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#38 名前、どれだけ読めますか。

人力舎は芸歴が5月に変わるシステムなので、昨日からわたしは2年目になった。

この一年、特別なことは何もなくて、日常のなかでいろいろなことが起こった。
ひとことで総括するのは難しいが、ここにいられてよかったと思うことがたくさんあった。

2年目も、変わらずに、守りすぎずに。





さて、本日のnoteは、新たな試みを行う。

これまで散々、珍しい名前や読み方について分析をしてきたが、わたしにはひとつ疑問があった。
それは、実際のところ、人は人の名前をどれほど読むことができるのか?ということだ。

わたしは名前を集めることを趣味として、たくさんの名前に触れてきているため、どんなに難解な名前に対しても、ある程度の推測ができる。
複数の読み方が想像できる名前にも、いくつかの可能性を考えられる。
だからその読める度合いは、一般的なものとはかなり差があると自認している。

自分の物差しは使いものにならないので、今回は家族に協力してもらい、一般的な人と名前との距離感を測っていくことにした。


実験方法はこうだ。

まず、読みやすい・読みにくいなどさまざまなパターンの名前のデータが集まるところを探し、48グループのメンバーおよびジュニア(旧ジャニーズJr.)のメンバーに行き着いた。
どちらもだいたい1990年代半ば〜2010年代生まれで、世代が似ている。
また各メンバー全員が本名での活動を基本としているのも、重要なポイントだ。

今回は48グループのメンバー、つまり女子名について取り上げていく。
ジュニア(男子名)は次回の記事で書く予定だ。

4月25日時点の各グループの現役メンバー数は、以下のとおり。

AKB48(49名)/SKE48(60名)/NMB48(50名)/HKT48(37名)/NGT48(30名)/STU48(39名)

このうち、ひらがなやカタカナ表記のものを除く250名の名前を、Excelで一覧にした。

こうして集めた名前を家族(父・50代/母・50代/妹・中学生)に見せ、ひとつひとつ最初に浮かぶ読み方を答えてもらった。
それぞれの回答に影響を受けないよう、ひとりひとり呼び出してアンケートを取っている。

というわけで、その正答率や読み間違いの傾向などについて、今からまとめていく。

ただ、家族はわたしの名前好きを間近で見ているので、世間一般と比べると、名前に対する知識が若干あるのは否めない。
そのことだけ、先に断っておきたい。

なお、メンバー名はすべて敬称略とする。



はじめに、家族の正答率から見ていこう。

▼父 160/250件(64%
▼母 158/250件(63%
▼妹 177/250件(71%

この数字が、高いのか低いのか。
50代の両親のパーセンテージはほぼ同じで、10代の妹のほうがやや高い結果になっている。

ここからはグループごとに、回答を細かく見ていきたい。
全体的な傾向として、読めない名前は家族3人とも似通っており、だいたい同じような間違い方をしていた。


AKB48

メンバー名|読み方|母の回答|妹の回答|父の回答

▼彩希(ゆいり)は有名な難読ネームなので、知らなければ読めないのが当然だろう。
漢字と読みに接点が全くない、わたしの作った分類では㉙説明不可能に当てはまる名前だ。

▼陽菜(はるな)という名前を、家族がみんな「ひな」と読んだのはすこし意外だった。
「陽」を「はる」と読むのは、最近の名付けでは相当一般に浸透していると考えられるが、初手で浮かぶ読み方ではないようだ。

▼聖菜(せいな)に関しても、そのまま読めば「せいな」のはずだが、全員が①ぶった切りをして「せな」と読んだ。
「せいな」より「せな」のほうが、名前の響きとして馴染みがあるのだろうか。
確かに最近の名前では、「せな」という響きは「せいな」より遥かに人気があると思われるが。

▼有紀(ゆき)真優(まゆう)など、「ゆう」と読む漢字を用いた名前は、「ゆう」と読むのか「ゆ」と読むのか、非常に判断が難しいところだ。
ほぼ五分五分の2択である場合が多いので、誤答も致し方がない。

彩永(さえ)は、わたしの感覚ではとても読みやすい名前なのだが、家族は満場一致で「あやな」と読んだ。
「彩」は「さい」より「あや」のほうが出てきやすいのか。「永」を「なが」と読んで①ぶった切りするというのはやや難解な気がするが、それで一致しているので興味深い。

SKE48

メンバー名|読み方|母の回答|妹の回答|父の回答

愛理(あいり)という名前が2名いるが、両親はどちらも「えり」と読んだ。
「愛」を「あい」ではなく「え」と読むのが一発目に出てくるというのは、想定外だった。

愛菜(えな)に関しては、何故か「え」と読まずに全員間違えている。
両親は共に「まな」と読んでいるが、これはおそらく俳優・芦田愛菜(まな)の影響だろう。

愛乃(よしの)という名前は、誰も読むことができなかった。
「愛」を「よし」と読むのは音訓とは別の名乗り読みと呼ばれるものだが、やはり名乗り読みはなかなか一般的に浸透していないようだ。

慈子(ちかこ)も名乗り読みを用いた名前であるが、同じように正解者はいない。

姫楓(ひめか)心羽(ここは)といった、漢字の読みを知っていればそれほど難しくない①ぶった切りネームに関しては、正答率が高い。
これが一般的な感覚なのか、それともわたしの影響で読めるようになっているのかは、不明だ。

結希(ゆうき)美祐(みゆ)など、「ゆうorゆ」問題はここでも発生している。
一方で、優愛(ゆあ)という名前は全員正解しており、「ゆう」と読む漢字を使うものが全て五分五分の難易度になるわけではないようだ。
これ以降もこの2択はたびたび見られるが、いちいち説明していられないので、特筆すべきこと以外は触れないことにする。

NMB48

メンバー名|読み方|母の回答|妹の回答|父の回答

望叶(みかな)は、読み響きともにやや難解と思われるが、やはり正解者はおらず、全員が「のぞみ」と答えた。
これ以外にも例があったが、読み方の推測が難しい名前は、読みやすい一文字目だけを読むという傾向があるようだ。

美空(みそら)を両親がどちらも「みく」と読んだのも面白い。
シンプルに読めば「みそら」になるところだが、「みく」という響きのほうが、最近の名前として馴染みがあるのかもしれない。

心咲(みさき)という名前が2名いるが、「心」を「み」と読む点に関して、家族は全員正解している。
今の若い世代の名付けにおいては、「心=み」というのはほとんど常識というか、当たり前のように使われている読み方である。
特に両親からそれが自然に出てくるのは、たぶんわたしの影響であろう。

光(ひかる)については、「ひかる」か「ひかり」かの2択を全員が間違えた。
これは仕方のない誤答だが、アンケートを取っていて面白かったポイントだ。

海日菜(みひな)は、特別な読ませ方はしていないシンプルな名前であるが、響きが特殊なために、両親は正解に辿り着けなかったようだ。
珍しい響きの名前の場合は、聞き慣れないために、どうにか馴染みのある読み方に持っていこうとするのかもしれない。
しかし、オリジナリティ溢れる名前など世間にはたくさんあるので、個人的な感覚とは関係なく受け入れたほうが、正解に近づくような気がする。

HKT48

メンバー名|読み方|母の回答|妹の回答|父の回答

愛玲菜(えれな)という名前は、全員が「あいな」と回答している。
先ほどの望叶(みかな)と同じように、読めないために、ある漢字を無いものとして読んでしまうパターンだ。
愛理(あいり)のときは「愛」を「え」と読んだのに、他のかたちになると読めなくなってしまっているのも、面白い現象だ。

陽彩(ひいろ)は、個人的にはとても読みやすいイメージなのだが、全くそんなことはないようで、家族3人とも読み間違えている。
例えば「彩葉(いろは)」など、「彩」を「いろ」と読ませる名前は多く存在するが、やはり「ひいろ」という響きの珍しさが影響しているのだろうか。

羽麗(うらら)は本来、「麗」だけで「うらら」と読めるところに「羽」を付け足しており、㉘置き字に分類される名前だ。
「う」+「うらら」なので、あまり難易度は高くないのだが、この結果には置き字というものの難しさがよく表れている。

結菜(ゆいな)に関しては、全員が「ゆな」と読んでしまった。
この表記だと「ゆいな」「ゆうな」「ゆな」の3パターンが考えられるが、家族が全員「ゆな」を選んだのは、わたしの名前が結生(ゆい)であることが関係しているのではないか。
他にも「結」のつく名前はいくつかあったが、特に母はほとんど「ゆ」と読んでいた。

NGT48

メンバー名|読み方|母の回答|妹の回答|父の回答

海里(かいり)は日本語として存在する言葉だが、あまり女子名としてのイメージがないのか、両親はともに誤答している。
はじめて見る名前を読むときに、自分の知る常識の範囲のなかに収めようとしてしまうというのは、あるあるなのかもしれない。

愛里衣(めりい)については、全員が別々の読み方をして間違えている。
「愛」は「愛でる」の①ぶった切りと考えられるが、このように外国風というか、やや日本人っぽくない響きの名前は、さらに難読度があがってしまうようだ。

珠菜(じゅな)は決して難しい読み方ではないのだが、正解者がいなかった。
「珠=じゅ」が思い付きにくいのか、それとも「じゅな」という響きに馴染みがないだろうか。

STU48

メンバー名|読み方|母の回答|妹の回答|父の回答

茉妃菜(まひな)は非常にシンプルな読み方での名前だが、両親は正解できなかった。
こちらも既出の海日菜(みひな)と同じように、響きに馴染みがないために、そのままではない読み方を模索してしまったのだろう。
ちなみに「マヒナ」とは、ハワイ語で月を意味する言葉である。

心愛(ここあ)については、所謂ザ・キラキラネームと言われるような名前であり、正解しやすいかと思ったが、当てたのは妹のみだった。
「心愛」という表記の名前に関しては、以前の記事でがっつり取り上げているので、そちらも参照されたい(#21)。

咲葵(さき)という名前の誤答は、「葵」の音読みが知られていないことが原因だった。
「あおい」と読むのが最も有名で一般的であると考えられるが、「き」という音読みも持つ。数が多いわけではないものの、名付けでもそれなりに使われる読み方だ。
名前集めをしていてすっかり当たり前になっている読み方が意外と難読だった、ということはままある。

里詠(りえ)はシンプルな音読みの組み合わせなのだが、不思議と正解者がいない。
「りえ」という昔からよくある響きに対して、やや見慣れない表記を用いていることが、名前を読みにくくさせているのかもしれない。



──と、こんな感じで。

すべてを解説することはできないので、気になったものをピックアップして紹介した。

このアンケートを取っているとき、わたしはめちゃくちゃ楽しかった。
こんなふうに読むんだ!とか、これはわかるんだ!とかいう発見がたくさんあって、もっとたくさんの、さまざまな年齢や感性の人のデータを取りたくなった。


今回の48グループについては、だいたい3割〜4割くらいのメンバーの名前が、一発で読むことの難しい名前であることがわかった。

読めない名前や所謂キラキラネームといったものへは、日々いろいろな意見が飛び交っているが、30〜40%というのは、決して少ない数字ではないと思う。
マイノリティでは全くないし、程度の差こそあれ、それらをただの異端として線引きするような時代はとっくに過ぎているだろう。

世間にはたくさんの、あらゆる名前が存在する。
だからこそ、おもしろい。
そんな名前のことをもっと知りたいし、ますます理解を深めていきたいと思っている。


さて、次回はこの男子名バージョン。
ジュニア(旧ジャニーズJr.)メンバーの名前データを、掘り下げていきたい。
きっとまた、わたしがとても楽しめる内容になることだろう。

それでは、また次回。

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