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【午前十時の映画祭11】映画『天使にラブ・ソングを…』を観てきた【27分の23】

ごきげんよう。雨宮はなです。
元々好きな作品でしたが、正直いうと「スクリーンよりも、金曜日や土曜日の夜にテレビで楽しむ感じの作品じゃない?」という印象の作品でした。ですが、スクリーンで観てみてその認識は間違いだったと反省したのでした。

※ここから先はネタバレを含みますので、ご了承いただける方のみ読み進めてください。

もはやこれはミサだわ。

最近のありふれた「貴方は涙する」だの「感動の」だの安っぽい宣伝文句に飾られた、マーケティング結果マシマシ、感動&涙ヤクザコンテンツ(最近ではそういったものを”感動ポルノ”と呼ぶらしいですね)なんかには無理な自然と涙が滲む本物の感動でした。

心が現れ、幸せな気分になり、涙となって溢れるようなそんな感動でした。シスターたちが歌っている間、自然と手を合わせてしまうのです。特に好きなのはメアリー・クラレンスが初めて指揮をしたミサです。特に、自分に自信がなく声すらまともに出せないでいたメアリー・ロバートの声が響き、「できた!」という明るい表情になった瞬間は自分にも勇気が湧くような救われた気持ちになれます。私にとってミサと呼べるような時間でした。

これはテレビモニターでは感じることのできなかった、まさしく「JOYFULL」でした。

時間と経験による「おもしろい」の増加

実は、この作品をスクリーンで観るのは初めて。もともと好きだったけどなおさら好きになったし、初めて観た時よりも感じるものが増えてるのがわかりました。

以前観た際は「子役がいい演技するなぁw」とか「わかりやすく小者な悪党だなぁw」とか「シスターによる脅迫ってなかなかだぞw」くらいの面白がり方でした。でも今回は、「なんでネバダなんだw」とか「セキュリティなにそれおいしいのw」とか、見えるものが増えてツッコミどころ満載なめちゃくちゃが楽しい!きっとこれは時間の経過とともに、経験を重ねたことにより「おもしろい」と思えるものが増えたからなのでしょう。

デロリスへの尊敬

デロリスって実はそんなにめちゃくちゃな人間ではないと思うのです、個人的に。というのも、子供の頃のエピソードは皮肉っぽい頭の良さのある子どもというだけ。たしかに、シスターに対して盾をつくというかいちいちふざけた態度をとりますが、大人にとって面倒な子供というだけで他害や破壊は全く行いません。それに、彼女の行動をクラスメートは笑ってみています。厄介者として遠巻きにされているわけでも、嫌われているわけでもないのはわかります。

そんな、私にとっては滅茶苦茶じゃないデロリス。私が思う彼女のすごいところは次の5つ。

1.音楽のセンスとアレンジ能力
2.人にものを教える能力
3.コミュニケーションスキル/面倒見の良さ
4.感謝を伝え非を認めて謝罪できる素直さ
5.ピンヒールで逃げ切る身体能力

最後はオチのように思えるかもしれませんが、すっごく難しいんですよ、ピンヒールで走るのって!脱がずに全力疾走して逃げ切るってめちゃくちゃすごいことです。

修道院長さま、おつかれさま。

キリスト教徒の友人が教えてくれたのですが、デロリスがかくまってもらっていた修道院はカトリックらしく、デロリスが提案&練習させたあの歌い方は別の宗派のものらしいです。修道院長さまが大反対したのは「めちゃくちゃだから!」ではなく、れっきとした理由があったんですね。彼女の葛藤や心労はかなりのものだったことでしょう。

そりゃあ、「もうここに私は必要ない、離れます」ってなっちゃいますよ。私は最初、そのような宗教的・文化的な背景がわからなかったので「あーあ、キレちゃった」「かまってちゃんかな」なんて思っていた時期もあったのですが、コメディのなかに実はものすごい悩みを抱えたキャラクターがいたのでした。

最終的に、彼女はメアリー・クラレンスを救出するために動いてくれます。そこで「彼女は立派なシスターです」と認めてくれたとき、ただ単純に嬉しくなれるのは私だけではないと思います。最初から自分を認める気が無かったと知っている人に、その人の領域で認められるというのはとても難しいことです。それに、「シスターである」と認めたということは「自分の仲間です:私は彼女を受け入れました」と認めたということです。

様々な活動を行い、元気に明るく過ごしていたデロリスではありますが、修道院長から煙たがられているのは少なからず不安を感じていたはず。それが無くなったことでデロリスは強さを確立させ、連行されるヴィンスに「神の導きを」と伝えられたのだと思います。

さいごに

この映画が現在公開されたら、それはきっと「黒人の、女優の主人公だ」とか「人種差別を無くしたんだ」とか「新旧の隔たりを超えたんだ」とかごちゃごちゃ言われてつまらない映画になっていたことでしょう。公開当時に観られなかったという悔しさよりも、あの当時に公開されて良かったという気持ちでいっぱいです。

残念なことに『シカゴ』と『天使にラブ・ソングを…』はこの3月で上映権が切れるらしく、次はいつスクリーンで観られるかがわかりません。またそのチャンスがあるように手を合わせて待つとしましょう。

最後まで読んでくれてありがとうございます。
ではまた次の記事で。ごきげんよう。

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