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ミステリードラマはお好き?(続)ー”Why didn’t they ask Evans?”(なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?)ーネタバレありー

(タイトル写真はミステリーチャンネルから転載)

このミステリーはアガサ・クリスティの名作の一つで、過去に何度も映像化されている。今回のリメイクに特に興味を持ったのは、あの”Dr. House”(ドクター・ハウス、アメリカの医療ドラマ)の主人公ハウスを演じたヒュー・ローリーが脚本、監督、出演と知ったからである。

「ハウス」は人付き合いが悪く辛辣で人を不快にさせる人物だが天才医師である。そんな主人公と彼のチームが未知の病を解明し治療にこぎつけるまでのドキドキハラハラのこのドラマが好きだった(イギリス人である彼が話すAmerican English にも称賛が集まった。「ブリジット・ジョーンズの日記」で、アメリカ人のレニー・ゼルウィガーが話すBritish Englishのように)

タイトル写真は1930年代を思い起こさせる雰囲気を醸し出しているが、製作は2022年である。ヒュー・ローリーは、大のアガサ・クリスティファンだそうで、インタビューでは以下のように述べている。

「彼女は大なり小なり犯罪小説の原型を築いた人で、その原型は今でも健在だからね。殺人ミステリーの可能性やあり方、本質、鉄則を定義したのはアガサ・クリスティーだから、犯罪小説家は誰もが彼女に借りがあると言える。ミステリーは鉄則に従ってこそ、読者を満足させられる。クリスティーはごまかさない。僕はそんな彼女の部分に今も昔も惹かれてるんだ」(mystery.co.jpから引用)

ということで、この作品も今までの作品同様、人物や風景、服装、室内などのディテールにこだわった描写で重厚感あふれる作品に仕上がっているが、ちょっと一味違うと感じた。レアなクラシックカーも目玉の一つでもあるようだ。

物語の概要は、崖の下に転落した男が死ぬ間際に言った「なぜエヴァンズに頼まなかったのか」という言葉と「エヴァンズって一体誰?」という二つの謎を追って展開するのだが、要は詐欺事件がベースにある殺人事件である。登場人物が大勢出てくるのでその関係性をしっかり把握する必要がある(私は混乱した)

この謎解きをするのが、伯爵令嬢とその幼馴染で牧師の息子。二人の関係がいい。お互い気がありながら距離を保っている。彼女は勇敢で大胆で聡明で優しい。どちらかというと彼女の方が積極的で、彼の方は押され気味。でも彼の実直で誠実な人柄が伝わってくる。

私が「わっと」鷲掴みにされたセリフがある。物語の始め、長い間会っていなかった2人が出会うシーン。彼女は伯爵令嬢で” Lady Frances “と敬称付きで呼ばれている。かたや幼馴染とは言え牧師の息子で海軍を除隊して無職の身の彼。彼女は、見ている側にちょっと鼻持ちならない嫌な女なのかなと思わせるような雰囲気で登場。

そこで出会ったしまった彼はちょっと思いあぐねるが思い切って声をかける。子供の時に呼んでいた彼女の名前で。

“Hallo, Frankie !”

すると彼女は、硬い表情で冷たく言い放つ。

“I beg your pardon “(日本語訳では「馴れ馴れしい」)

一瞬、その場が凍りつく。彼は呆然として固まる。そのあとすぐに、彼女は大笑いして続ける。

“I got you Bobby Jones”(「引っかかったわね」)

なんとも可愛いイタズラ。その後も彼女のペースで話は進む。彼女は自分の出自が彼より上であることで、彼が臆する態度を取ることに対して腹を立てる。彼女はそんなことにこだわる女性ではないのだ。1930年代の時代背景を想定したらかなり開明的な人物として描かれている。

           “I beg your pardon “😱

「なぜエヴァンズに頼まなかったのか」は、そんなことをしたら詐欺師たちの企みがバレてしまうから。崖の下で死んだ男はそのことに気づいたために殺されてしまったのだ。そしてエヴァンズは、とっても身近にいた人だった。灯台下暗しという結末。

最後はこれらの詐欺師たちが捕まり、主人公の二人はめでたく結婚ということで話は終わる。想定内だったけど・・・。

ところでドラマのなかのトリビュアルなことを一つ。「敬礼」について。英国軍のルールだろうが、海軍は手のひらを相手に向けずに行う。これは相手に手のひらを向けて行う陸軍・空軍とは違うのだとか。なぜなら、海軍の軍人は船上で行う作業のために手が汚れているから、相手にそれを見せないためなのだそうだ。

up.quora.comから転載





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