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#28 漢字1文字ワールド 後編

最近、4冊ほど本を読んだ。

幼い頃は絵本が大好きで
小中学生の頃──"名前"という趣味に出会うまでは、ほんとうに毎日のように読書をしていた。

子ども向けの小説みたいなものも通ったが、
主に読んでいたのはミステリーだ。
夜寝る前、その小説に書かれた人の殺し方をリアルに想像してしまって目が冴えたりするのに、懲りずにミステリーばかり読み漁っていた。

その後、名前集めが趣味になったあたりの時期から一気に本を読まなくなり、
誰かが作ったフィクションよりもノンフィクションやドキュメンタリーが好きになった。

今もドキュメンタリー番組を観ることや
歴史的な事件のWikipediaなんかを読むことが大好きで、名前の次くらいに位置する趣味だ。

でも、久々に興味を持った小説を読んで、
やはり文章を書くことを生業にしている人の言葉というのは凄いな、と思った。

感情が動くさまや登場人物が見ている景色や時間の流れや、とにかくそれらの表現が凄い。
よくもまあこんなに繊細に、いちばんの言葉選びができるなと呆れてしまうくらいに。

私は昔からずっと文章を書くことが好きで、
自分で物語を書いたこともあったし小説家に憧れた時期もあったが、ホンモノはやっぱすげぇのだ。



……今、ふと思ったのだが、
名前が好きということと、文章を書くのが好きということを、どちらもやれているこのnoteって、私にとってはだいぶアツいのではないか。

趣味の話をいっぱいできて良い、とばかり思っていたが、いくらでも自由に書くことができる、という良さもあったのだ。

あまり目を向けていなかったが、
よく考えたらこの大ショート動画時代、こんなにだらだら好きなだけ文章が書ける場所というのはかなり貴重だ。

そうか、じゃあ、ユーザーとして私はもっと、noteを大切にしなければ。
いつもありがとうとかも、ちゃんと言葉にして伝えた方がいいかもしれない。




今日は、タイトルに"後編"とあるように
前回(#27)の続きを書いていこうと思う。

フォーカスするのは
"漢字に外国語の読みをあてた名前"

私の名前コレクションから集めた53種類
漢字を日本語ではない他の国の言葉で読ませる名前のうち、前回は⑩外国語読みに分類できるもの33種類を紹介した。

今回は残りの20種類
それではさっそく、行ってみよう。




漢字1文字ネーム ⑩外国語読み+①ぶった切り

まず、前回と同じ⑩外国語読みをした上で
それを①ぶった切りするという、二段構えの名前から。


▼虹 (れい)

⚫︎れい…………レインボー rainbow【英語】

📝こちらは女の子の名前。
レインボーの「レイ」だけをとって読ませるこのパターンは漢字2文字の名前にも見られ、例として「凪(れいな)」などがある。



▼聖 (せいん)

⚫︎せいん………セインsaint【英語】

📝 男子名で確認できた。
「セイント」は、キリスト教における聖人を意味する言葉である。



▼獅 (らい)

⚫︎らい…………ライオン lion【英語】

📝男の子の名前に見られた。
前回の記事では「獅(れお)」という名前を紹介したが、あちらはラテン語、こちらは英語(のぶった切り)である。



▼輝 (らい)
▼煌 (らい)

⚫︎らい…………ライlight【英語】

📝どちらも男子名。
「らい」という響きは人気が高いのだが、「来」や「頼」などの漢字に留まらず、このような読ませ方をする名前は決して少なくない。
漢字2文字では「毅(らいき)」や「也(らいや)」などの例がある。



漢字1文字ネーム ⑨イメージ読み

続いては、漢字を意味からの連想やイメージで読む、⑨イメージ読みの名前たち。


▼碧 (あくあ)
▼海 (あくあ)

⚫︎あくあ………アクア aqua【ラテン語】

📝碧(青)や海など水を連想する漢字を、水を意味する「アクア」と読ませている。
かなりわかりやすい部類の⑨イメージ読みと言えるだろう。



▼楽 (えでん)

⚫︎えでん………エデン Eden【ヘブライ語】

📝「エデン」は旧約聖書の創世記に記される、アダムとイブが暮らしていた楽園のことだ。
ヘブライ語では元々、「歓喜」とか「喜び」といった意味だそう。
ちなみに、「楽園(えでん)」という名前も存在を確認している。



▼彪 (たいが)

⚫︎たいが………タイガー tiger【英語】

📝「彪」から「虎」の部分だけを採って読ませた⑥部分読みとも言えるが、この漢字には「虎の皮のまだら模様」という意味があるそうなので、⑨イメージ読みとした。



▼柊 (のえる)

⚫︎のえる………ノエル Noël【フランス語】

📝フランス語でクリスマスを意味する「ノエル」。この言葉を、クリスマスリースやケーキの飾りなどに用いられる「柊」の漢字に当てている。
こちらはなかなか、連想レベルが高い気がする。



▼聖 (まりあ)

⚫︎まりあ………マリア Maria【人名】

📝言わずと知れたイエス・キリストの母、聖母マリアからのイメージ読みだろう。
これに1文字追加して、「聖愛(まりあ)」というパターンも見られた。



▼月 (らいと)

⚫︎らいと………ライト light【英語】

📝『DEATH NOTE』の主人公・夜神月(やがみ ライト)が有名だろう。
大量殺人をするキャラクターなので現実の人間の名前と絶対に被らないように、作者は「月(ライト)」と名付けたというが、私が見つけただけでも4人の実在を確認しているので、まあ、そういうことだ。
きっと世の中には相当数、「月(らいと)」という名前が存在しているはずだが、『DEATH NOTE』の連載開始以降に生まれたのか、現実の方が先だったのか。
私は漫画やアニメに疎すぎるので夜神月のことを何も知らないのだが、大量殺人犯であってもなお、肖りたくなるキャラクターなのだろうか。



▼響 (りずむ)

⚫︎りずむ………リズム rhythm【英語】

📝響き=リズムというのは連想できても直訳ではない。サウンドとかエコーとかなら、直接的な⑩外国語読みと言えるだろう。
じゃあリズムを直訳で漢字表記にすると何なのか。調べてみると「律動」だそうなので、「律(りずむ)」が正しいのか。いや正しいとかはないか。そういえば「律夢(りづむ)」っていう名前があったな。……と、だらだら考えてしまえるのも名前の面白いところ。



漢字1文字ネーム ⑨イメージ読み+①ぶった切り

次に、上記のような⑨イメージ読みをもとに、①ぶった切りをした名前を紹介する。


▼耀 (だいや)

⚫︎だいや………ダイヤモンド diamond【英語】

📝かがやきの意味を持つ「耀」から、宝石を連想させて読ませている。
「だいや」という名前は他にも、「輝石(だいや)」や「金剛(だいや=ダイヤモンドの和名は金剛石)」など、イメージ読みが用いられることが多くある。



▼柊 (のえ)

⚫︎のえ…………ノエ Noël【フランス語】

📝先ほど紹介した「柊(のえる)」のぶった切り。
「柊(のえる)」は男の子の名前で見られたが、こちらの「柊(のえ)」は女子名であった。



▼皇 (ろい)

⚫︎ろい…………ロイヤル royal【英語】

📝天子や君主といった意味がある「皇」と、王の、王室の、を意味する「ロイヤル」のコラボレーション。なかなか凄い。



漢字1文字ネーム ㉙説明不可能

前回の冒頭で
"今回紹介する名前はしっかりと説明ができるだろう"などと言っておきながら、
結局説明が難しいものが出てきてしまった。

といっても、これから紹介する名前は#25の記事で既出のものだ。
そちらでも㉙説明不可能として記載しているが、ここで改めて書いておく。


▼星 (じゅえる)

⚫︎じゅえる……ジュエル jewel【英語】

📝ジュエルというのはもちろん宝石のことだ。星も宝石もキラキラ輝くものではあるが、だからといって結びつけることは難しい。



▼煌 (てぃあら)

⚫︎てぃあら……ティアラ tiara【英語】

📝お姫様なんかが頭につけるティアラ。宝石で装飾されていたりして、そりゃあ、煌めいているだろう。
「星(じゅえる)」よりは⑨イメージ読みに近いような気がするが、ここではとりあえず、説明不可能としておく。



さて、ここまで18種類の名前を紹介してきた。

残るは2種類なのだが、それらの名前は
どこに分類するべきか決めかねているというか、少し説明が必要になるので、分類はせず、こちらで個別に書くことにする。


▼輝 (すてら)

⚫︎すてら………ステラ stella【ラテン語】
       ステラー stellar【英語】

📝ステラ「星」を意味する名詞
形容詞ステラー「星の」「星形の」、他に「花形の」「スターの」といった意味を持つ。また「素晴らしい」という意味でも使われるらしく、サイトによっては「輝かしい」を意味として記載しているところもあった。
これを直訳とみなして⑩外国語読みにするか、⑨イメージ読みに分類するか。
一般的には「ステラ」といえば名詞が浮かぶと思うので、イメージ読みのほうが近い気がするが、形容詞の方を由来とすれば外国語読みとも考えられる。
私が勝手にやっているのだから独断で決めてしまえばいいのだが、こんな感じで悩んでしまったため、分類は保留する。



▼翼 (あいる)

⚫︎あいる………アイル ???【???語】

📝この名前を見たとき、きっとどこかの国の言葉で、翼をアイルというのだろうと思った。
そして調べてみたところ、フランス語で「翼」を意味する「aile」という単語と、英語で「通路」を意味する「aisle」という単語が出てきた。
このフランス語の方が「アイル」と読みそうなので、それなら良かったのだが、残念ながら発音は「aile(エル・エール)」だった。そして英語の方は、発音が「aisle(アイル)」であった。
とあるサイトによれば、「aile」も「aisle」も元を辿るとラテン語の「ala(アラ)」に行きつくそうで、これは「翼」という意味だ。
「翼=アイル」に近いものはあれど、明確にイコールにできる言葉がない。
何語を由来とするか難しすぎるので、これは分類せず、置いておくことにする。



というわけで、漢字1文字ネームの紹介はこれで以上となる。

漢字に外国語の読みをあてるという、
一見、突飛な発想のように思われるものだが
もはや全く珍しい話ではない。
私がひとりで集めただけでも53種類もの名前と出会うことができるのだ。

外国語読みやイメージ読みをした上で
さらにぶった切りをする名前なんかは、
ぱっと見では何故そう読むのかわからないから
謎を解いていくような気分になる。

そういう時間はとても楽しいし、
名前って面白い、がどんどん裏付けられていく。


戸籍に読み仮名を記載する改正戸籍法などが6月に可決・成立したとのことで、
いわゆる"キラキラネーム"の読み仮名に関するルールが改めて報じられている。

(1)漢字とは意味が反対
(2)読み違いか判然としない
(3)漢字の意味や読み方からは連想できない

こういった読みは許容しない方向らしいが、
私が今回扱った名前たちは基本的に「漢字の意味や読み方から連想できる」ので、
おそらく今後も認められることになるだろう。
いや、認められてほしい、絶対に。


名付けという、漢字や言葉やいろんなものが混ざり合った、複雑だけれど無二の文化がこれからもずっと続いてほしい。

これまで何度も書いてきたことだが、
名前を愛する人間として、心から願っている。


それでは、また次回。





※上記の名前は、誰でも閲覧可能なネット上に載っていた名前です。

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