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久遠の愛情。

私の大好きな”表現”の話。

今期アニメ化もされ今話題の漫画、葬送のフリーレン。


※このnoteは少々ネタバレを含みます。
ご了承いただける方のみお読みください。


タイトル:久遠の愛情とは、
作中に登場する鏡蓮華という植物の花言葉です。
6月、大学の授業の中で好きな表現についてのプレゼン課題がありました。演劇、ダンス、映像、音楽、なんでも。

好きな表現。私はこの”久遠の愛情”という表現を紹介しました。
演劇やダンスなど芸術系に近い学部なので文学表現、言葉の表現を取り上げた人はいませんでした。

でも本当に、みんなに知ってほしい。

※※ここからネタバレを含みます※※

葬送のフリーレン。
少々あらすじを話させてください。

物語は冒険の終わり、魔王を倒した勇者一行の凱旋パレードから始まります。
主人公のフリーレンは勇者パーティの魔法使いで悠久に近い時を生きるエルフです。
彼女と彼女の仲間たちは10年に及ぶ旅路に別れを告げ、そしてそれぞれの”日常”に戻っていきます。勇者ヒンメルは王都で。僧侶のハイターは聖都へ。フリーレンは中央諸国を巡る魔法集めの旅に出ていきました。

彼女が再び仲間たちに顔を見せるのは、4人でみようと約束していた半世紀に一度の流星群、エーラ流星の季節。
ここまでで既に冒険が終わって50年の時が経っていました。
この大胆な時間の使い方に彼女の”人間”とは異なる時間の感覚がよく現れているエピソードですよね。

その後、程なくして勇者ヒンメルは没します。

「人間の寿命は短いってわかってたのに、どうしてもっとちゃんと知ろうとしなかったんだろう。」
10年という短い旅を共にして、その後はほとんど会うことのなかった勇者の死。その死に彼女は涙します。彼のことを何も知ろうとしなかったことへの後悔で。

そして彼女は再び旅に出ます。
人間を知る、旅へ。

と、こうして『葬送のフリーレン』、彼女の二つ目の物語が幕を上げます。

この物語は主にフリーレン、魔法使いのフェルン、戦士のシュタルクを中心人物とした”現在”の冒険の合間に勇者たちとの”過去”の冒険が回想シーン的に織り込まれ進行していきます。

”久遠の愛情”とは前述しましたが、過去の冒険にて勇者ヒンメルがフリーレンに贈った指輪、その指輪に使われていたレリーフである鏡蓮華の花言葉です。

「何か好きなものを選びなさい」勇者が言います。
興味のないフリーレンは、じゃあこれ、と考えもせず指さす。
そして彼は、切ないような、悲しいような、複雑な表情でその指輪を彼女に贈るのです。

フリーレンは花言葉なんて知らない、興味もない。
しかし勇者ヒンメルはわかっていた。


久遠の愛情。

久遠とは永遠や永久と同じように使われる言葉ですが主な意味は二つあります。

久遠 
時が無窮なこと。永遠。また、遠い昔。

Oxford Language

永遠。また、遠い昔。

この物語において直接的な恋愛描写は出てきません。が、ところどころで勇者ヒンメルがフリーレンを気にかける様子が描かれています。

ヒンメルは勇者という身分でありながら生涯独身でした。
恋慕か純粋に愛情か。彼の心のうちが語られることはありませんが、勇者から魔法使いに向けられた一つの愛。

ヒンメルにとっては永遠であり、そしてそれと同時に永い永い時を生きるフリーレンにとってはいつの日か勇者ヒンメルの存在自体が”遠い昔”になるのかもしれません。

永遠の愛。遠い昔の愛。

「永遠」でも「永久」でもない。
ここに「久遠」という言葉をあえて持ってくる。

エルフと人間という時の対比を軸に一つの指輪に二つの意味を与える。
あまりにも美しくないですか。


今の私の文章力ではこの言葉、この言葉選びの美しさを決して十分には伝えられていません。が、それでも。この花言葉の美しさ、この物語の尊さを少しでも感じ取っていただければ嬉しいです。

ぜひ、葬送のフリーレン、読んでみてくださいね。

2023.11.26

※あらすじやエピソードに関する表現で、このnoteで書きたいことにはあまり重要じゃないかな、とわかっていて省いたり改めてしまった表現がありますがご了承ください。

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