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クリスチャン・ディオールのもう一つの顔

A woman’s perfume tells more about her than her handwriting. — Christian Dior

「女性の香水は、その人の手書きの文字よりも多くのことを語る」

著名なファッションデザイナーの残した言葉には、時を経ても色褪せずわたしたちの心を突き動かすパワーがあります。

フランスのファッションデザイナー、クリスチャン・ディオール(Christian Dior )はクチュリエとしてだけでなく、パフューマーとしても名を馳せました。そんな2つの顔を持つクリスチャン・ディオールについてまとめました。

クリスチャン・ディオール

クリスチャン・ディオールは、フランスのファッションデザイナー、そして 今なお世界に影響を与え続けている クリスチャン・ディオールというファッションハウスの創業者です。

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パリにある彼のメゾン

クリスチャン・ディオールが 自身の名を冠し、メゾンの居を構えたのは、1947年 パリの一等地、アヴェニュー・モンテーニュ 30番地。

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ディオール時代以前のパリ

その当時のパリは、先の大戦で物資は不足しており、電気さえも使用が制限される時代...クチュリエたちが使える布も限られていました。

女性たちは、戦争と制服の影響からか地味な色の布のボックス型のシルエットのお洋服に身を包み、きっとその当時のパリは、現代に生きるわたしたちが想像する「花の都」としてのパリとは...まったくかけはなれていたようです。

「コロール」コレクション

暗い時代の終焉を迎え、それでも深い傷跡が残るパリで、クリスチャン・ディオールは1947年2月12日、最初のオートクチュールコレクション、「コロール (花冠)」を発表します。

ディオールがファーストコレクションを発表したその日、パリの街はちょっとした騒ぎになったといいます。さまざまなひとが、彼のコレクションを一目みようと、彼のオープンしたばかりのメゾンに集まりました。雑誌の編集長、オートクチュール界の重鎮、ハシゴを使って外から一目見ようとした人もいたり...今では考えられないような、異様な光景がそこにはあったようです。

「ニュールック」の誕生

来場客の中のひとり、ハーバース・バザー誌(Harper's BAZAAR)の当時の編集長であったあったカーメル・スノウ(Carmel Snow) が、この「コロール」コレクションを、「ニュールック」と表現したことは、あまりにも有名です。それほどに、ディオールが発表したコレクションは衝撃的で革新的なものでした。

Dear Christian, your dresses have such a new look!” The expression stuck, and the rest is history. — Carmel Snow *1

「バー」スーツ: 新時代のマニフェスト

ファッション界だけでなく、新しい時代の幕開けのマニフェストともいうべきそのニュールックを代表する、「バー」スーツ (BAR suit)。 それは、黒のウール地のコローラ スカートと、生成りのシャンタン*2 のジャケットからなるアフタヌーンスーツ。その当時、すでに42歳を迎えた クリスチャン・ディオールの再生の証でもありました。

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「1946年12月、戦争と制服の影響から、女性はまだ逞しい女戦士のような格好をしていました。しかし私は、花のような女性のために、丸みのある肩、豊かな女性らしいバスト、細くくびれたウエストの下に大きく広がるスカートをデザインしました。」

「バー」スーツは、直線的な前時代の暗い時代を乗り越え、新しい時代の幕開けを体現するデザインでありました。その優美な曲線は女性に生きる喜びや愛する気持ちを思い出させ、パリをファッションシーンに再び呼び戻したのでした。


次回は、クリスチャン・ディオールがニュールックと同時に発売した香水について書きます。


*1 CAWTHORNE, Nigel, The New Look : The Dior Revolution, London : Hamlin, 1996

*2 シャンタン: (shuntung)中国の山東省で創製された絹織物の一種。本来は柞蚕糸 (さくさんし) を使った平織物であるが,これになぞらえて普通は経糸に生糸を,緯糸に玉糸か紬糸を使った織物をいう。節のあるのが特色で,光沢のある。ブリタニカ国際大百科辞典

*その他参考文献 MISS DIOR : LOVE N’ ROSE, Dior.com

*写真は「MISS DIOR : LOVE N’ ROSE」の展覧会で撮影しました。

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