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私の人生を1000円でお会計した話

独りで過ごす夜が苦手だ。雨の日なら尚更。いつもは居るはずのシェアメイト達が留守にしていておらず、孤独死確定しそうな夜だったので、近所の友人を誘って回転寿司に出かけた。

近頃の回転寿司は予約注文したネタしか回ってこない。寿司が到着したことをお知らせするサインがあちこちでピーピーと鳴り響いて、なんだか世知辛いなと思った。それでも、回転寿司というアクティビティは私の心を躍らせる。

薄っぺらい寿司をつまみながら、友人と最近の近況報告大会をする。といっても、この年上の友人と私はひと回りも歳が離れているため、近況報告会はやがて人生相談会の様相を呈してくる。いつでもなんでも相談できる相手が近くにいるのはありがたい。悩んでいる仕事のこと、今後の進路のこと、ままならない恋愛のこと、時折共感され、時折檄を入れられつつも、人生の先輩から貴重なアドバイスをもらった。

帰り際の会計で財布が見つからずもたついていたら、「いいよ今日は俺の驕りで、その代わり人生頑張ってな」と言ったあとに「頑張って、ていうのは、落ち込んだりせずにみくるらしく生きてって、てこと」と友人は言い直した。彼は言葉の選び方が誠実かつ間違えたと思ったときはちゃんと言い直すところが好きだし信用している。

私は勢いに任せて「うん、わかった!」と元気よく返事したあとに、すぐうわっとなった。友人もすぐに気がついたようでにやにや笑っていた。私は回転寿司にたったの1000円で身売りしてしまった。自分らしく元気に生きていくという小さくて大きな約束。でもこんな約束が思わず挫けそうなとき私を支えてくれることを私は知っている。

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