見出し画像

フリースクール活動日記 2023/11/23-奥多摩

 この日は祝日。だが木曜日ということで出かけることになった。とはいっても祝日ということで、どこへいっても人が多いはず。だが、もはや恒例と行ってもいい出かけ先でただ1つ、まったく人がいないと断言できる場所がある。奥多摩珊瑚荘には焚き火もあれば薪ストーブもあり、先日事故で転落しかけた囲炉裏もある。よし、ここにしようと決めて、前日に具体的な活動内容を決めにかかった。
 もう11月。流石にもう川には入れないため、活動内容は大まかには決定した。皆で材料を持ち寄って料理を作る。しかし何を作れば良い?
 今回は新メンバーも入っていることだし、手軽に作れるものがよいかもしれない。そう相談した結果、パンケーキを作ることになった。必要な材料はグラニュー糖、強力粉、卵や牛乳など。それを前日に皆で買いに行き、それに加えて各人が焚き火で焼きたいもの、パンケーキにのせたいものを持ち寄ることになった。
 だが、はたしてパンケーキが上手に焼き上がるのだろうか。随分前、米を炊くときに間違って水が少なく入っていたため、上の方がほぼ生米という状態になったこともある。その時は、皆の努力と根性とでなんとか乗りきったが今回もそう上手くいくとはとても思えない。
 いつパンケーキが焦げてもいいようにと、こっそり軽食を鞄に入れていくことにした。パンケーキが上手に焼けたならばそれを食べるし、焼けなかったならば持ってきたものを食べていれば良い。空きっ腹を抱えなければよいのだ。
 当日。ほぼ全員が予定時間通りに青梅駅に集合した。未だ来ていないのは2人ほど。そのうち、ソースは何を血迷ったのか5時43分に川井駅に到着していたという。僕たちが川井に着いたのは10時40分頃。つまりその間約5時間、ソースはひたすら待ち続けていたことになる。なんだってそんなことをしたのだろう。そうか。きっと寝ていたに違いない。そうだ。あの無人駅の待合室で横たわっていたのだろう。
 川井駅から出てきたソースと合流し珊瑚荘へ向かうことになった。いつものようにイマンモ達を追い抜いて進んでいく龍角散たち。彼らを追っていく途中で、反対車線側になにかの屍体を目にした。
 小さくだが尾羽が見えていることから考えるに、鳥だろう。それもかなり大きい。数メートル離れたこの距離から見てあの大きさとなると、ひょっとすると雉ぐらいの大きさはあるかも知れない。色は薄い茶色、黄土色だ。
 取ってきて荘内にて観察・解剖してみたかったのだが、あいにくと車にひかれてしまっていたようで、その屍体の上をひっきりなしに車が通る(祝日だからか、いつもよりも多く車が走っている。たぶん奥多摩を目ざしているのだろう)道の真ん中にあっては回収することは出来ない。泣く泣く諦め、いつの間にか先に行っている皆に追いつこうと足を速めた。

 しばらくして珊瑚荘に到着するなり、荷物を置いてスコップなど持って裏山へと登る。もう季節は11月。火に当たって暖を取りたいところだ。いつもであればΧαοσや龍角散に任せるのだが、龍角散はパンケーキの支度をしておりΧαοσはカッパくんと一緒に山奥に枯れ枝を拾いに行っている。
 girlsは基本的にパンケーキグループで、そこに龍角散たちも入るとなると残りは5名ほど。とくになにをするでもないシャコなどを数えれば、焚き火を手伝うほかない。
 持ってきたスコップを用いて灰を掻き出す。前に使ったときに随分と灰が積もったようで、なかなか取り切れない。ようやっと掻き出しきったところでΧαοσらと合流、薪と枯れ枝とを組み、ダンボールを放り込んで用意を調える。
 けれどもレイセン達が居ないため、ライターを借りることが出来なかった。たまたまヨッシーがメタルマッチを持っていたためにこれで火を点けようと思ったのだが、これがなかなか上手くいかない。焚き火巧者のレイセンが不在(下でパンケーキ組の指導中)というのもあるが、一番の理由はやはりメタルマッチを使い慣れていないからだろう。しばらく悪戦苦闘したのだが、ついにそれで火を点けるのは諦めることにした。Χαοσらが走って龍角散からライターを借りてくることとなる。やはり、ライターのほうが使いやすい。あっという間に火が着いた。
 しまった、最初からこっちを使っておけばよかった。と思いながらも、火さえ着けばあとはこっちのものだと1人悦に浸る。ところが、なぜか一番太い薪に着火しない。どんどんどんどんダンボールを入れ、風を送るのに肝心の薪がちっとも発火しないのだ。
 どうやらその手前に架けていた枝がいけないようだ。そこそこ太い、いかにも火が着きそうなもので、先ほどヨッシーが切ってくれたものだったのだが、どうやら数時間前の雨で水を吸ってしまっていたようだった。火で熱せれば熱するほど水が出て鎮火してしまうため、けっしてそれ以上燃え広がらない。しばらくしてそれに気がついたために抜いたが、あいにくと湿っている枝はまだ沢山入っていた。
 しばらくすると、シャコたちがマシュマロを焼きに来た。下の、パンケーキの準備はもう終わったのだとか。それでも、こちらは全然終わっていない。倉庫においてある薪は薪ストーブ用のものだから取ってはならないし、そこらの枝は湿っていてすぐに使えない。ダンボールや松の枝葉など使っても一時しのぎにしかならない。それに空気を送り込むことでなんとか火を保っている状態だ。
 そう説明して、火を絶やさないように定期的に風を送る。一時はどうなることかと危ぶまれたが、それでも火は少しずつ勢いを付けていく。そろそろ大丈夫かと思ってあたりを見ると、皆すでに串を片手に準備を進めていた。どんどんと串に刺さっていくベーコン、ソーセージ、マシュマロ、蜜柑……

 なかなかよい火加減になっていた。できればこのまま焚き火の前で本でも読みたいのだが、あいにくとだんだん火は小さくなってくる。そうしたら、空気を送って再度火を安定させなければならない。
 別にそれは僕がやらなくてもよいのだが、他人に任せるとなぜか煙と灰がこっちに向かってくる。僕が空気を送ったときだって、なぜか煙と灰は自分に向かってやってくる。ただ、他人がやったときよりかはマシだ。こんな状況で本が読めるはずもない。かといって、下に下りればいつ龍角散が暴れ出すかわからない。実際、少し後にΧαοσとカッパくんは畳の上で取っ組み合っていた。
 結局、ここに居続けることになった。軽食を済ませ、皆はだんだん下へと降りてゆく。だが、火の番は必要。しばらく居座り横笛を軽く吹く。じっと焚き火を見つめる。ほかに、やることがない。退屈だ。
 幸いしばらくしてイマンモが交代してくれたため、下に下りることが出来た。そうして荘内に戻ってみると、いつの間にか皆パンケーキを食べ始めている。
 食いっぱぐれてはたまらない。ただちに調理中の龍角散に、僕とシャコの分を頼みに向かった。龍角散が持ち込んできたチョコレートシロップをパンケーキにかけるつもりでいたのだが、常に御嬢やソースの手にあるためになかなか使う隙がない。
 仕方がないので自分で持ってきたケーキトッピング用のものを使うことにした。いったん机の上に置き、その中から幾つか選んで自分のパンケーキを飾り付け始める。

 なぜかドラえもんのようなかたちになってしまったが、これはこれでかなり美味しかった。
 なお、この後、龍角散が持ってきたチョコレートシロップが消費期限を2年以上経過している事実が発覚した。皆、それを美味しそうに食べていたが、腹を痛めていないだろうか。チョコレートシロップで腹を下すというようなことでまた8割が休んだりするのは見たくない。
 パンケーキを食した後、皿を洗い、龍角散達の提案に乗ってドロケイをやることになった。範囲は珊瑚荘の周囲全体。
 狭いからか、鬼が2,3人でもすぐに逃げ側は全滅する。最後は倉庫の屋根によじ登った龍角散を何人かで取り囲むも、後を追ったソースが身動きとれない状況になってしまい、龍角散に対して何人もが呪詛の声を吐くこととなった。

 もうそろそろ紅葉の季節は終わる。いまだ気候上は秋だけれど、さすがに夜は冷え込むようになった。土曜日には龍角散らも参加するプチ合宿があるが、そこで体調を崩さないよう準備をしていこう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?