公園を歩いていたらたくさんの桑の実が落ちていた。ああ、またこの季節がやってきたのか。桑の実を見ると、心の片隅がうずいて、ちょっと切ない気分になる。

我が家で飼っていた「ルー」というラブラドール犬を思い出してしまうからだ。

彼はこの桑の実が大好きだった。桑の実を発見するや脱兎のごとく駆け出して、ものすごい勢いで食べ始める。「シュポ、シュポ、シュポ」と吸い込むように食べる。アリクイもこんな風に蟻を食べるのだろうか？まるで掃除機で吸い取っているようだ。

一旦食べ始めたらもう止まらない。「帰るよ」と言おうが、手綱を引っ張ろうがびくとも動かない。

桑の実がmulberry (マルベリー)なんていう洒落た名前だって知ってました？どの国にもある木の実のようです。しかも、今日調べていて初めて分かったのですが、この桑の実、子犬や老犬の薬膳として食されているのだとか。腎機能をサポートするので腎機能を患っていたり泌尿器系疾患のある犬は、積極的に摂取した方がいいのだとか。

「知らなかった‼️」ルーは、晩年泌尿器系を患っていたので、この桑の実を食べることはいいことだったのだ(彼は本能的に知っていたのかしら⁈)

夫が海外赴任している間は入退院を繰り返し、すっかりやせ細ってしまったが、なんとか持ちこたえていた。夫が帰国した日、クリニックに迎えに行って引き取った。

翌朝階下に降りて行くと、ルーは亡くなっていた。「まだ大丈夫」と思っていた私が悪かった。「ごめんね。一人で逝かせてしまって」「見守ってあげられなくて。どんなにか寂しかっただろうに。人が大好きな犬だったから本当に申し訳けなくて、泣けてくる」

そして、しみじみ思う。彼は一番好きだった夫が帰ってくるのをずっと待っていたのではないか、と。桑の実が落ちる季節が来るたびに、ルーを思い出し切なくなる。