徐々に脚の痛みが増していきました。
次第に膝も曲げられなくなってしまった…と思った時に

  あっ、これはまずい。その場を去っちゃいけなかったやつかもしれない。

と思いました。
でも、もう自転車を動かすしかなくて…


  脚、大丈夫かな?
  自転車のハンドルとカゴも少し変形しちゃった
  だから、真っ直ぐ走りにくいんだ…
  あの車は大丈夫だったかな?
  知られるの怖くて逃げてきちゃった
  助けてくれていい人だったのに…
  脚や自転車のこと、どうやってごまかそう…
  いつも帰る道を帰れば良かった…

さらに強くなる雨足にも心うたれて

もう、からだも心もびしょびしょです。

  わたし、どんな姿で走ってるんだろう?…

なんとか痛みのない方の片足で必死に自転車を走らせていました。


すると、

ん?

遠くからなにか声が。

その声ががだんだんと近くなってくるので振り向いたら、

軽トラに乗った作業服姿のおじさんが車窓から顔を出して何か話をしています。

え⁉︎ わたし? わたしですか⁉︎
たしかに、まわりに誰もいません。

おじさんは、わたしの自転車のペースに合わせて、かな〜りゆっくり運転してくれていたようです。


  えっ、そんなペースじゃ危ないよ。ここ、結構車通る場所だよ!


と、もうわたしの心はそっちにそわそわ、慌てまくり。

でも、おじさんはそんなことお構いなしにゆっくり運転してくれています。



「 傘、あげようか? 」



こう声をかけてくれていました。


「いやいや、大丈夫ですよ。気にしないでください。それに、ここ危ないし。」

と、わたし。

だって、わたしとおじさんの軽トラの間には対向車線分の距離があったんです。
それに、脚が痛くてすぐにもらいに動けないと思うし。

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それでも、おじさんは「傘、傘」って。

すると、おじさん⁉︎
なんと!
そのまま車道に車を止めてしまい、車から降りて荷台へ向かってしまったのです。


  えええっ!!!!!危険すぎるよ!!


おそらく傘を探してくれていることは分かりました。

ついにわたしも降参して、自転車を止め、
車が来ていないか確認しながらおじさんのもとへ。


おじさんは笑顔で、ちょっとくたくたの汚れたビニール傘を、
わたしに渡してくれました。


このやりとりの間中、おじさんは始終笑顔。

わたしと違って、車が来るからなんて全然っ焦ってない!!

傘をもらいに行くときも、脚の痛みも軽くなるような笑顔で。


こんなやりとりしている間、他の車が一台も通りませんでした。

この道路、たくさんではないもののそれなりに交通量があるのに。

傘をもらい自転車に戻っている時に、
ようやく他の車がやって来て様子を察したのか速度をゆるめてくれました。


「ありがとうございます!でも危ないし、もう大丈夫だから行っていいですよ。

 本当にありがとうございまーす!」


そして、おじさんは去っていきました。


  あぁ、良かった。

  まさかまさか、ここまでしてくれるなんて!


  おじさん、なんでなんで⁉︎

  わたしが車にぶつかったところ見ていたの?

  それともあまりにもかわいそうな姿でわたし走ってた?

  … ふふっ

この一連の出来事を振り返ってみたら、思わずくすっと笑ってしまいました。



  なんか作業服のおじさんが、天使に見えたよ✨



そんなことを考え、ひとりムヒムヒしながら帰っていたかと思います 笑
なんか「美女と野獣」の冒頭のお話にも似てるかもなぁって思ったりもしました。


傘をもらって数分くらいだったかな、意外とすぐに

雨があがり、太陽の光が見えてきました。

そして家に着く頃にはすっかり晴れてしまいました。


  おじさん、傘使わなくてすんじゃった!


そう、せっかく貰った傘ですが、
自転車のゆがみと脚の痛みとで
さしてしまうとバランスがとりにくかったのもあり
傘を使えずにいたら、なんと雨があがってしまいました。


もしおじさんに会っていなかったら、きっと暗い気持ちのまま家に帰っていたと思います。

  おじさんのおかげで、心が満たされた。

  傘だけじゃなくて ”笑顔“ もくれたんだ。


そんな風に思いました。


そのくたくたのビニ傘はしばらく家の傘立てにいれていました。
見る度に笑顔になれました。

家族はこのちゃんとした詳細を知らないから
なんでこの傘を取っておくのかきっと不思議に思ったことでしょう。

わたしだけの秘密。

あの傘は見た目が悪くても、わたしにとっては幸せになれたものでした。

はっきりとは忘れてしまいましたが、
高校を卒業する頃にその傘と さよなら をしたような気がします。

実は、あの事故の約1ヶ月後にまた同じように車にぶつかり
今度は反対側の脚を軽く痛めました 笑
10年くらい経ち、ようやく整形外科で診てもらったところ問題ありませんでした。


ただ、今でも天気が悪くなったりするとその脚が痛くなることがあります。

そして、あのおじさんのことも合わせて思い出すのです。

  この脚の痛みも悪いことばかりじゃないね

  あったかい気持ちになれる

  こう思えるのもおじさんのおかげだよ

  道の真ん中に車を止めて降りるとか

  あんな無茶なことをしてまで

  傘を渡そうとしてくれるって

  本当に本当にすごい


今、より思います。


  わたしには真似出来なるかな〜


運転しながらたまに思います。

もしその時は車道ではなくよけてから、ですかね。



おじさん、お元気ですか?

おかげさまで笑顔になれました。

あの時は、ありがとうございました。


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