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《木曜会:4月18日》

【メンバー】
①冷泉
②ヒゲの男
③ファラオ
④デザイナー浦部
⑤アラタメ堂のご主人
⑥常連の不思議な女
⑦ミドリさん
⑧バレリーナの女
⑨ブルーグラスの男
⑩バスらせます!コースケ
⑪CEO山脇
⑫インテリア将軍まっきー
⑬エクステリア将軍きむら
⑭バルーンファイトまっつん
⑮ドローンいわちゃん
⑯芸能プロダクションSSKMSYK
⑰スナックのおねえさん
⑱版画家の柿坂万作

4月18日の木曜会参加メンバー表


日没を過ぎて、少しだけひんやりした空気が漂っていた4月18日の木曜会。この日は盛況であったため、テーブルの配置ごと各セクションに分かれての会話だったため、記録することはできない。する気もない。なので端的な報告書になるが、そこは我慢していただきたい。

ヒゲの男が19時前にコロマンサに行くと先週は木曜会を欠席したファラオがいる。「キミ、欠席の報告を冷泉にだけしておいて、僕には何も情報共有がなされてなかったね」と、早速ファラオに突っかかるヒゲの男。

「冷泉さんに伝えておけば拡散して全員周知になると考えたんですよ」と自称エジプトの王は弁明をするが、実際のところ冷泉は王の不在を全体には伝えていなかった。ただ、伝えたところで何も変わらないので伝えなかったのだろう。

10分後、冷泉もドンドンと階段をのぼり店内にやってくる。すぐその後でミドリさんもやって来て、持ち込みのお粥をスプーンですくって食べていた。誰が持ってきたのかわからないが奈良漬けとチーズがあり、それをその場の人たちは酒の肴にしているが、ヒゲの男は奈良漬けが食べられない。

万作が人数分の奈良漬けを切り分けたので、ヒゲの1人分が余る。皿の上に余った一切れの奈良漬けは、15分ほどそのまま置かれていたが、厨房の方からそれが欲しくてたまらない人間の視線が絶えず注がれている。熱い視線の大元はもちろん万作だ。はち切れんばかりにウズウズしている。

「うーん、これ一切れだけ残っとるんやけれど、誰か食べん?誰も要らんのやったら・・・、誰か食べん?」と執拗に聞いてくる。万作の問いかけに対して全員が特に反応を示さないが、「欲しいんやったら、さっさと万作さんが食べればいいのに」と心の中では全員共通のことを考えていたと思う。

「う~ん、欲しい人、じゃんけんしよか。これもゲームですやん、じゃんけんしよか」と木曜会を勝手にゲーム会に解釈してまで、万作は残った奈良漬けの所有権が誰にあるのかを明確にしたがる。冷泉が気だるそうに「万作さん、食べたらええんやないですか」と言い、やっとのこと万作は満面の笑みを浮かべて奈良漬けをひったくっていく。

次に、ウズウズしだしたのはヒゲの男だ。先ほどレコーディング(※後述)したばかりの音源を皆に聞いて欲しくてたまらない。まだ完成までには道のりが長いが、全貌が見えてきた今の段階のものを聴いて欲しいのだ。

「これからかける曲を聞いて欲しい」とヒゲの男は自身の想いを打ち明ける、来場者からは是非に是非にと好感触が得られたが、視聴するにあたり条件が1つだけヒゲの男より来場者へ伝えられた。視聴した後、絶対に『めちゃくちゃ良いじゃないですか!』としか感想を言えないという条件だ。

4分30秒の曲は店内に流れる。曲が流れ終わった後、コロマンサに来ていた全員が口を揃えてこういう。

めちゃくちゃ良いじゃないですか!

「そうでしょうそうでしょう、お前ら、良い表情してるよ」と安堵感と充足感の両方を胸中に漂わせながら、ヒゲの男はウイスキーのショットをくいっと飲み干す。

次の瞬間、奈良漬けで名調子となった万作が口を開く「う~ん、これは釈迦に説法かも知れませんが、ワシとしては【万作の言葉は記憶から抹消しました】がええかなと思いますねん。あくまで、ワシやったらですよ」と恐る恐るでルール違反をする。さすが万作である、変わらぬ男よ。

デザイナーの浦部君がやって来たので、仕事で彼に依頼しているカタログが非常に好評だということを会社のフジイさんから伝え聞いていたので、そのままに伝える。「どうせやったら、もっと大きい馬力帯のやりたいですね」と浦部君はカラカラと笑いながら前向きである。

そして久しぶりにコロマンサに現れたのは音楽スタジオを経営するブルーグラスの男だ。形容詞と名詞が長く面倒なので今後は彼のことを「やっち」と呼ぶことにする。ヒゲの男はやっちにも仕事を依頼させてもらっており、彼が音を監修したとある企業のCMは昨日アップされたばかりにも関わらず、すでに1万回再生を超えていた。

では、そもそもどうしてやっちが関わることになったのか。

ヒゲの男の会社にトミーという映像クリエイターがいる。映像に対して怖ろしいほどのこだわりを持つ男であり、本町のアンドレイ・タルコフスキーとの異名を持つ。ただ、巨匠タルコフスキー本人と同じで手が遅い。いつも自分がイメージしたものと実際にできたものとの乖離にストレスを抱えていて、悲劇的に嘆いていた。

アンドレイ・タルコフスキー(1932-1986)ソ連の映画監督。
「映像の詩人」と呼ばれ、人類の救済をテーマとした作品を制作

トミーは他人に対してディレクションするのが苦手であり、それは仕事上でも影響している。いつも映像に対しては満足ができても、それに付随する音の要素に不満があるのでストレスとなっていた。そこでヒゲの男が紹介したのが同じくこだわり屋のやっちだった。

このマッチアップは現時点において功を奏したと思う。

あるときトミーがボソッと「阿守さんと一緒にやってる人と自分も仕事を一緒にしてみたい」と社内の喫煙室で漏らしたことがあった。

ヒゲの男は早速、やっちにトミーの要求する品質がクリアできるスタジオ環境を整えてくれと懇願した。それを快諾してくれたやっちは数カ月前から自分のスタジオに投資して新しい機材を導入し、CMのMA(Multi Audio)ができる環境を整えてくれた。

スタジオの環境が整ったタイミングで、最初は小さい案件からコツコツやっていこうと話していた。しかし、なかなか手頃な仕事はやって来なかった。

一体どうなっているのかと様子を伺ったところ、トミーがどの案件をやっちと一緒にやろうかと、まごまごしているので「もう今抱えてるやつを何でもいいからさっさと渡しなよ」とヒゲの男はトミーにアドバイスした。

催促されて半狂乱になったトミーが叫びながらやっちに渡した案件は、社運を賭ける壮大な案件の方だった。ヒゲの男よりも度胸が据わっているというか、もうメチャクチャである。そこからはこだわり屋の2人の世界である、勝手にやりとりをして勝手に案件を成功させていたのは、さすがだ。

木曜会に戻る――。

CEO山脇が知人たち(冒頭リスト⑫~⑮)と一緒にコロマンサに立ち寄ってくれた。彼と冷泉は現在、共創してIT方面の事業に取り組んでいるとのことで、とにかく明るい未来を目指しているという。実際に次世代層の未来への不安や悩みは社会課題として存在する。いつの時代にも存在することだろうが、その時代によって解決方法は多様である。

特に日本においては、自身の未来に対して「不安」を感じる次世代層(18~24才)は46%であり約半数がそう感じている。一方、アメリカではわずか18%にとどまっている。 (2024年3月28日発表のデータ:YHより引用)

CEO山脇と冷泉のタッグが、この不安ばかりの世情において、解決の一助を考えていることは心強くもある。コロマンサのメインテーブルではそのような話しが2%くらいあり、残りの98%は書けないような内容のものばかりだったが。

店の一番奥のテーブルにはファラオをメインとしてボードゲームが行われている。アラタメ堂のご主人もやってきたが、最近ご主人はボードゲーム熱が冷めたのか、ちっとも参加しようとしない。何か新しい興味ができたのだろうか、わからない。アラタメ堂のご主人は年齢を重ねるごと謎に包まれていく稀有な男だ。

冷泉のいとこで、バレリーナの女は手土産に酒を持ってコロマンサにやってくる。ヒゲの男は、冷泉のいとこに冷泉のはとこが大阪にやって来るのはいつだったかを聞く。「5月10日!」と冷泉のいとこは嬉しそうに答えるが、冷泉は無反応に近いリアクションだった。冷泉のはとこの名前は一度聞くと忘れられない名前なのだ。

店の厨房辺りの席では、芸能プロダクションのSSKMAYKとバズらせ屋のコースケ君、そしていつの間にか来店していたスナックのおねえさんが、SNSの活用術について意見交換をしていた。

数年前まで、コロマンサに集ってそこから仕事が生まれるという感覚を持っていなかった。しかし、当時から冷泉はそういう動きをしており、ヒゲの男は彼からそのノウハウを学んだのだ。今、コロマンサは人と人を繋げることで大いに役立っている。そして仕事に溢れている。

あの頃のハイタッチ加藤利彦に改めてお礼を言いたい。それまでハイタッチというコミュニケーション方法をヒゲの男は知らなかったのだ。

さて、木曜会の終盤は凄まじいことになった。SSKMAYKが冷泉と殴り合いをはじめ、冷泉に殴られたSSKMAYKは椅子まで吹っ飛び、コロマンサの椅子は見事なまでに破壊された。

現場からは以上です。次回は4月25日に開催いたします。

番外編として4月23日(火)にアラタメ堂主催の火曜会が正雀で行われる。冷泉はこの日は都合があわないので不参加。

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《番外編》

レコーディング週間だったので、レコーディング後記として音楽家たちとの対話や現場での新発見など書こうと考えていたが、まだ完成もしていないのに書くべき段階ではないと思い直して自重いたします。


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