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映画「JUDY(ジュディ)」ー「オズの魔法使」の少女の晩年

(タイトル写真はwanerbros.co.jp より転載)

ジュディ・ガーランドと言えば誰もが知っているあの「オズの魔法使」(Wizard of Oz)  の少女ドロシーである。1939年制作の古い映画なのにうちの娘たちは繰り返し繰り返し見ていた。“Follow the yellow brick road“の歌がお気に入りでよく歌っていた。

カンザスに住む少女がある日竜巻に巻き込まれて吹き飛ばされ、オズ王国に辿り着く。家に帰してもらおうと魔女にお願いに行くために歩いたのが、その「黄色いレンガの道」である。でも最も有名なのは、「虹の彼方に」(“Over the Rainbow”)だろう。「虹の彼方に夢を叶えてくれる国がある🎵〜」
(画像はYouTubeから転載)

その途中で出会うのが、カカシとブリキの木こりとライオン。それぞれ望みを叶えてもらうために共に旅をするという話である。

「Judy」はその少女の晩年を描いた映画である。彼女は薬物依存で47歳でこの世を去っている。たった13歳でこの映画の主演を務め、その後はハリウッドの映画会社の厳しい管理下に置かれ、食事制限、行動制限を受け、食事の代わりに薬物を与えられ、好きなものも食べられず、好きなこともできず、徐々に身も心もボロボロにされていく。5度の結婚で子供が3人いる。ライザ・ミネリは2番めの夫との間にできた娘である

最近になって#MeTooなどで明らかになってきたが、ハリウッドはひどいところであったようだ。女優へのセクハラは当たり前のことで、誰もが役を手に入れるために受け入れざるを得なかったようだ(casting couchと言うらしい)。あのマリリン・モンローなどもその犠牲者である。彼女はセクシー女優として売り込むために作り上げられた虚像だったようだ。

晩年のジュディは、薬物依存の後遺症で感情が不安定で挙動不審になり、仕事がうまくいかず、アメリカでの活動の場がなくなる。ロンドンの舞台に立つことを薦められるが、それは2人の幼な子と離れて暮らすことを意味した。だが彼女は不承不承ロンドン行きを受け入れる。

ひとたびステージに立てばその歌唱力は圧巻であり、観客を魅了した。でもすでに身も心もボロボロの彼女は、またアメリカのステージでやったことを繰り返す。

契約を打ち切られたその日、自分の代役を務めることになっていた歌手に最後だから歌わせてほしいと懇願しステージに立つ。最後に歌った「虹の彼方に」
は、感極まって最後まで歌えなくなってしまう。その時、彼女の大ファンであったゲイの2人が続きを歌い始める。それにつられ観客全員が立ち上がりそれに唱和する形で映画は終わる。(画像はYouTubeから転載)

華々しい成功の影で、ハリウッドに身を滅ぼされた晩年を演じたのは、レネー・ゼルウィガー。あの「ブリジット・ジョーンズの日記」の主演女優だ。彼女は特訓を受けて吹き替えなしでジュディの歌を歌っているそうだ。晩年の惨めなくらい精神的に追い詰められたジュディを哀感たっぷりに演じた。この役で彼女はアカデミー主演女優賞を受賞している。

映画の最後に描かれていた言葉ー

“A heart is not judged by how much you love; but by how much you are loved” (心はどれだけ愛したかではなく、どれだけ愛されたかが大切だ)
ーThe Wizard of Oz「オズの魔法使」より

(余談)
ジュディは同性愛者に対して好意的だった著名人で、彼女の死は彼らに衝撃を与えたそうである。そのため彼らのシンボルマークは、「虹の彼方に」から取った「虹」なのだとか。真偽のほどは分かりません。

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