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わたしという庭

わたしという名の庭が生まれた時

抱えきれない たくさんの種をもらった

サクラソウ、スミレ、菜の花

あの人と、あの人と
そのずっと前から

気が遠くなるくらい
はるか前から

受け継いできた種だ



わたしを育む人から
受け継いできた土壌に

数えきれない たくさんの種を植える

ヘチマ、朝顔、忘れな草

唯一無二の庭に

心安らぐ場所に
どうか育ちますようにと

それがはじまりの「約束」。



幾年も重ねて
季節が巡るたび

庭は新しい顔を見せる

育たなかった芽も
数知れない

あまりに強くて
他の花を枯らしてしまうから
取るしかなかった蔓草(つるくさ)

成長するにつれて
無性に嫌いになって引き抜く水仙

そうしてまた 同じような花を
植えていることに
気づいて笑ってしまうのだ



出会って 言葉を交わした
心を交わした人から

種を受けとる
種はこぼれる

唯一無二の庭へ

季節が巡るたび

新しい種が芽吹いて

育ってゆく
わたしを見届ける
いつかの約束を 言祝ぐように


あなたにも どこかで
手渡せたでしょうか

わたしという名の庭で
生まれた「種」です。


結婚式に種を贈る、というエピソードが
とても素敵だなと思って

そこから膨らんで できた詩です。

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