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第百六十八夜 『今どきの若いモンは』

「アポイントに関して、注意を受けてしまいました。」


Sは年を明けてから、不動産投資のセミナーの登壇をするようになった。

その初めてのアポイントを彼に繋いだところ注意を受けたと言う。


出先で昼食をとり、少し事務作業を行うために入った喫茶店で神妙な顔で報告するSを見て少し懐かしい気持ちになった。


「具体的には何を怒られたの。」


「アポイントの繋ぎ方が雑だと言われました。」


内容はさておき、私はかつての自分とSを重ねて考える。

それは老害的な私はもっとできたとかそういったマウントではない。


私自身、入社から1ヶ月で全く右も左も分からない中、セミナーに登壇し、最初の頃に彼に繋いだアポイントで聴けていない部分などが多くて注意を受けたことを思い出したのである。


実に6年前であろうか。


Sも同じような悩みを抱えていることに少し面白くなってしまって、笑みが溢れる。


「何かおかしいですか。」


Sは少しムッとしたのだろうか。強めの語気で聞いてくる。


「いや、おかしいわけではないよ。具体的にアポイントの繋ぎ方はどうしたの。」


内容を説明している間、彼は少し納得が行かない部分もあったのだろう。拗ねているようにも見えた。

アポイントを取得する側からすれば、せっかく撮ったアポイントなのにそんなふうに言われてと思うの分からなくもない。


しかし、部下からアポイントを吸い上げる側になれば、その考えは一変するだろう。


現在、アメリのセミナーは特典としてCFPの無料相談を用意している。

それが結果的にアポイントとなるため、彼の案件の件数が膨大になってしまう。


多くのアポイントを抱えたマネージャーが各アポイントに対して注意が分散されてしまい、ここの商談の詳細が抜けがちになる。


私がマネージャー時代は、あえて部下を同行させて、全て商談の内容を書き起こしさせていたものだ。


部下の商談練習と私の商談における整合性をとるためだ。


Sには私が現在セミナーで彼に任せる際のアポイントの繋ぎ方を伝授し、アポイントを受け取る側の考えを共有した。


二重で注意されたように感じるかもしれないが、もう長い付き合いだ。Sがその程度で腐らないことも知っている。


また一つSが昔の自分の影を追ってスキルを身につけたかと思うと、私は面白くなってくる。

6年前、彼も私にそのような感情を抱いたのだろうか。


今度、酒の席で聞いてみようか。


物語の続きはまた次の夜に…
良い夢を。

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