017 女王
多田さんのノロノロ安全運転で無事高速を降り、それによって発生していた渋滞は解消された。
周りの景色はいわゆるのどかな田園風景。自然が豊かで、多くの人が休日にはリフレッシュに訪れたいと思うようなそんな場所だ。
町と呼べばいいのかはたまた村なのか。
そんな中、車は目的地へと進む。
「わたしねー、今回初めてなんすよー」
多田さんが口を開く。どうやら旅館に来るのは今回が初めてらしい。
「あと、今日は部長いるから、またどやされるんだろうなー。あーめんどくさい」
「部長?」
「面接した人、あれが部長の七林です。週の何回かはこっちに来てるんすよ」
あのLINE面接の女性は部長さんだったらしい。それはそうと多田さんの緊張っぷりがハンパないのが気になる。
車は山道を走って結構になる。こんなところに建物なんてあるのか、今ならたぶんそんなことを考えたはずだ。それくらい、長いこと人気のない山道を走っていた。
車でさらに十分くらい走ったと思う。
「あ、看板ありましたね。よかった、間違ってなかった。」
多田さんも不安だったらしい。
車は旅館の大きな看板を右にはいる。すると大きな建物が見えてきた。求人サイトで見たあの建物だ。
車はさらに奥に進み、少し開けたスペースに止まった。
「じゃあ、荷物を降ろして下さい。事務所へ案内します。」
多田さんに言われるまま、車を降りると、僕はトランクをあけ、荷物を降ろした。
「じゃあ行きますか。いやーまた言われるなー」
多田さん、緊張してる。僕はそう思った。
車を降り、多田さんに案内されながら、裏口から建物に入る。
L字に曲がった廊下を抜けると、事務所と書かれた部屋が見えてきた。
コンコンっ
多田さんはノックしてドアを開けた。
「お疲れさまですー。あのー、あ!」
「あれー多田さん?なんで来てんの?本社じゃないの?なんで?」
多田さんは部屋に入るなり、集中砲火を浴びた。彼がめんどくさいと言っていたのは、このことだったのか?
「別に来るのはいいよ。でも、理由は?」
「は、はい……」
多田さんは詰められている。僕はこの時空気を読めず、間に割って入った。
「こんにちは七林さん。xxです。明日から頑張ります。よろしくお願いします」
そう言うと、多田さんが小声でこう言った。
「xxさん、部長、部長ね」
「七林部長、よろしくお願いします。」
「はい、こちらこそ。来てくれてありがとうございます」
一瞬表情が和らいだ。だが、すぐにターゲットは多田さんに戻り、攻撃が再開された。
「なんで来たのか聞いてるの。まさかxxさん連れてくるためだけに来たの?それならそれで違うよね?」
女王の攻撃は続き、僕はそれをただただ見ているしかなかった。
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