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今の自分にフィットした「日常」の服に出会う

今週末は人と会う予定をあえて入れず、自分のためだけの休日を過ごしていました。
ミュージカルの本番が終わって3週間が経ち、やっとスケジュール的にも気持ち的にも落ち着いてきて(仕事は相変わらず忙しいけれど)、ここ半年くらいは得られなかった余白を楽しむ余裕が出てきています。
部屋も綺麗になったし、自炊もできたし、QOLが爆上がりしてます。笑

さて、秋服を探すにあたってコンセプトのキーワードを棚卸したところ、これまでには候補に入ることさえなかった「日常」という単語が浮上しまして。
日常をイメージした服といえばナチュラル系・カジュアル系が思い浮かぶのですが、ナチュラルもカジュアルも自分が着る服としては好みではありません。
ブランドが自分に合うか以前に、「日常」というキーワードが本当に自分に合っているのかも確信が持てない状態。

そこでまずは、キーワード「日常」をファッションに落とし込むとどうなるのかを知るため、コンセプトに「日常」と入っているブランドを社会科見学のつもりで見に行くことに。
……そのはずが、早くも素敵な服が見つかってしまったので、出会いから今に至るまでの顛末をここに記します。


sacaiとの出会い

日常をコンセプトにしているブランドってどこなんだろう。
キーワード「日常」に合う服を探すため、「日常 ブランドコンセプト」で検索してみたところ、上位に出てきたのがsacai(以下、カタカナで表記します)でした。

サカイというブランド名は以前から知っていましたが、どんな服を出しているのかをちゃんと見たことはありませんでした。
世界的にも知られている日本のブランドはだいたいカジュアル+モード系という雑な固定観念があり、サカイもその括りに入るブランドの一つ。
テイストが自分のイメージとは合わなそうだし、気軽に買って着られるお値段ではないはずと、これまで試着候補として見ることはありませんでした。

しかし検索結果から見つけた公式サイトの文章を読んで、俄然興味が湧いてきたのです。

自身をとりまく日々の生活や、周囲の人々を観察することからインスピレーションを受け作られるコレクションは、ベーシックでクラシカルなアイテムを崩し変化させながら、独特のエレガンスを放つ。ある特定の機会だけではなく、日々の様々なシーンにおいて成立する「日常の上に成り立つデザイン」をコンセプトに置く。

About | sacai Official Store サカイ オフィシャル
(太字部分は筆者にて強調)

「日常」をコンセプトにしているブランドが出す服ってどんなのだろう。

日常をイメージした服で真っ先に思い浮かぶナチュラル・カジュアルは、どちらも自分が着る服のテイストとしては好みではありません。
ほっこりした服は着たくないのに、ほっこりしていない見た目で日常を表現する服がどんなものか、そもそもそんな服は本当に存在するのか。
解像度があまりに低すぎる。

サカイなら少なくとも、それを着てほっこりすることはない気がします。
とはいえ、実際に見てみないことには本当に自分に合うのか分かりません。
どうせなら品ぞろえがよくブランドの世界観を堪能できる路面店に行ってみようと、南青山のお店に突撃することに決めました。

初めての試着

南青山の路面店は表参道駅から歩いて数分。
打ちっ放しのシンプルな壁やコンクリートの階段が都会的な印象で、段差や壁で空間が部屋のように細かく区切られており、まるでデザイナーズマンションのような洗練された場所でした。

建築家には、自然と人工物、外と中、新と旧など、相反する要素の融合を得意とする藤本壮介氏を起用。sacaiのブランドビジョンを反映するだけではなく、東京の都市としてのダイナミズム、東京のカルチャーと調和することをストアコンセプトとしている。

About | sacai Official Store サカイ オフィシャル

そんな空間でハンガーラックにかかっている服たちは、カジュアルでありながらエレガントであり、日常に馴染みつつも非凡なデザイン。
個人的に苦手とするしっかりめの生地が多く、ぱっと見の印象で似合うかは判断がつきづらいけど、裏を返せば普段使いしても安心な耐久性のある服が多そうということでもある。
自分に似合うかはさておき、良質で美しいものが揃っていることが服の存在感から伝わってきて、ワクワクが止まらない。

せっかく路面店にまで来たからには、一着も似合わない結果になったとしてもいい、とにかく試着はしたい。
売り場に出ている服の中から気になるものを選び、試着をさせてもらいました。

試着室で実際に着てみて、この服は日常に馴染みつつも非凡なデザインだと改めて実感しました。
うまく言葉にできないけどなんかいい、すごくいい。
特に気に入ったのは黒いシャツで、自分にとって似合いづらい要素である張りのある生地も、シャツの襟も、やはりパターンが良いからなのでしょうか、シルエットが美しく全然気になりません。

今まで対象外だと思ってごめん、最高だわ。

しかし問題はお値段。
値札を見て正直思ったほどは高くなかったのでほっとしたけど、冷静に考えたらシャツにこれだけ出すか?と思うくらいのお値段です。
自問自答ガールズなら力強く背中を押してくれるでしょうが、ファッションフリークではない、普通の金銭感覚を持つ人なら引いてしまうことでしょう。
迷う要素がお金だけなら買い、とは思っているけれど、さすがに即決はできない。

店員さんにいつ頃まで置いていそうか聞いたところ、人気でどんどん出てしまっているので、早めがおすすめとのこと。

1週間考えて、気持ちが変わらなければ迎えに行こう。
品番を控えてもらい、その日は店を後にしました。

出会ってしまうときってあるよね

さて、1週間が過ぎても気持ちは変わらなかったので、買う覚悟で再び南青山の路面店に行きました。
とはいえ高い買い物なので、念には念を入れてもう一度試着させてもらうことに。

(……うん、やっぱり良い。)

「こちらをお願いします」


お会計をしているときに店員さんが教えてくれたのですが、前回試着した時点で店頭に出て1週間くらいの新作だったにも関わらず、このサイズは私が買ったものがラスト1点だったそうです。

もしかしたらこの服は、あと1日行くのが遅かったら売り切れてしまっていたかもしれない。
もしかしたら、私に買われるために1週間待っていてくれたのかもしれない。

ファッションアイテムって大量生産されないからこそタイミングが大事で、繋がるときはとんとん拍子で進んでいくし、ダメな時はびっくりするほどすぐに無くなって、再び手に取ることさえ叶わなかったりもする。
だからこそ、今回はご縁があったのだと嬉しくなりました。

そういえば、以前渋谷で見かけて気になったけどnot for meかもと試着する勇気が出なかったブランド、実はサカイだったことに気づきました。
ある時は圏外だと思っていたブランドも、時が経つとしっくりくることがある。
自分自身が変化して内面がブランドと合ってくることもあるし、たまたまそのシーズンに出ていた服との相性がよく、似合うようになる場合もある。

これが欲しい!と思えるような服って、事前の計画など関係なく突然出会ってしまうものだ。
「出会ってしまう」服は、ものが良いだけあって高価なことが多く、即決はできない。
今回のように考える期間を設けて一旦冷静になったり、他に似たような服を試着して本当にこれでいいのか確かめてみたりもする。
それでも最終的には、直感的にこれだと思った最初の服に決めることが多い。
じゃあ冷静になって比較検討するのは無駄な時間なのかというとそんなことはなくて、真剣に考えたからこそ自分の直感を信じ、自分の選択が正しいと思える。
計画的に買った服より直感に従って買った服の方が、本気で気に入るので結果的に長く着られることが多かったりする。

出会うときは出会ってしまうよねと頭の中で考えていたら、「服」を「人」に置き換えてもだいたい成り立ちそうだと思い、服選びって恋だなと思ったりしました。笑

開封の儀

家に帰ってひととおりやることをやり、部屋を片付けてから開封の儀を執り行いました。
開封する前に2023AWコレクションの動画を見て、コレクションに同じ型の服が出ていることを確認し、また嬉しい気持ちになる。
コレクションの動画で流れていた曲をかけて、雰囲気を盛り上げてみました。

買った服は、梱包によく使われているつるっとした薄い白い紙で包まれた状態で、紙袋に入っている。
梱包用の紙は銀色の太いテープで留められていて、その無骨な感じがお店の雰囲気ともぴったりだった。
コレクションをやっているようなブランドって、ちょっとした包装やカードの紙の質感にさえもブランドの世界観を徹底して出してくるのが好き。

包み紙を取っていよいよシャツが目の前に姿を現す。
やっぱり素敵。何度でも褒めちゃう。

さっと羽織ってみると、ボトムスが部屋着なのに、なぜかめっちゃ様になって見えました。
クローゼットにしまうつもりで事前に場所を空けていたのですが、片づけるのがもったいなくなり、部屋の見えるところに飾って時々見てはにやにやしています。

秋物のトップスは断服式でほとんど手放してしまっており、今回買ったシャツを入れても3枚しかない状態(さすがに減らしすぎた気がする)。
だからこのシャツをたくさん着るしかありません。
たくさん着ればお高い服も実質0円理論で、なにより素敵な服をいろんな人に見てほしいので(笑)、これからいろんな場所に着て行こうと思います。

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