沖縄のガジュマルが呼んでいる
観葉植物のガジュマルを新宿駅(東京)で買った。今から20年も前のことだが、まだ栽培している。沖縄の人から買った、懐かしい夏の思い出だ。
20年前の夏の暑さは、今年(2023年)の夏より過ごしやすかったとの記憶はない。夏はいつでも、狂った季節だと思う。
巨大な新宿駅の地下広場で沖縄物産展をやっていた。
私は東京が生活圏なのだが、あまり旅に出ないので、物産展などのそばを通ると覗きたくなってしまう。旅行の計画もなかったのに、魔法でも使ったかのように、一瞬にして、旅に出たような気分になれる。
その日、沖縄の空間に流された。
私はおじさんなのでお酒とかシャツ等に引き寄せられながら歩いていた。足を止めたのは、園芸植物売り場だった。ガジュマルはダイコンのような根っこが土の上にあらわになっている姿だった。その強烈なインパクトに心を奪われた。
「これください」
私は催眠術にかかったように、指を差していた。
「ありがとうございます」
売り場のおじさんは顔中に汗を吹き出させていた。
物産展会場は吹き抜けになっていて、焼けたビル風がドンドン入ってくる。
「夏の日、沖縄はもっとすごいんですか?」
そう尋ねた私も、たぶん赤い顔に汗が流れていたと思う。
「いやさ、暑さの種類が沖縄と違うね、こっちも、厳しいよ〜」
と、笑顔を見せながら、ガジュマルの鉢植えをビニール袋に入れて手渡してくれた。
ガジュマルを見るたびに、楽しいひとときがよみがえった。水をやるのが楽しかった。
現在(2023年秋)の我が家のガジュマルは勢力が弱まっている。ガジュマルの寿命は数百年とのことなので、まだまだ元気でいるはずなのに。
たぶん今年の夏の異常な暑さが原因なのだろう。連日の猛暑日だったし、ガジュマル置き場のベランダは日当たりが良すぎる。おまけにエアコンの室外機も置いている。
ガジュマルは沖縄に自生しているのだが、今年の夏のベランダではあまりに不適切だったのだ。
このガジュマルを売ってくれたおじさんの言葉が、まるでガジュマルの囁きのように聞こえてくる。
(いやさ、暑さの種類が沖縄と違うね、こっちも、厳しいよ〜)
「ゴメンね…」
夏の間はベランダにシェードを張っているのだが、それだけでは完璧なコンディションは守りきれなかったのだ。
勢力は落ちてしまったけれども、暑さ寒さ、日当たり、水やり、肥料に気をつけるから、また、回復してくれ。
毎年、冬の間は室内に入れていたのだが、来年は夏の間も室内にいれよう。
私がガジュマルを守ろうとするのは、沖縄のおじさんをとおして、沖縄に親しみを感じる気持ちからなのだ。一度も行ったことのない沖縄だけれども自生するガジュマルを見るために行ってみたい。夏に。
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