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1-2 終わりの始まり1

 その日も、あれを見るまでは、いつもと変わらない一日で終わるはずだった。
 

 私は友人と一緒にスーパーに向かっていた。学校帰りに、親に頼まれた買い物を済ませる必要があり、友人はそれに付き合ってくれていた。友人の両親もエホバの証人で、気が合うこともあり、私たちは良く行動を共にしていた。

 エホバの証人は土地土地において独自にエリアを分け、そのエリアに一つの“会衆”と呼ばれるコミュニティを置く。

 時代にもよるとは思うが、大体100名前後の人数の集まりとなるように調整されていたと記憶している。もし信者が増えた場合、エリアの範囲を変更し、会衆を増やすなどして、ちょうどいい数になるよう調整する。

 ちなみに友人は隣の会衆に所属するエホバの証人一家だった。

 スーパーに到着した私たちは目的の売り場まで急ぐ。それほど広くないし、よく利用する店だ。どこに何があるのかは大体把握していた。
 

 目的の売り場に向かう途中、ゴソゴソ怪しげな動きをする人間が目についた。学生服を着ているので、年齢はたぶん自分達と同じくらい。男子だ。

 彼は背後で見ている私たちに気づく様子もなく、手にした商品を素早くバッグに入れた。

「私、お店の人呼んで来る。」

 友人にそう耳打ちして、私はお店の人を呼びに行った。幸い、すぐ近くに品出し中の男性スタッフがいた。
 私は事情を話した。最初笑顔だった男性スタッフの表情は厳しいものに変わっていく。

 スタッフと一緒に友人が待つ場所まで戻る。すると犯人と友人は、向き合った状態で固まっていた。最初なぜそうなったのかがわからなかった。しかし、犯人の顔を見て私も同じ状態になった。

 私たちが固まった理由はシンプルなものだった。

「シンイチくん?」

私は思わずそう呟いた。そう、犯人は私たちの顔見知りだったのだ。

「きみ?ちょっと事務所まで来てくれるかな?」

 間髪いれず、男性スタッフが割って入る。犯人は動かない。観念したのか、私たちにびっくりしたのかその理由はわからない。

 男性スタッフは私たちにありがとうと言うと、犯人を事務所に連れて行った



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