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#2-3どうやって「氷艶〜月光かりの如く〜」という異種格闘技を演出したのか? 〜スタッフ編〜

あと出しになってしまったスタッフ編の3回目。そしてこれで最終回。最後は、亞門さんがどうしても伝えたかった、初めてのテクニック「カウント表」と「振り付け」について伝授。実は、noteを始めたのも、このことをどうしても伝えたかったからとのこと。テクニカルなことになるが、音楽のある創作などにはとても役立つのでは? そして最後に、お客様へのメッセージ。

初めての本読み

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「決定項」と書いてあるが、台本は毎日どんどん書き換えられる。

「合宿って響き、楽しそうですが、新潟の稽古はどんな感じだったんですか? 」

新潟入りした夜の食事会のとき、美味しい海鮮料理を目の前に、出演者に初めて台本が配られた。全員が『どうなるんだろう?』と期待と不安を抱きながら、翌日、いよいよ本読みが始まったんだ

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当初、プロデューサーからは「本読みってなんですか?」と聞かれたし、スケーターたちからは、え!台本もらえるんですか?と、驚かれたな

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「今回は、亞門さんの常識は通じないってことですね」

そう! それが異種格闘技の醍醐味なんだ! 海外で演出していて、しみじみ感じるのは、日本のやり方の常識は、そこでは非常識ってこと。いや海外だけじゃない日本の歌舞伎や能の世界でも、僕には驚くことだらけ。

例えば、歌舞伎は江戸時代から演出家という存在がいなくて、役者と台本作家が一緒に全てを決めてるからね。海老蔵さんから誘われて仕事したときも現場に入ったら「で、演出家ってなにすんの?」って聞かれたぐらいだから(笑)

「信じられない、シェークスピアもいるのに」

いや、彼は劇作家だし、作り上げたのは役者たちだった。演出家というのは、まだ新しい仕事で、19世紀終わりから20世紀頭から始まったばかりの仕事なんだ。近代になり作品にかかわる人も多くなって、全体を指揮し、先導する人が必要になってきたんだよ

「へえーそうなんだ、まだ100年前。案外イノベーティブな仕事なんですね」

だから色んなタイプの演出家がいていいし、色々な掛け合わせでできる舞台があっていい。ワクワクするだろ。

それで、話を氷艶に戻すよ。新潟に入る2ヶ月前、スケーターの人数も正式に決まり、実力のあるアンサンブルが必要だからオーディションをして欲しいとプロデューサーに言った。そしたら『オーディションってどうやるんですか?』という返答。本当に世界が違うんだよね。

アイススケートでは、すでに子供の時から訓練してきた実力ある人たちとショーを作るけど、舞台の場合は、作品に合った才能を新たに見つけ出すことも必要になる。作品に合ったキャラクター、歌、踊り、演技、実力が必要なんだ。それがオーディションをする理由だ。適材適所に、作品にとって最高の出演者を置く、これはとても大切なことだよ。彼らがガッチリ脇を固めてくれるから、主役が光るんだ

亞門さんが本読みをした理由は他にもあった。今回は忙しいキャストも多く、ずっと新潟に居る人は限られていた。だから本読みをやって、それぞれが自分が、どういう役で何を必要とされているのか、分からなくなることを防ぐためだ。

実は前回の氷艶で、歌舞伎チームとスケーターチームが時間と場所の都合で、ほとんど別々の場所で稽古をしていたため、本番の数日前まで、どんなストーリーで、何をやっているのか分からない出演者もいたということを聞いていたらしい。全員が一丸となるために、本読みが必要だった。

亜門流「カウント表」の劇的な活用術

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