あもう

あもうです。心療内科専門医。 心療内科を世に広く知っていただくために、小説を書いていま…

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あもうです。心療内科専門医。 心療内科を世に広く知っていただくために、小説を書いています。 趣味は読書(ミステリ多め、古典ラノベ問わず雑食)。 心療内科文芸部、部員。

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心療内科の魅力を伝えるために、心療内科の医師・臨床心理士・関係者が、心療内科を舞台に小説を書いてみた。

 皆様、大変長らくお待たせいたしました。(形式美)  世の中で「医療モノ」は数あれど、実際に心療内科を舞台にしたものはごく僅か。それも、蓋を開けると心療内科領域から見ると「これは……ちょっとどうかな」(実際、某作品に関しては日本心療内科学会が公式に文句を言った経過もあったり)というものも混ざっている現在。 「何とかならないっすかね……」  と年始の飲み会でボヤいた挙句、 「……いっそ、ワシらで書くか」  と企画が立ち上がったのが2020年1月。  夏を越えて、ようやく発表さ

    • 【終末期だけの医療では】 「緩和ケア」ってナニかしら? 【ありません】

       「ナニかしら」シリーズ、第3弾。  もっと早くにこれを書くべきだったのかもしれないと思った、本日。今日より早い日はないので、一気呵成に書き上げる所存。 ※ちなみにこれを書いているあもうの経歴は、  初期研修→心療内科後期研修→緩和ケア病棟にて緩和ケア科医師として研修→心療内科専門医(緩和ケアチーム所属、日本サイコオンコロジー(精神腫瘍学/がん患者さんのこころのケア)学会登録精神腫瘍医)になります。  本日まず知っていただきたいのは、 「緩和ケア/医療は、『がんと診断された

      • 『夏』の人を診て、人生の四季を知る【N教授とのおもいで】

         このポストは、胃瘻や「DNARの意味/意義」といったTLの流れに投じたものだったけれど、それとは角度の異なる話をしたい。 (※ 患者さんについては文意を損ねない範囲で、改変を加えています)  丈(仮名)さん、70代男性。  心療内科研修に入って間もなく、私が受け持った患者さんのひとりだ。  丈さんの主訴は「下肢の痛み、脱力感、痺れ、全身の筋肉痛」。この主訴とは裏腹に、実際に丈さんは介助なく数㎞を自分で歩く。公園で懸垂するのが日課で、他の同年代の男性より闊達と生活している。

        • 口裂け女さんに、心療内科医は何を伝えればよかったか。

           どうも、「何がバズるのかまったく読めない心療内科医」あもうです。  何げない夢が、多少衆目を集めたようなので、少し掘り下げてみます。  この夢では、バーカウンターに口裂け女さんと私が一緒にいて、その際「私、綺麗?」と尋ねられました。特に診察室でもありませんし、「心療内科医」というよりも「あもう自身」として上記のごとく返答した次第です。  けれど、ポストの後半に示す通り、心療内科医としてこの応答は今ひとつです。(ほぼ間違いなく上級医から、「そりゃ、○○○〇だろ」と突っ込み

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        心療内科の魅力を伝えるために、心療内科の医師・臨床心理士・関係者が、心療内科を舞台に小説を書いてみた。

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        • 『夏』の人を診て、人生の四季を知る【N教授とのおもいで】

        • 口裂け女さんに、心療内科医は何を伝えればよかったか。

          或る28歳女性、Aさんの日記

           実験的な試みとして、ある女性の日記に、お返事を書いてみようと思い立ちました。  今回は、Aさんの日記のみ掲載。  後日、お返事篇を掲載予定です。 【9月◯日】  なんだか最近、しんどいことがいっぱいあって、それをどうしていいのかよくわかんなくなって、それがここに来て仕事でいっぱいいっぱいになって、更にプライベートでべしょっとへこんで。  半泣きのまま逃げ込んだ先が、  ひとりカラオケ。  当直明け、3時間ノンストップ大絶唱。  なにやってんだか、私…  なにがし

          或る28歳女性、Aさんの日記

          木崎喜代子の場合 Ⅹ【心療内科の魅力を伝えるために、心療内科の医師・臨床心理士・関係者が、心療内科を舞台に小説を書いてみた。⑩】

          #10 (8回目)  『もし出られない理由が、息子さんにもわからないのだとしたら、木崎さんはどんな言葉をかけますか?』  まるで謎かけのような宿題を前に、喜代子は戸惑うしかなかった。  閉じこもる以上は、何か理由があると思っていた。今でも頭痛がするのか、めまいがするのか、それとも仕事に行くのがつらかったのか。そうでなければ、いつまでも部屋に留まったりするだろうか。「甘えている」と夫は断じたが、きっとそれ以外の理由があるのだと喜代子は信じていた。  けれど、三野原は「息子さ

          木崎喜代子の場合 Ⅹ【心療内科の魅力を伝えるために、心療内科の医師・臨床心理士・関係者が、心療内科を舞台に小説を書いてみた。⑩】

          馬鹿正直な心療内科医が、何を起こしたかという話 ③

          前回はこちら→ ② 最初からお読みになる方はこちら→ ① 「Zさんは、何か先生に伝えたいことがあると思うよ」  カンファレンスで意見をもらった私は、いそいそと夕方の病棟に向かった。そこで、ちょうどZさんに行きあった。 「あ、先生。ちょうど良かった。ちょっとお願いがあって」  Zさんは嬉しそうにこちらにやってきた。 「実は昼に散歩してたら、遠い親戚のおじに久しぶりに会って。検査とか、これからの話を一緒に聞いてくれるって言うんだ。もう一度説明してもらえないだろうか。明日の午

          馬鹿正直な心療内科医が、何を起こしたかという話 ③

          馬鹿正直な心療内科医が、何を起こしたかという話 ②

           引っ張るほどの話でもないので、サクサク更新。  心療内科の研修は、外来については初診の陪席、実際の診療については入院患者を担当することから始まる。そして、毎週サマリーを仕上げ、数人の小カンファレンスで治療方針を検討する。  そして、一番の肝は患者さんから許可を得て、 面接を録画するビデオカンファレンスだ。初学者の頃は、このビデオをみながら面接の逐語記録を起こす。一方で教授が直々に時間をとり、他の研修医も交えた場でビデオをみつつ指導してくださる。  これを、「めっちゃ贅沢…

          馬鹿正直な心療内科医が、何を起こしたかという話 ②

          馬鹿正直な心療内科医が、何を起こしたかという話 ①

           本当は小説の続きとか、大事なメールの返信とかあるんだけど、実は今豚の角煮を下茹でしているもので、台所を離れられない。  そんなところで真面目な話も考えにくいので、私が若き日にやらかした愚かな話をしようと思う。 ※ 患者さんの疾患については、今回まったく触れません。  医者になって3年目の出来事だったと記憶している。初期研修を終え、心療内科医としての第一歩を踏み出した私だが、まぁ、苦労した。  心療内科研修の真髄は、 「自分がどういう性格傾向で、どういった思想、偏見をも

          馬鹿正直な心療内科医が、何を起こしたかという話 ①

          「サイコオンコロジー」ってナニかしら?

           「ナニかしら」シリーズ、第2弾。  どうも、「夏休みが終わっても、宿題をしていた派」心療内科医あもうです。  課題の存在を登校日に知ったりしてたよね……そんな有り様でも頑張ったら医者になれたりするので、世の小学生は参考にしてください。  今回は「サイコオンコロジー」について、お話ししようと思います。 (読者は、一般の方を想定しています。医療者の方は、またコメント欄で質問を受け付けます)  遡ること約10年前。大学の同窓会が日本サイコオンコロジー学会の総会だったか研修会だ

          「サイコオンコロジー」ってナニかしら?

          「心身症」って、ナニかしら?

           どうも、「世の人が何に興味をもつか、まったく読めない」心療内科医あもうです。  直近は、カクレウオに大興奮し、ワニを捌くことへのカッコよさを画像付きで力説したらフォロワーさん減りました。(Twitterあらため、X下手くそ芸人)  今回は「心身症」について、お話ししようと思います。  よく知らない言葉を調べようと思った時に、人はどうするか。  私はインターネット老人会所属なので、10代からネットスラングでこう言われて育ちました。  「ggrks」 (「わからないことは、

          「心身症」って、ナニかしら?

          「無自覚なキャバクラ療法」を繰り出していた心療内科研修医が、気づきを得る話【後編】

          前編はこちらから↓  幸か不幸か、前編を書きあげた後に、当時の日記が出てきた。おかげさまで記憶が鮮明になったし、私の中でも良い方向に記憶が修正できた。 (まぁ、思い出さなくていいことも、思い出したけども)  研修施設では、カンファレンスが二段構えになっていた。具体的には4、5人程度の小規模カンファレンスで治療方針を確認 → 難しい症例は全員参加のケースカンファレンスに提出 という流れだ。  小規模カンファは、上級医、臨床心理士、研修医、心理研修生のチームになっていて、そ

          「無自覚なキャバクラ療法」を繰り出していた心療内科研修医が、気づきを得る話【後編】

          「無自覚なキャバクラ療法」を繰り出していた心療内科研修医が、気づきを得る話【前編】

           また、心療内科研修時代のおバカ案件が衆目を集めてしまった。  更に私を労うリプライに対し、実際に指導医から受けた台詞を付け加えたことで、若干ご心配と誤解を産んだ気配も感じている。  しかしこの一連のやりとりは、ユーモアを絡めながらも至極心身医学として必要な遣り取りであったことを、今回はお伝えしたい。 (まあ、きっかけは医者としても心療内科医としても未熟だった私が、大ボケをかましたことであることは間違いないです) ※患者さんの個人情報に関しましては、「機能性腹痛の高齢男

          「無自覚なキャバクラ療法」を繰り出していた心療内科研修医が、気づきを得る話【前編】

          「この痛みが治らないのなら、それは」(後編)

          「検査は受けたくありません」  CTでの異常陰影を告げた私に、Aさんはきっぱり言い切った。 「もう今まで痛みに十分悩まされてきた」 「これが原因で死ねるなら本望。手術したり、治療をしようとは思えない」  1年近く外来で向かい合ってきた私として、この反応は予想の範囲内ではあった。 「その気持ちはわかります。どんな治療方針を選ぶかは、Aさんの権利です。積極的に治療しないにしても、この腫瘍が良いものか悪いものかは診てもらったらどうですか?」  正直、画像上は初期に見え、顛

          「この痛みが治らないのなら、それは」(後編)

          「この痛みが治らないのなら、それは」(中編)

          前編はこちら ↓  Aさんは、予約通り私の外来にお越しになった。  長年の経過をカルテで読み込んでいた私は、勝手にひどくとっつきにくい人物を想像していた。しかし、現れたのはこざっぱりとした服装の初老女性で、白髪を短く刈り込み、化粧っ気のない風貌は「街角の小間物屋のおばあちゃん」といった風情だ。そのことに少し安堵を覚えながら、2度目の「心療内科初診」を開始した。   診察自体はAさんの見た目のように穏やかにとはいかなかった。  明け透けかもしれないが私はその日のカルテの(A

          「この痛みが治らないのなら、それは」(中編)

          「この痛みが治らないのなら、それは」(前編)

           先日、NEJMのエッセイを引用したツイートが目に留まった。  早速当該記事を読んだ私は、以下のように呟いた。  NEJMが読める環境にいる皆様には、是非記事を読んでいただきたい。(アカウントを作ると、毎月2記事だけ無料で読めます)  読めない、もしくは英文を読むのが面倒な方にかいつまんで申し上げると、原因不明の慢性疼痛と全身倦怠感に数年に苦しんだ女性患者さん(Ms.P)についてのエッセイだ。筆者はその主治医をつとめた、内科医師。立場が上の先生に無礼を承知で申し上げると、

          「この痛みが治らないのなら、それは」(前編)